17 / 56
17
しおりを挟む「痛てーよ、山崎。」
彼は顔を歪ませ声を上げる。
まぁ、分厚い資料で背中を叩かれれば痛いよね。
「当たり前ですよ。木崎くんのその態度に珠稀ちゃんが困惑しているのがわからないかなぁ」
口許は笑っているのに目は吊り上がっている瑞歩が怖い。
「それがまた可愛いじゃんか。」
彼が言い返す。
「確かに可愛いけど、木崎くんのはやり過ぎ。それにあなたがやった事は委員として当然の事なんだから、誉められる要素は無いと思う。」
まともな言葉を返す瑞歩に感服する。
「それでも、珠稀からご褒美を貰いたいと思ってはダメなのか?」
彼は主張を曲げない。
そこに。
「快翔。お前何やってるんだ?」
クラス一のお調子者の大沢さんが、彼の肩を叩く。
まぁ、他のクラスメートからしたら、二人が漫才な如くを繰り広げているのを見ている感じだろう(私もそんな感じで見ていたから)。
「田所が可愛いとお前が言ってるように聞こえてきたんだが?」
この棘を含んだ言い方でわかると思いますが、彼、大沢さんは、私を一番毛嫌いしてると言っても過言ではない人です。現に私を睨み付けていますしね。
「お前が田所の何処が気に入ってるか知らないが、俺から見ればただ平凡で真面目な娘にしか見えない。面白味もないしな。」
彼にとってはやんわりと濁した言葉にしたのだろうけど、それでも私のハートはダメージが大きいのです。
自分で普段から思ってる事を人様に言われると更にグサッと刺さるのですよ。
「それなら安心だな。珠稀の事を狙ってる男が居ないって事だからな。ゆっくりと落としに行ける。」
木崎さんが、ホッとしたような顔をして私を見てくる。
今の私の顔は赤くなっているだろう。
自分でも顔が熱く感じられるから。
あ~もう、何で、木崎さんはそんなに堂々と宣言できるの。
恥ずかしくて顔が上げられなくなるじゃんか。
「珠稀、顔真っ赤。大丈夫?」
星香が心配そうに声をかけてきた。
「うっ、ダメかも……。」
メンタルが想像以上にえぐられ私がボソリと呟いた言葉に直ぐに反応を示したのが木崎さんで。
「珠稀、どうした? 顔が真っ赤だぞ。熱でも出たのか?」
心配気な声がしたと思ったら、手が額に延びてきて、そのまま触れられ。
「熱は無いようだけど、大丈夫か?」
本当に然り気無く触って確認してくるから、避けようがない。
「木崎。それ態とやってる? 珠稀あんたの言葉に打ちのめされてるんだよ。」
星香が私の代わりのに答えてくれる。
「そうだよ。珠稀ちゃんが初だから、さっきの木崎くんの言葉で、熱持ったんでしょうが。」
瑞歩までが私の事を理解してくれていて、嬉しかった。
だけど、その言葉を聞いて困惑している者が一名、呆気に取られてるのが一名目の前に居る。
「それは嬉しい誤算だな。だけど、これからは控えるかな。他の奴等にそんな顔見られてく無いし……。」
木崎さんが言い。
「う、嘘だろ……。」
と大沢さんが呟くのが聞こえてきた。
何が嘘なのだろうか?
私が小首を傾げてると。
「マジか……。」
って言葉が続いて聞こえてきた。
私、何かしただろうか?
したことと言えば、顔を赤面させただけで他には何もしてないよね。
自分の行動を振り返っていたら。
「あっ、また珠稀ちゃんが男を落とした。」
って横に居る瑞歩ちゃんが呟いた言葉に更に首を傾げる。
その言葉は、何処か不穏な要素が入っていそうで、怖くなった。
10
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説


会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる