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22話 兄の告白
しおりを挟むあれから二週間が過ぎた。
祥が、私に付き纏う事もなく一人静かな時間を過ごしていた。
「今日から水泳だな。楽しみだ。」
と周りから声が上がる。
私は、もちろん見学だけど…ね。
だけど、バレるといけないので図書館で自習する事にしたんだ。体育教諭もその方がいいと思っていたみたいだ。
私は、男共が着替えだす前に自習用具を持って、教室を出る。
「幸矢。お前は着替えないのか?」
祥が、声をかけてきた。
「悪いな。オレ、水恐怖症なんだよ。水泳はパスだ。」
目を逸らして、それだけ言うと逃げるように図書室に向かう。
「お、おい。幸矢!」
祥の声が追ってくるが、振り返らなかった。
「幸矢。居るか?」
授業中だと言うのに図書室の戸が開くと同時に声がかかる。
「冬哉兄さん。授業は?」
私が問いかけると。
「偶然だが自習なんだよ。で、幸矢がここに居るのが見えたからさ。」
冬哉兄さんが、微苦笑する。
「そうなんだ。」
私は相槌を打ちながら、調べ物に専念する。
「幸矢……。」
私の隣に座ると呟くように言う。
「何? 兄さん。」
私は、視線を兄さんに向けた。
「幸矢。この間言いかけた言葉を今言ってもいいか?」
この間?
あぁ、保健室での事か……。
「そうだね。私も気になってたから……。」
あの続き、私も気になってはいたんだよね。
「俺、幸矢の事が好きだ。お前が中学の時から、気になる女の子だったんだ。」
冬哉兄さんが、真顔で言う。
やっぱり、聞かない方がよかったかも……。
「俺にとっては、大切な女の子なんだ。この間のキスもお前の事が愛しくて、つい……。」
そんな告白、私は聞きたくなかった。
ついでキスされるって、何?
私の気持ちは、まるっ切り無視されてるけど……。
「幸矢は、アイツが…好きなのか?」
冬哉兄さんが、不安そうに聞いてくる。
「アイツって祥…成瀬の事?」
私が聞き返すと。
「そうだよ。お前、今まで男だろうが女だろうが、下の名前で呼ばせた事無かっただろ? だから、アイツは特別なのかな…っと思ったんだ。」
自信なさげに言う。
「わからない。」
私は、正直に答えていた。
「自分でもわからないんだ。誰の事が好きで、嫌いなのか。私は、普通に育てられていないから、自分の感情さえわからない。だから、ごめんなさい。告白されても他人事としか思えない。だから、返事はできない」
私は、それだけ言って図書室を出た。
冬哉兄さん。
本当にごめんなさい。
私は、自分がわからない。
男なのか、女なのか、性別さえままならない。
どっち付かずの私を好きと言ってくれる二人には、謝ることしかできない。
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