好きだから傍に居たい

麻沙綺

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百面相の真相…遥

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 雅斗たちが病室を出て行ってから、数分後に亜耶が百面相をしだした。
 その顔は見てても飽きないんだが、何処と無くソワソワしてる。
「亜耶? さっきから、何百面相してるんだ? もしかして、何か悩み事でもあるのか?」
 気になり過ぎてそう声をかければ、ビクリと肩が微かに揺れ、ゆっくりと俺の方を見る。まるで、壊れたブリキの玩具みたいだ。
 俺からすれば、心配顔を張り付けていたんだが、明らかな動揺を見せながら首を横に振り。
「ん? 悩みなんて無いよ。たださっきお義姉さんが報告してきた事が嬉しくて、ね。その反面にちょっと複雑な心境に陥っただけだよ。」
 と返してきた。
 沢口義姉からの報告で、そこまで嬉しい事と嬉しくない事だと……。
 それって、さっきの "内緒" ってヤツと被るのか?
「もしかして何だが、"おめでた"とか?」
 何気に思い付いた言葉を口にすれば、亜耶が驚いた顔をして。
「な、何で分かったの?」
 口をパクパクさせて、聞いてきた。
「ん? あぁ、亜耶の浮かれてニコニコ顔から、急に眉間にシワを寄せて複雑そうな顔をしたかと思ったら、やっぱり嬉しいって顔になった事と、さっきの "内緒です" って言葉でな。」
 俺は、淡々と口にした。
 まぁ、新しい家族が増えるのは嬉しいだろうなぁ。複雑なのは、高校生にして "叔母" になるから……。
 亜耶の気持ちも分からなくもないが……。
 俺自身も、高校生の時に "伯父" の立場になった身だし……。
「遥さん。お兄ちゃんには言わないでよ。お義姉さんと約束してるから。」
 亜耶が慌てて釘を刺してきた。
「言うわけないだろ。それにしても、雅斗が父親とはな……」
 結婚してから、半年か……。
 沢口あいつが何か企んでるのも分からんでもないな。
 それこそ、俺たちのパーティーで報告しそうだな。
 まぁ、丁度いいのかもしれないが……。

「あの。遥さん。」
 突然改まった声音で亜耶が、話しかけてきた。
 不思議に思いながら。
「ん?」
 と返す。
「遥さんも子ども欲しい?」
 って消え入りそうな声で聞いてきた。
 その唐突すぎる質問に狼狽える俺。
 何も答えないのも亜耶が不安がるだろう。
「ん、そうだな。いずれは亜耶との子どもは欲しいと思うよ。でも、今じゃない。今は、亜耶と二人の時間を大切にしたいんだ」
 俺は、言葉を選びながら答える。
 今、この瞬間だって、俺にとっては大切な時間に変わりないのだから……。
 亜耶の顔を見れば、ホッとした顔をしてるから、何があったのか気になり。
「急にどうしたんだ?」
 質問してみれば。
「あのね。お義姉さんの話を聞いてて、そう言う話をしたこと無いなって思って……。」
 上目遣いで、俺を見る亜耶の言葉に。
「そういえば、そうかも。今の生活の事で一杯一杯で、そう言う話一度もしなかったな。」
 って口にしていた。
 亜耶に話さなかった事で、不安にさせてたんだな。
「俺はさぁ。今、隣に亜耶が居てくれることがとても嬉しくて仕方ないんだ。浮き足立ってると言われればそうなのかもしれない。だけど、今、この時を無くしたくないと思ってる。」
 俺は、今の本心を口にした。
「それにさ、亜耶とまだ色々と二人でやりたいことがあるからな。」
 俺たちは、まだ始まったばかりの関係。
 一様にカップルがする様な事をやっていきたいし、旅行も二人で行きたいと思ってるんだからな。
 亜耶が、不思議そうな顔で俺をジッと見てくる。
 そんなに見られたら、俺だって照れるぞ。
「楽しみは、とっておく方がいいでしょ。」
 亜耶には内緒で色々企むのも楽しそうだ。

 何て思いながら、笑みを浮かべるのだった。







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