好きだから傍に居たい

麻沙綺

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百面相…亜耶

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 仕事の打ち合わせ時間が近付いてきたみたいで、お兄ちゃん達は帰って行った。
 態々仕事の空き時間に来てもらって、申し訳ないと思いながら、そんな時間があるなら少しは体を休めて欲しいって思うんだけど、言ってもお兄ちゃんはしないだろうなぁ。

 それにしても、来年の五月には新しい家族が増えるのが、とても楽しみ。
 男の子かな? 女の子かな?
 どっちが生まれても、可愛いだろうなぁ……。
 でも、この年で甥っ子か姪っ子が出来るのは、ちょっと複雑だけど……。
 仕方ないよね。年が離れている分、これが普通なんだろうけどさ。

「亜耶? さっきから、何百面そうしてるんだ? もしかして、何か悩み事でもあるのか?」
 遥さんが、少し引き吊った笑みを浮かべて質問してきた。
「ん? 悩みなんて無いよ。たださっきお義姉さんが報告してきた事が嬉しくて、ね。その反面にちょっと複雑な心境に陥っただけだよ。」
 そう答えると少し考える遥さん。  
 その "何か" に行き着いたのか。 
「もしかしてなんだが、 "おめでた" とか?」
 と的を得てくるので驚き。
「な、何で分かったの?」
 吃りながらも、そう言葉にしていた。
「ん? あぁ、亜耶の受かれてニコニコ顔から、急に眉間にシワを寄せて複雑そうな顔をしたかと思ったら、やっぱり嬉しいって顔になった事とさっきの "内緒です" って言葉でな。」
 遥さんの言葉を聞いて顔を赤くする。
 えっ、そんなに顔に出てた?
 もう、恥ずかしいよ。慌てて顔を両手で隠す。
「遥さん。お兄ちゃんには言わないでよ。お義姉さんと約束してるから。」
 慌てて遥さんに釘を刺す。
 今頃、伝えてるんだろうけど……。
 それでも念のためにも言っておかないとね。
「言うわけないだろ。それにしても、雅斗が父親とはな……。」
 考え深げに遥さんが言う。
 お兄ちゃんとは付き合いが長いから、そう思うのかもね。

 そうだ、こんな時じゃなきゃ聞けないよね。
 前から聞きたかった事があって、延びてしまったから今のうちに聞こう。
「あの、遥さん?」
 私の改まった声に。
「ん?」
 どうしたんだって、眼で見てくる。
 私は、視線を落として。
「遥さんも子ども欲しい?」
 って前から疑問に思ってたことを口にする。
「ん、そうだな。いずれは亜耶との子どもは欲しいと思うよ。でも、今じゃない。今は、亜耶と二人の時間を大切にしたいんだ。」
 言葉を選びづつ話す遥さんの顔を見れば、穏やかな顔でそれでも真面目な顔をして答えてくれていることに安心した。
 本当は、不安だった。
 "要らない" って言われたらどうしようかと思った。
「急にどうしたんだ?」
 私の何時もと違う態度に不思議そうな顔をして聞いてきたのが分かる。
「あのね。お義姉さんの話を聞いてて、そう言う話をしたこと無いなって思って……。」
 結婚してから、将来どうしたいか何て一度も話したこと無かったなって、改めて思ったんだよね。
 だから、このタイミングになったわけで……。
「そう言われれば、そうだな。今の生活の事で一杯一杯で、そう言う話一度もしなかったな。」
 って、真顔で答える遥さん。
「俺はさぁ。今、隣に亜耶が居てくれることがとても嬉しくて仕方ないんだ。浮き足立ってると言われればそうなのかもしれない。だけど、今、この時を無くしたくないと思ってる。」
 目許を赤くさせて、言葉を紡ぐ遥さん。
「それにさ、亜耶とまだ色々と二人でやりたいことがあるからな。」
 微苦笑を浮かべて言う遥さん。
 何を企んでいるんだろう?
 不思議に思いながら、遥さんを見上げれば。
「楽しみは、とっておく方がいいでしょ。」
 本当に楽しそうに言うから、私の方が戸惑ってしまった。







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