129 / 180
百面相…亜耶
しおりを挟む仕事の打ち合わせ時間が近付いてきたみたいで、お兄ちゃん達は帰って行った。
態々仕事の空き時間に来てもらって、申し訳ないと思いながら、そんな時間があるなら少しは体を休めて欲しいって思うんだけど、言ってもお兄ちゃんはしないだろうなぁ。
それにしても、来年の五月には新しい家族が増えるのが、とても楽しみ。
男の子かな? 女の子かな?
どっちが生まれても、可愛いだろうなぁ……。
でも、この年で甥っ子か姪っ子が出来るのは、ちょっと複雑だけど……。
仕方ないよね。年が離れている分、これが普通なんだろうけどさ。
「亜耶? さっきから、何百面そうしてるんだ? もしかして、何か悩み事でもあるのか?」
遥さんが、少し引き吊った笑みを浮かべて質問してきた。
「ん? 悩みなんて無いよ。たださっきお義姉さんが報告してきた事が嬉しくて、ね。その反面にちょっと複雑な心境に陥っただけだよ。」
そう答えると少し考える遥さん。
その "何か" に行き着いたのか。
「もしかしてなんだが、 "おめでた" とか?」
と的を得てくるので驚き。
「な、何で分かったの?」
吃りながらも、そう言葉にしていた。
「ん? あぁ、亜耶の受かれてニコニコ顔から、急に眉間にシワを寄せて複雑そうな顔をしたかと思ったら、やっぱり嬉しいって顔になった事とさっきの "内緒です" って言葉でな。」
遥さんの言葉を聞いて顔を赤くする。
えっ、そんなに顔に出てた?
もう、恥ずかしいよ。慌てて顔を両手で隠す。
「遥さん。お兄ちゃんには言わないでよ。お義姉さんと約束してるから。」
慌てて遥さんに釘を刺す。
今頃、伝えてるんだろうけど……。
それでも念のためにも言っておかないとね。
「言うわけないだろ。それにしても、雅斗が父親とはな……。」
考え深げに遥さんが言う。
お兄ちゃんとは付き合いが長いから、そう思うのかもね。
そうだ、こんな時じゃなきゃ聞けないよね。
前から聞きたかった事があって、延びてしまったから今のうちに聞こう。
「あの、遥さん?」
私の改まった声に。
「ん?」
どうしたんだって、眼で見てくる。
私は、視線を落として。
「遥さんも子ども欲しい?」
って前から疑問に思ってたことを口にする。
「ん、そうだな。いずれは亜耶との子どもは欲しいと思うよ。でも、今じゃない。今は、亜耶と二人の時間を大切にしたいんだ。」
言葉を選びづつ話す遥さんの顔を見れば、穏やかな顔でそれでも真面目な顔をして答えてくれていることに安心した。
本当は、不安だった。
"要らない" って言われたらどうしようかと思った。
「急にどうしたんだ?」
私の何時もと違う態度に不思議そうな顔をして聞いてきたのが分かる。
「あのね。お義姉さんの話を聞いてて、そう言う話をしたこと無いなって思って……。」
結婚してから、将来どうしたいか何て一度も話したこと無かったなって、改めて思ったんだよね。
だから、このタイミングになったわけで……。
「そう言われれば、そうだな。今の生活の事で一杯一杯で、そう言う話一度もしなかったな。」
って、真顔で答える遥さん。
「俺はさぁ。今、隣に亜耶が居てくれることがとても嬉しくて仕方ないんだ。浮き足立ってると言われればそうなのかもしれない。だけど、今、この時を無くしたくないと思ってる。」
目許を赤くさせて、言葉を紡ぐ遥さん。
「それにさ、亜耶とまだ色々と二人でやりたいことがあるからな。」
微苦笑を浮かべて言う遥さん。
何を企んでいるんだろう?
不思議に思いながら、遥さんを見上げれば。
「楽しみは、とっておく方がいいでしょ。」
本当に楽しそうに言うから、私の方が戸惑ってしまった。
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
私が死ねば楽になれるのでしょう?~愛妻家の後悔~
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令嬢オリヴィアは伯爵令息ダーフィトと婚約中。
しかし結婚準備中オリヴィアは熱病に罹り冷酷にも婚約破棄されてしまう。
それを知った幼馴染の伯爵令息リカードがオリヴィアへの愛を伝えるが…
【 ⚠ 】
・前半は夫婦の闘病記です。合わない方は自衛のほどお願いいたします。
・架空の猛毒です。作中の症状は抗生物質の発明以前に猛威を奮った複数の症例を参考にしています。尚、R15はこの為です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる