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電話…遥
しおりを挟む数コールで繋がり。
「もしもし……。」
俺が声を発せれば。
『遥か……。亜耶の容態は?』
流石に、心配そうな声の雅斗に。
「検査の結果は、脳波は異状無し。ただ二・三日の入院が必要だそうだ。後、右腕の骨折だ。」
淡々と答えた。
そうしないと、犯人に対しての怒りで爆発しそうだった。
右手の骨折は、とっさに出た事での骨折だろうの事。
『そうか……。で、犯人は?』
容態を聞いて一瞬だけ、ホッとしたような声になったが、直ぐに怪訝な声に。
「あぁ、その場で確保はしてる。って言うか、亜耶のクラスメイトが、確保していた。」
この時の木村の的確な判断で、逃がすこと無く捕まえることができたのが、唯一の救いか……。
『主犯核は、例のお嬢様で間違いないな?』
雅斗の核たる問いに。
「あぁ、そうだ。お嬢の下僕らしい。彼女が呟いていた言葉が、 "あたしじゃない。あの人に頼まれただけ" だ。 "あの人" がお嬢を指していて、彼女の身元は、弟が知っていた。」
現場で、細川が言ってたんだから間違いないだろう。
『名前は?』
怒りを隠せないで居る雅斗。
まぁ、大切な妹を傷つけられたんだから、そうなるだろう。俺も似たようなもんだし……。
「俺は、名前を記憶してない。なんなら、後で伯父に連絡要れるから、その時でも言いか?」
名前を聞く前に救急隊員が来たから聞けてない。
『あぁ、それで構わない。遥、後は俺がやるから亜耶に付いててやってくれ。』
心配そうな声音で、言ってくる雅斗。
「言われるまでもなく、付いているさ。」
俺は、ぶっきらぼうに答え、通話を切った。
今のうちに透にも連絡しとくか。
『遥さん? 亜耶ちゃんの容態は?』
開口一番がそれか……。
焦ってる声で言われれば、自分が冷静になれるって、事実なのだろう。
まぁ、現場に居たんだから心配するか。
「右腕の骨折だけですんだ。まぁ、念の為に二・三日の入院。それでだなぁ、旅行の事だが……。」
俺が切り出せば。
『旅行は、キャンセルでお願いします。』
と、勢いよく返される。
「だが、楽しみにしてたんだろ?」
そう聞き返せば。
『真由が行きたがりませんよ。 "亜耶ちゃんが居ないなら行かない" って、さっきから言ってますから……。』
その言葉を聞いて、真由らしいと思ってしまうのは、致し方ないか……。
「亜耶の事、話したのか?」
『えぇ……。行けなくなるのわかってましたからね。』
透が、沈んでる。
まぁ、透から言い出した事だからなぁ~。
「今週は無理だが、来週か再来週に延期にすることは可能だが、遠出は無理だぞ。」
俺がそう口にしたら。
『ちょっと、真由に聞いてみます。』
透の声が一気に浮上する。
「ん。返事は急がない。」
『後、明日伺っても良いですか?』
恐る恐る聞いてくる透に。
「あぁ、いいぞ。っても学校が終わってからな。」
多分、真由も一緒に来るのだろう。
『じゃあ、明日伺わせていただきます。』
「あぁ、待ってる。」
それだけを交わして、電話を切った。
それから、予約をしていたホテルへ電話をいれて、亜耶の手を握る。
亜耶、皆が心配してるぞ。
早く、目を覚ましてくれ。
そう祈りながら……。
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