MINKU 時空を超えた物語

榊 直 (さかき ただし)

文字の大きさ
上 下
15 / 41
4章 ピエール王国を目指して

第15話 キューの正体

しおりを挟む
 「ピエール王国へ行くには、北に行かなくてはならない」ジルが言った。
「では戻るようだな。俺達はここから北西にある西の魔女の城から来たのだ」コングが言った。
「西の魔女か。最近はおとなしくしているが、一昔前は怪しい魔法を使って、人をまどわしていたそうだ」とジル。
「西の魔女さんは悪い人じゃないよ」ちいが言った。
「西の魔女さんの所へ寄ってから行こうよ」キューが提案した。
「そうだな。休憩がてらに良いだろう」コングも皆、賛成した。

 しばらく歩いて、夕方になった頃に西の魔女の城に着いた。扉が勝手に開いた。皆は中に入った。扉は勝手に閉まった。西の魔女が、
 「あんた達が来るのを待っていたよ。待ちくたびれたよ」
「さすがだな。何でもお見通しだ」コングが感心して言った。
「夕飯の支度もできているよ」皆は喜び、テーブルについた。魔女が用意してくれたご飯を食べた。ちいは見たことがない動物の肉やスープに戸惑った。皆は夢中で食べている。
「ピエール王国へ行く事になってな」コングが言った。
「ピエール王国かい。ふむ。私もピエール王国に用事があるんだよ。王子を探すように頼まれていてね。今朝、使いが来たよ。風の魔法を使って探すのだよ」
「あ、あの・・このキューは風の魔法をつかったの・・」ちいがか細く言った。
「僕が!風の魔法を!」キューは驚いた。
「キューが風の魔法を・・」魔女は鋭い目つきでキューを見た。魔女は席を立ち、大きな水晶をもってきて呪文を唱えた。
「やはり!このブタが王子と映し出している!王子はこのブタだ!魔法がかけられているのさ。キューは王子だ!」皆はどよめいた。キューは、
「ぼ、僕が王子!?」どぎまぎした。
「やっぱりキューは王子様だったのね。わたし見たもん。キューが人間になるの」
「この子が人間になるのを見たのだね?」魔女がちいに尋ねた。
「そう。ネックレスが光って、月からも光がキューに届いたの。そしたら人間になったわ」ちいはキューのネックレスを指差した。
「ちょっと見せておくれ」魔女はキューのネックレスをしげしげと見た。
魔道士まどうしドルゾーのネックレスだと思うが」ジルが言った。
「そうだね。複雑ふくざつな魔法がかけてあるね」
「月から光が来たのはいつだい?」
「昨日よ」
「満月の光りか・・」魔女は考え込んだ。
「みんな、庭先に移動しておくれ」
 皆は庭先へ歩いた。
「ムムム」魔女は力を込めた。突然、魔女の手から黄色い光の玉が現れた。その玉はす~と上空に移動した。月にそっくりな玉だった。
「これは、月の魔法。この玉は月のパワーが本物と変わらぬものだよ。そして満月はこうだ」魔女はさらに力を入れて、呪文を唱えた。キューのネックレスは光り輝き、玉からも光が一直線に伸びた。キューは光り輝き、ボワンとキューの体は人間になった。
「おお!」皆は驚いた。
「ま、また人間に!」
「は、裸・・」ちいはまた照れた。
「は!タオルを!」キューも恥ずかしそうに照れた。魔女はタオルを手渡した。
「むむ。変化の魔法か。こりゃ、厄介なものを」
「とけないのか?」コングは聞いた。
「変化の魔法はかけた者しかとけないよ」魔女が残念そうに言った。
「ぼ、僕は王子・・思い出せない」キューは頭をかかえた。光の玉は徐々にしぼみだした。
「月の魔法の限度さ」魔女が言った。
月の玉は小さくなり、消失した。キューもブタに戻った。
「ブヒ、ぼ、僕は人間だったのだ」
「王子だよ。お前は。ピエール王国に皆で行こうかね」魔女が言った。
外はどっぷりと暗闇に満ちていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

MINKU エピソード2 SPACE MINKU

榊 直 (さかき ただし)
児童書・童話
コングが念願だった神の国へ行く方法が分かった。 ちいも無事に時空を再び超え、皆で神の国へ。 そこは、宇宙だった。 コング、ジル、キュー、ちい達の今度の冒険は宇宙! 宇宙にも黒の魔族がいて、支配していた。 今度は宇宙の平和を守れ!

【完結】ねぇ、おかあさん

たまこ
児童書・童話
おかあさんがだいすきな、おんなのこのおはなしです。

小さいくも

功刀攸
児童書・童話
ある日、小さなくもは家の主人の娘と出会った。 小さなくもと女の子の出会い、日常、成長と別れ――。 ※個人サイト及び他サイトとの重複投稿です。

【完結】知られてはいけない

ひなこ
児童書・童話
中学一年の女子・遠野莉々亜(とおの・りりあ)は、黒い封筒を開けたせいで仮想空間の学校へ閉じ込められる。 他にも中一から中三の男女十五人が同じように誘拐されて、現実世界に帰る一人になるために戦わなければならない。 登録させられた「あなたの大切なものは?」を、互いにバトルで当てあって相手の票を集めるデスゲーム。 勝ち残りと友情を天秤にかけて、ゲームは進んでいく。 一つ年上の男子・加川準(かがわ・じゅん)は敵か味方か?莉々亜は果たして、元の世界へ帰ることができるのか? 心理戦が飛び交う、四日間の戦いの物語。 <第2回きずな児童書大賞にて奨励賞を受賞しました>

【総集編】アリとキリギリスパロディ集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。 1分で読める! 各話読切 アリとキリギリスのパロディ集

見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜

うさみち
児童書・童話
【見習い錬金術士とうさぎのぬいぐるみたちが描く、スパイス混じりのゆるふわ冒険!情報収集のために、お仕事のご依頼も承ります!】 「……襲われてる! 助けなきゃ!」  錬成アイテムの採集作業中に訪れた、モンスターに襲われている少年との突然の出会い。  人里離れた山陵の中で、慎ましやかに暮らしていた見習い錬金術士ミミリと彼女の家族、機械人形(オートマタ)とうさぎのぬいぐるみ。彼女たちの運命は、少年との出会いで大きく動き出す。 「俺は、ある人たちから頼まれて預かり物を渡すためにここに来たんだ」  少年から渡された物は、いくつかの錬成アイテムと一枚の手紙。 「……この手紙、私宛てなの?」  少年との出会いをキッカケに、ミミリはある人、あるアイテムを探すために冒険を始めることに。  ――冒険の舞台は、まだ見ぬ世界へ。  新たな地で、右も左もわからないミミリたちの人探し。その方法は……。 「討伐、採集何でもします!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?」  見習い錬金術士ミミリの冒険の記録は、今、ここから綴られ始める。 《この小説の見どころ》 ①可愛いらしい登場人物 見習い錬金術士のゆるふわ少女×しっかり者だけど寂しがり屋の凄腕美少女剣士の機械人形(オートマタ)×ツンデレ魔法使いのうさぎのぬいぐるみ×コシヌカシの少年⁉︎ ②ほのぼのほんわか世界観 可愛いらしいに囲まれ、ゆったり流れる物語。読了後、「ほわっとした気持ち」になってもらいたいをコンセプトに。 ③時々スパイスきいてます! ゆるふわの中に時折現れるスパイシーな展開。そして時々ミステリー。 ④魅力ある錬成アイテム 錬金術士の醍醐味!それは錬成アイテムにあり。魅力あるアイテムを活用して冒険していきます。 ◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。 ◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。 ◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。 ◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。

ゆうれいのぼく

早乙女純章
児童書・童話
ぼくはゆうれいになっていた。 ゆうれいになる前が何だったのか分からない。 ぼくが帰れる場所を探してみよう。きっと自分が何だったのかを思い出して、なりたい自分になれそうな気がする。 ぼくはいろいろなものに憑依していって、みんなを喜ばせていく。 でも、結局、ゆうれいの自分に戻ってしまう。 ついには、空で同じゆうれいたちを見つけるけれど、そこもぼくの本当の居場所ではなかった。 ゆうれいはどんどん増えていっていく。なんと『あくのぐんだん』が人間をゆうれいにしていたのだ。 ※この作品は、レトロアーケードゲーム『ファンタズム』から影響を受けて創作しました。いわゆる参考文献みたいな感じです。

マハーディヴァ

東雲紫雨
児童書・童話
注:登場する世界観はネーミングのみを借用し、実際の思想・理念・信仰・地域性とは一切紐づいておりません。公開にあたって極力配慮致しますが、誤解を招くような表記がありましたら、あらかじめお詫びいたします。

処理中です...