愛を注いで

木陰みもり

文字の大きさ
上 下
68 / 75
14、お酒は飲んでも飲まれるな

しおりを挟む
 少しずつ色々な種類のものを食べて飲んでをしているうちに、俺は結構な量の日本酒を飲んでしまっていたらしい。これはまずいと思った俺は、まだ誰にも迷惑をかけてないうちに、尊くんに連絡しようと外へ出た。
「悪い四乃、ちょっとトイレ行ってくるわ」
「二階堂さんフラフラですけど大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫」
 俺は足取り軽やかに、個室を後にした。何となく早く尊くんの声が聞きたくて、足がふわふわしていた。
 外に出ると夏の夜風が気持ち良かった。酒で熱った身体をちょうど鎮めてくれるみたいで心地よく感じて、その風に当たりながら、俺は尊くんに電話した。
「もしもし、拓真さん?」
「おー…昨日からお世話になって申し訳ないんだけどさ…」
「何でも言ってください。あと申し訳ないなんて思わなくていいんですよ」
「はは、ありがと。迎えに…来てくれたり…する?」
「もちろん構いませんよ。飲みすぎちゃったんですか?」
「ん…飲みすぎた…だからもう歩けない…」
「すぐ迎えに行きますね」
「イケメン大好き…ありがと」
「そういう…」
電話越しで尊くんが何か言っていたけど、要件を伝え満足した俺はすぐ通話を切ってしまった。意識がなくなる前に店の場所と個室までのルートを尊くんに送った。やり切った俺はフラフラの足取りで個室に戻った。
「あれ、四乃もトイレか?」
戻ると個室に四乃の姿はなかった。
 そういえばまだ相談事も聞いてなかった。しかしここまで酔ってしまうと答えられないし、日を改めることを相談しよう。そう思いながら俺は机に突っ伏した。
 それにしても飲みすぎた。佐藤に忠告されたのに、結局飲みすぎてしまった。シェアして飲んでいた時、俺の倍以上の酒を四乃は飲んでいたにもかかわらず、顔色1つ変えずにまだまだいけるよう感じだった。その顔を見て飲んでいたせいか、俺もまだまだいける、なんて錯覚してしまっていたのだ。
 だんだんと頭痛が酷くなり、眠気も相まって、俺は全く周りを把握できていなかった。不意に誰かが後ろに近付いてきていたことも、無理やり押し倒されたことも、全てが終わって天井を見るまでは、自分に何が起こったのか把握できなかった。
 豆電球の光がやけに眩しく感じた。揺れる光の中、誰かが俺の上に乗っているのはわかった。だけど誰が乗っているかまでは分からなかった。四乃なのかと声をかけても返事はない。ただ逆光で顔の見えない男が何もせずに俺の上に跨っているだけの状況に、俺は恐怖を覚えた。
 動くこともできず、ただ早く尊くんが迎えに来ないか、四乃が戻ってこないか、そればかり考えていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...