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9、お家デート①〜side 尊〜
⑤
しおりを挟む「拓真さん、これ返信してあげてください」
僕に携帯を渡した。本当は今日1日は僕だけを見て欲しかったけど、仕事の人たちもずっと返信なかったら深刻なんじゃないかって心配するだろうし。
「ありがとう。すっかり忘れてた」
「ふふ、コーヒーもどうぞ。ゆっくり返信していてください」
僕はコーヒーを置いて考えていたサンドウィッチを作るためにキッチンに戻った。
作っていると拓真さんの笑い声が聞こえてきた。そんなに面白いメッセージでもあったのかと少し嫉妬した。今日は朝からあまり拓真さんの笑い声を聞いていない気がする。しかもさっきはすごく怒っちゃったし。
1人反省会を開いていると、リビングから叫び声が聞こえてきた。慌ててリビングに行くと携帯に向かって頭を下げている拓真さんがいた。
「何かまずいことでもあったんですか?」
「え?いやその…なんでもない!」
なんでもないっていう叫び声じゃなかったけど。ここで詰めたらまた萎縮しちゃうかもだし、僕はいつか話してくれるだろうと待つことにした。
「僕にできることあったらなんでも言ってくださいね」
「う、うん、ありがとう」
そう言い残して僕はまたキッチンに戻った。拓真さんは笑顔でお礼を言ってくれたけど、その顔は少し引きつっていた。それからしばらくすると拓真さんは何かずっとブツブツ呟いている。本当に大丈夫かな。
とりあえずサンドウィッチを作り終え、リビングに持っていった。
「お待たせしました」
声を掛けたが、拓真さんは何かに集中していて僕がきたことに気が付いていない。目の前の机に皿を置いても気付かなかった。こんなに熱心になるなんて仕事が羨ましいと、僕は仕事に嫉妬した。
僕は拓真さんの隣に座った。もちろん拓真さんは集中してて気付かない。だからこれはしょうがないこと、僕は拓真さんの耳にふっと息を吹きかけた。
「ひょわぁっ!」
「あはは、すごい声」
不意を突かれた拓真さんはものすごい気の抜けた声を上げながら飛び上がった。
「びっくりした」
「声を掛けたんですけど、集中してて気付かなかったので」
「ごめん、ちょっと考え事してて」
「仕事で何かあったんですか?」
勝手に休みにしてしまったのは僕だし、いくら同僚の人がオッケー出しても、拓真さんはそうじゃなかったのかも。そう考えると、申し訳ない気持ちが一気に押し寄せてきた。
そんな僕の様子に気付いたのだろう拓真さんも、困ったという笑いをしながら慰めるように頭を撫でてきた。
「えっと、仕事のことじゃないから、そんな申し訳なさそうな顔しないで」
「良かったです。勝手に休み取っちゃってありがた迷惑だったらどうしようかと」
「休みは本当に嬉しいよ!俺じゃ無理してでも行ってただろうしね。とめてくれてありがとうって感じ」
本当に良かった。ちゃんと言葉で伝えてくれたためか、僕はほっとした。
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