愛を注いで

木陰みもり

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8、お家デート①〜side 拓真〜

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 こんなにゆっくり寝たのはいつぶりだろうか。最近は残業続きに休日もシークレット・モーションのイベントに参加しそのまま終電まで飲み。休みという休みを過ごしていなかった。だから昼間から寝られるなんて思ってもみなかった。
「ぐっすり寝てしまった…」
彼の腕の中は温かくて、冷房の効いた部屋ではちょうど良い暖になっていた。
 彼はまだ寝ているようで、もぞもぞと起こさないように少し上の方に上がった。少し寝たことでスッキリした俺は、実は暇を持て余していた。気持ち良さそうに寝ているところ起こすのも申し訳ないので、俺はしばし彼の観察をすることにした。
 改めて見ると、とても整った顔をしている。この前は前髪を縛っていたけど今は下ろしている。結構な長さがあり、縛り癖か綺麗なウェーブを描いて彼の目元を隠している。前髪の隙間から見える目元の黒子がやっぱり色っぽい。
 というかこの髪型どこかでみたことあるな。そういえば尊くんは前にも会ったことがあるって言っていた。でもこんな格好いい人見たら忘れそうにないけど。ここの地域周辺であった出来事を思い出すために目を瞑り記憶を辿ってみた。
 コーヒー…コーヒー関連で…
眉間に皺を寄せながら、必死に考えてみる。すると突然唇に柔らかくて温かいものが当たった。ビックリして目を開けると、髪を掻き上げながら尊くんがこちらを見ていた。その姿は窓からの光も相まって一層格好良く見えた。
 その格好良さに思わず見惚れていると、また唇に柔らかくて温かい感触がした。ハッとしてようやくキスされたのだと俺は気付いた。
――お、俺の恋人格好良すぎじゃないか…
なんてキュンとしながら口を押さえる。そんな俺の仕草が可笑しかったのか、尊くんは口角をヒクヒクさせながら笑いを堪えている。
 俺そんなに可笑しなことしたか?そう不思議な顔をして見つめ返す。
「朝はあんなにえっちだったのに、今は初心な反応でつい…あはは」
「わ、笑わなくてもいいだろ」
堪えきれなくなった尊くんが吹き出しながら笑った。
眠る前は少し元気が無さそうだったから、今は元気そうで少し安心した。だけど、そんなに笑わなくても良くないか?
ムッと頬を膨らませ、尊くんの頬を思い切りつねった。結構強めにつねったが尊くんは気にせず笑っている。こんなに笑う人だったかと不思議に思いながら、少し吹っ切れたような顔で笑う彼を見たら、そんな些細なことどうでも良くなった。そしてそんな彼を見ていたら、俺も釣られて笑ってしまった。
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