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7、とある腐女子の日記
①
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どうやら同僚が男性と付き合い始めたらしい。そんな嬉しい話、腐女子であるこの私、佐藤由莉が食い付くに決まっている。同人誌のモデルに!なんてことは、少しは思っているけど、単純に仕事が恋人みたいな同僚が、違うことに目を向けたことが嬉しいのだ。
同僚こと二階堂拓真は初めて出会った頃、絵に描いたようなイエスマンだった。お人好しなのか知らないけど、頼み事を断れない正確らしく、毎日誰の仕事かも分からない書類が机に積まれていた。それを文句も言わず残業までして終わらせていた。定時で帰る確固たる意志の私とは正反対だった。
同期で部署が同じだけど班は違い、あまり接点はなく、机は書類で山積みのため、顔もあまり見たことがない。薄い印象の彼。
そんな印象の薄い彼と私は新人歓迎会で運命的な出会いをしてしまったのだ。
「初日の挨拶の時以来だけど、久しぶり、で良いのかな?同期の二階堂。覚えてる?」
話しかけられ振り返るとそこには、綺麗な艶のある黒髪にシャープな顎、やや離れた切れ長の目に小さい口が少し色っぽい、理想の受けが立っていた。
それが私と二階堂の初めの出会いである。最初は同人誌の参考程度に観察させてもらってたけど、毎日の残業でできた隈が不憫そうな感じで確かに良かったのだが、流石に毎日残業は可哀想になり、趣味に支障が出ない程度に手伝ったり、自分の班長にちょっと告げ口してみたりしたら、あっという間に繁忙期以外は書類の山で二階堂が見えないなんてことは無くなっていた。
それに二階堂は仕事のできる人だった。あっという間に色んなことを任され、人あたりも良い彼は多方面から信頼を勝ち取っていった。私もそのうちの1人だ。
だから良いやつには良い人生を送ってほしい。だからまだ梅雨が明けたばかりのあの日、嬉しそうに帰ってきた彼を見て私も嬉しくなった。頬に手を当ててはニヤニヤして赤くなる彼はまるで恋する乙女のようだった。仕事以外に夢中になれるものが恋だなんて素敵じゃない。そう思いながら、私は密かにその恋を応援していた。流石に最愛の人には会いたいだろうし、仕事を割り振ることが苦手な彼も残業しないために克服するかもしれないと思っていた。
だけど初めてのリーダーで気合を入れすぎた彼は、みんなに気を使いすぎ結局ほとんどの仕事を自分でやってしまっていた。聞けば残業続きに終電帰りというではないか。これではきっと恋人には会えていないだろう。日に日に顔から悲壮感が漏れるようになっていた。
私は見るに耐えなくなり、お節介ババアのように話を聞くことにした。そうしたら案の定仕事優先の日々、ワーカーホリックもいい加減にしてほしいところだ。
こんな仕事優先ワーカーホリック男を半ば強引に仕事を切り上げさせ、恋人のもとに向かうよう突っついた。流石に放置しすぎたことを自覚したのか、プレゼントを用意して、謝り、もとい告白のし直しをするそうだ。どうなるかは分からないが、彼女さんとうまくいって欲しい。そう思っていたら、二階堂の口からとんでもないワードが飛び出した。
「どっ…そんな言い方ないだろ。男と付き合うのは初めてだし…あっ」
オ・ト・コ…だと…?
そう相手はまさかの男だった。私の理想の受けが、本当に今現実になろうとしている。滾る思い必死に隠し、私はプレゼントの提案をするべく二階堂に相手のことを聞きまくった。
名前は一條尊さん。喫茶店を開いているマスターで大学生くらいの年ということは私たちより5、6歳下だ。てことは大学には通っていないのか。明るい笑顔と髪色、そして大きなピアスが印象的な青年。好きなことを楽しそうに喋る。そしてちょっと悪戯っ子な性格。身長は二階堂よりも高く、180cm前後らしい。結構身長あるな。二階堂は一般的で170cmくらいだから、身長差がいい感じ。
コーヒーを淹れる姿に一目惚れしたらしい。恥ずかしがりながら教えてくれた。愛いやつめ。
そして最近喫茶店をオープンした、と。
これらから導き出される贈り物はズバリ、花束だ!スズランなんか可愛くていいかも。開店祝いにもなるし、派手じゃないから飾りやすいだろうし、それに愛想尽かされてても捨てやすいしね。
確か前に『幸せな再会』とか『愛する喜び』っていう意味もあった気がする。これで決まりね。あと2人が持ってたら可愛い気がする。
私は早速スズランの花束を提案した。男から男に花束はどうなのかと迷っていたが、「男とか関係ないから!好きな人に貰えるなら関係ないから!」としっかり力説しておいた。そして成就したかの報告と称し写真を送るよう約束した。これで同人誌用資料をゲットする算段、抜かりなし。でもまぁ、実際幸せになってほしいからの提案。
うまくいくといいね、そう思いながら二階堂の背中をバシッと叩き激励を送った。不安そうだったけど、今まで見た中で1番幸せそうな顔してた。きっとうまくいく、なんとなくだけどそんな感じがした。
同僚こと二階堂拓真は初めて出会った頃、絵に描いたようなイエスマンだった。お人好しなのか知らないけど、頼み事を断れない正確らしく、毎日誰の仕事かも分からない書類が机に積まれていた。それを文句も言わず残業までして終わらせていた。定時で帰る確固たる意志の私とは正反対だった。
同期で部署が同じだけど班は違い、あまり接点はなく、机は書類で山積みのため、顔もあまり見たことがない。薄い印象の彼。
そんな印象の薄い彼と私は新人歓迎会で運命的な出会いをしてしまったのだ。
「初日の挨拶の時以来だけど、久しぶり、で良いのかな?同期の二階堂。覚えてる?」
話しかけられ振り返るとそこには、綺麗な艶のある黒髪にシャープな顎、やや離れた切れ長の目に小さい口が少し色っぽい、理想の受けが立っていた。
それが私と二階堂の初めの出会いである。最初は同人誌の参考程度に観察させてもらってたけど、毎日の残業でできた隈が不憫そうな感じで確かに良かったのだが、流石に毎日残業は可哀想になり、趣味に支障が出ない程度に手伝ったり、自分の班長にちょっと告げ口してみたりしたら、あっという間に繁忙期以外は書類の山で二階堂が見えないなんてことは無くなっていた。
それに二階堂は仕事のできる人だった。あっという間に色んなことを任され、人あたりも良い彼は多方面から信頼を勝ち取っていった。私もそのうちの1人だ。
だから良いやつには良い人生を送ってほしい。だからまだ梅雨が明けたばかりのあの日、嬉しそうに帰ってきた彼を見て私も嬉しくなった。頬に手を当ててはニヤニヤして赤くなる彼はまるで恋する乙女のようだった。仕事以外に夢中になれるものが恋だなんて素敵じゃない。そう思いながら、私は密かにその恋を応援していた。流石に最愛の人には会いたいだろうし、仕事を割り振ることが苦手な彼も残業しないために克服するかもしれないと思っていた。
だけど初めてのリーダーで気合を入れすぎた彼は、みんなに気を使いすぎ結局ほとんどの仕事を自分でやってしまっていた。聞けば残業続きに終電帰りというではないか。これではきっと恋人には会えていないだろう。日に日に顔から悲壮感が漏れるようになっていた。
私は見るに耐えなくなり、お節介ババアのように話を聞くことにした。そうしたら案の定仕事優先の日々、ワーカーホリックもいい加減にしてほしいところだ。
こんな仕事優先ワーカーホリック男を半ば強引に仕事を切り上げさせ、恋人のもとに向かうよう突っついた。流石に放置しすぎたことを自覚したのか、プレゼントを用意して、謝り、もとい告白のし直しをするそうだ。どうなるかは分からないが、彼女さんとうまくいって欲しい。そう思っていたら、二階堂の口からとんでもないワードが飛び出した。
「どっ…そんな言い方ないだろ。男と付き合うのは初めてだし…あっ」
オ・ト・コ…だと…?
そう相手はまさかの男だった。私の理想の受けが、本当に今現実になろうとしている。滾る思い必死に隠し、私はプレゼントの提案をするべく二階堂に相手のことを聞きまくった。
名前は一條尊さん。喫茶店を開いているマスターで大学生くらいの年ということは私たちより5、6歳下だ。てことは大学には通っていないのか。明るい笑顔と髪色、そして大きなピアスが印象的な青年。好きなことを楽しそうに喋る。そしてちょっと悪戯っ子な性格。身長は二階堂よりも高く、180cm前後らしい。結構身長あるな。二階堂は一般的で170cmくらいだから、身長差がいい感じ。
コーヒーを淹れる姿に一目惚れしたらしい。恥ずかしがりながら教えてくれた。愛いやつめ。
そして最近喫茶店をオープンした、と。
これらから導き出される贈り物はズバリ、花束だ!スズランなんか可愛くていいかも。開店祝いにもなるし、派手じゃないから飾りやすいだろうし、それに愛想尽かされてても捨てやすいしね。
確か前に『幸せな再会』とか『愛する喜び』っていう意味もあった気がする。これで決まりね。あと2人が持ってたら可愛い気がする。
私は早速スズランの花束を提案した。男から男に花束はどうなのかと迷っていたが、「男とか関係ないから!好きな人に貰えるなら関係ないから!」としっかり力説しておいた。そして成就したかの報告と称し写真を送るよう約束した。これで同人誌用資料をゲットする算段、抜かりなし。でもまぁ、実際幸せになってほしいからの提案。
うまくいくといいね、そう思いながら二階堂の背中をバシッと叩き激励を送った。不安そうだったけど、今まで見た中で1番幸せそうな顔してた。きっとうまくいく、なんとなくだけどそんな感じがした。
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