愛を注いで

木陰みもり

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3、愛を教えてくれた君へ side拓真

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「まぁ、実際よく気付く良い子だよね。私もこの前1か所ミス見つけてもらっちゃったわ。怒られる前で良かったよ!」
「書類隅々まで見てるよな。仕事が早いわけじゃないが、正確にまとめてくれるのは本当に助かるよな。」
うんうんと、四乃の前の部署の奴らに感謝をしながら佐藤と一緒に頷く。

「そういや最近残業ばっかりだけどあんたは大丈夫なわけ?」
佐藤の言葉に思わず苦笑いしてしまった。そんなに大変そうに見えるのか俺はと、ついつい佐藤に愚痴ってしまった。
「そんなに大丈夫じゃなさそうかな?」
「仕事も大変そうだけど、それ以上にプライベートで問題を抱えていると私の女の勘が言うのだよ。」
ケラケラと笑いながら、愚痴なら聞くよと背中を叩いてくる。
入社当時からずっと一緒だが、この気遣いに何度も救われている。
「じゃあ、この報告書まとめながら聞いてくれるか?」
「いいけど、あんたは少し周りに仕事を振る努力したら?」
「いやぁでもみんなそれぞれ忙しそうだし?なかなかな。最近はだいぶ振れるようになったと思うんだけど。」
「だったら何で毎日残業してるの。私今回は別企画に組み込まれてるけど、まだ暇な方だし手伝うよ。」
「それは悪いよ。せっかく定時で上がれる時期ってことだろ?」
「悪いと思うなら、次飲みに行く時奢りで!飲むために私も手伝うわ。」
そう言いながら、勝手に俺のデスクの書類を掻っ攫って席に着く。男よりも漢気がある同僚に報いるため、俺も仕事に取り組む。
「で、何か最近あったでしょ。」
「えっ?」
「まず、外回りの帰りが遅かった日、この世の幸せを詰めましたーって顔で帰ってきてたじゃん。別に仕事のことって訳じゃなさそうだったし。何かいいことあったのかなーって。」
「まぁ、あの日はいいことがあった日だったな。でも残業で天国から地獄だった日でもあるな。」
「次に不思議だったのは、終業時間を気にしなかったのにめちゃくちゃ気にするようになったこと、で、残業で落ち込むが最近のワンセットね。」
そんなつもりはなかったが、まさかそんなに行動に出ていたとは気が付かなかった。呆気に取られていると、佐藤は矢継ぎ早に話を続けた。
「でね、私は考えたわけよ。入社以来ずっと同じ部署で、最高の受けモデ…じゃなかった、最高の同僚に、ステキな春!が訪れたんじゃないかって!仕事人間が時間を気にするようになるなんて恋よ、恋!」
受けモデってなんだ?と一瞬思ったが、それよりも【恋】という図星をつかれ、顔から火を吹くかと思うくらい赤面してしまい、思わず持っていた資料で顔を隠す。
 冷静になれ、冷静になるんだ俺!と心を落ち着かせる。しかし、【恋】という単語に思わず彼と出会った日のことを思い出しさらに顔が熱くなる。

 それにしても佐藤はよく人を見ているやつだ。しかも直感まで鋭いなんて、本当にどちらが最高の同僚なんだか。
「二階堂の行動が分かりやすすぎなのよ。今も真っ赤じゃない。」
呆れたようにこちらをチラ見しながらも、仕事の手は淡々と猛スピードでキーボードを叩いている。それを見ると自分が情けなく感じ、幾分か冷静になってきた。
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