愛を注いで

木陰みもり

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1、一目惚れと恋の味

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「気にしないでください。『愛情いっぱい』とか恥ずかしいこと言うから、反応に困っちゃっただけですよ。お兄さん意外とロマンチストなんですね。」
「ほ、本当か?俺よくひと言余計で、よく怒られるんだ。」
さっきまでのぎこちなさはなく、穏やかに微笑んでいる。本当に驚いただけのようだ。
しかし安堵で俺は気付かなかった。彼の顔は真っ赤で傷付いたというよりは、少し嬉しそうな顔をしていた。

「確かに、変なタイミングで、突拍子もないこというのは直す努力をした方がいいですね。」
クスクスとさっきみたいに、いたずらっ子のように笑って見せた彼は、本当に気にしていなさそうだ。

良かったと胸を撫で下ろした。

「直せたら苦労しないよ。余計なこと言って何度上司や営業先で怒られたか。無神経なつもりはないんだけどな……」
ブツブツと愚痴をこぼしながら、頬杖をついた。そんな俺を見かねたのか、話題を変えるようにアイスコーヒーを俺の前へ置いた。
「落ち込まないでくださいよ。ほら、余計なことでも人によってはよく捉えてくれる人もいますよ!それより、アイスコーヒーお待たせいたしました。」
「ありがとう。さっきの説明聞いて、楽しみだったんだ。どれくらい違うんだろう。」
そう言って、子どもみたいに目をキラキラさせた俺を、彼は安心したような顔で、優しく微笑んだ。
その笑みはどうしようもなく心を高鳴らせる。緊張のせいで、ついつい彼から目を逸らしてしまった。その時の彼のしゅんとした顔に俺はまだ気付かなかった。

「いただきます」とストローを加えてコーヒーを飲む。
「んっ!これ、いつもより甘みを感じる……!うまい!こんなうまいコーヒー初めて飲んだよ!」
興奮気味に早口で感想を言うと、呆気に取られたような顔をした彼が、カウンター越しに真っ直ぐ手を伸ばし、俺の頬にそっと触れ、だんだん近付いてくる。
「おっ、おい!」
温かい……彼の触れた手は心地いい温かさをもっていた。

今度は俺が呆気に取られていると、彼ははっとして手を離した。彼が触れたところがじわじわと熱を帯びていく。その場所にそっと触れると、胸が弾んだ。「嬉しい」と何故だか思ってしまい、はっと緩んだ口元を思いっきり押さえて目を顔をあさっての方向に向けた。
「すみません、僕……急に……」
とんでもないことをしてしまったと言う顔で彼は謝ってきた。『いや、いいんだ。嬉しかったと思った自分が恥ずかして、目を合わせられないだけなんだ。』そう言いたいのに言葉が出てこない。ドキドキと心臓が早鐘を打ち、俺と彼の2人きりの空間にうるさく響く。
静まってくれ俺の心臓!早く何か言わないと!そう思いながらも鼓動はどんどん早くなっていく。
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