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27、悩み ⑤
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「辛いよね、ずっと我慢させられるのって。不安にもなるし、僕って必要とされてるのかなって、思っちゃうよね」
聖司さんの言葉は、まるで俺の心を覗き込んだかのように今の俺の気持ちを代弁していた。
それでもきっと聖司さんの言うそれはそれとは比べ物にならないほど普通の感情で、俺はまた違うベクトルの感情なのではと思った。状況が状況なだけに、そう思わざるを得なかった。
「あ、こんなパートナーが倒れてる状況でも言えるのかって思ってるでしょ?」
「そ、そんな…」
「ふふふ、俺は相手がただ眠っているだけならなるよ。欲求不満だったなら、理性なんて飛んで、勝手にしちゃうかもね」
「う、うそ…聖司さんがそんな…俺みたいなわけない」
今そんなこと聖司さんの口からはなんとなく聞きたくなかった。ただ慰めるために同調しているようにしか聞こえない。
俺はこんなにも自分が嫌なのに、聖司さんはそうじゃない。自分の醜い部分が浮き彫りになっていくようで嫌だった。
「ここからは俺の独り言ね。嫌なら耳を塞いでて」
そう言うと聖司さんは俺に背中を向けて話し始めた。
「僕も最初はなかなか欲求が満たされなくて、陽さんに会うたびに迫ってたよ。でも僕たちはまだ高校生だったし、千影さんと先生のこともあったから、陽さんは余計慎重になってたんだと思う」
母さんは当時、俺を高校生で産んだ。相手は高校の教師、俺の父親だ。だけどそのせいで母さんは自主退学、父は解雇された。
そんな望まれずに産まれてきた子供を陽さん知っているから、陽介に『卒業まで性行為禁止』という条件を出したのだろう。なんとなく分かっていた。
「Subってそういう欲求が満たされないと不安になっちゃう人が多いのかな。相手を求められずにはいられないというか、身体の隅々まで相手で染めて欲しいというか。みんながそうってわけじゃないけど、僕たちの周りはみんなそうだよね。無理やりでも肉体関係を持って安心したい」
そう話す口調は実体験をもとに話しているような口ぶりで、いつの間にかその聖司さんの独り言に、不思議な説得力を感じていた。
「高校生の時にね、どうしても我慢できなくて、陽さんに無体を強いたことがあるんだ」
「そ、その時、どうしたんですか?」
「ふふ、やっと話してくれた」
「あっ…」
俺はいつの間にか聖司さんの話に聞き入り、質問までしてしまっていた。もしかしたら、俺のこの欲も、押さえられるヒントが見付かるかもしれないと、思ってしまったから、だから質問せずにはいられなかった。
「寝込みを襲ったはずだったんだけど、結局は未遂で終わって。愛の鞭だよね、実は――」
聖司さんはまた俺の方を向いて、陽さんにされたことを俺に耳打ちしてきた。
その内容は特殊で、本当にこの2人がしていたのかと思うほど激しくアブノーマルな内容だった。
それができたのは、聖司さんが陽介に負けず劣らず想像力がすごいかららしく、そのおかげで成り立っていた、いわゆる『躾』だったらしい。
でも俺には無理なことだけは、話を聞いていてすぐに分かった。
「陽さんを感じて、陽さんに眺められるってなかなかできることじゃないから、それはもう満たされたよ。部屋全体が陽さんでいっぱいって感じで最高なんだよ」
「恥ずかしくてできない…」
「そこもいいんだよ。だって1人で致す行為なんて、誰かに見せるものじゃないでしょ?それをパートナーに見られるってかなりの背徳感があるんだ」
「それで満足したんですか?」
「躾だからね、耐えることへの訓練だったんだ。それに躾られてるっていうことがまた俺を満たしてくれた。そしたらいつの間にか無くなってたよ、不安も、不満も」
「いいな…あっ」
俺は聖司さんの話に、羨ましそうに呟いてしまったことを咄嗟に隠そうと外方を向いた。
そんな俺をどう思ったかは分からないけれど、聖司さんはそのまま何も言わずに陽介を持ち上げて、陽介を2階に連れて行った。
聖司さんの言葉は、まるで俺の心を覗き込んだかのように今の俺の気持ちを代弁していた。
それでもきっと聖司さんの言うそれはそれとは比べ物にならないほど普通の感情で、俺はまた違うベクトルの感情なのではと思った。状況が状況なだけに、そう思わざるを得なかった。
「あ、こんなパートナーが倒れてる状況でも言えるのかって思ってるでしょ?」
「そ、そんな…」
「ふふふ、俺は相手がただ眠っているだけならなるよ。欲求不満だったなら、理性なんて飛んで、勝手にしちゃうかもね」
「う、うそ…聖司さんがそんな…俺みたいなわけない」
今そんなこと聖司さんの口からはなんとなく聞きたくなかった。ただ慰めるために同調しているようにしか聞こえない。
俺はこんなにも自分が嫌なのに、聖司さんはそうじゃない。自分の醜い部分が浮き彫りになっていくようで嫌だった。
「ここからは俺の独り言ね。嫌なら耳を塞いでて」
そう言うと聖司さんは俺に背中を向けて話し始めた。
「僕も最初はなかなか欲求が満たされなくて、陽さんに会うたびに迫ってたよ。でも僕たちはまだ高校生だったし、千影さんと先生のこともあったから、陽さんは余計慎重になってたんだと思う」
母さんは当時、俺を高校生で産んだ。相手は高校の教師、俺の父親だ。だけどそのせいで母さんは自主退学、父は解雇された。
そんな望まれずに産まれてきた子供を陽さん知っているから、陽介に『卒業まで性行為禁止』という条件を出したのだろう。なんとなく分かっていた。
「Subってそういう欲求が満たされないと不安になっちゃう人が多いのかな。相手を求められずにはいられないというか、身体の隅々まで相手で染めて欲しいというか。みんながそうってわけじゃないけど、僕たちの周りはみんなそうだよね。無理やりでも肉体関係を持って安心したい」
そう話す口調は実体験をもとに話しているような口ぶりで、いつの間にかその聖司さんの独り言に、不思議な説得力を感じていた。
「高校生の時にね、どうしても我慢できなくて、陽さんに無体を強いたことがあるんだ」
「そ、その時、どうしたんですか?」
「ふふ、やっと話してくれた」
「あっ…」
俺はいつの間にか聖司さんの話に聞き入り、質問までしてしまっていた。もしかしたら、俺のこの欲も、押さえられるヒントが見付かるかもしれないと、思ってしまったから、だから質問せずにはいられなかった。
「寝込みを襲ったはずだったんだけど、結局は未遂で終わって。愛の鞭だよね、実は――」
聖司さんはまた俺の方を向いて、陽さんにされたことを俺に耳打ちしてきた。
その内容は特殊で、本当にこの2人がしていたのかと思うほど激しくアブノーマルな内容だった。
それができたのは、聖司さんが陽介に負けず劣らず想像力がすごいかららしく、そのおかげで成り立っていた、いわゆる『躾』だったらしい。
でも俺には無理なことだけは、話を聞いていてすぐに分かった。
「陽さんを感じて、陽さんに眺められるってなかなかできることじゃないから、それはもう満たされたよ。部屋全体が陽さんでいっぱいって感じで最高なんだよ」
「恥ずかしくてできない…」
「そこもいいんだよ。だって1人で致す行為なんて、誰かに見せるものじゃないでしょ?それをパートナーに見られるってかなりの背徳感があるんだ」
「それで満足したんですか?」
「躾だからね、耐えることへの訓練だったんだ。それに躾られてるっていうことがまた俺を満たしてくれた。そしたらいつの間にか無くなってたよ、不安も、不満も」
「いいな…あっ」
俺は聖司さんの話に、羨ましそうに呟いてしまったことを咄嗟に隠そうと外方を向いた。
そんな俺をどう思ったかは分からないけれど、聖司さんはそのまま何も言わずに陽介を持ち上げて、陽介を2階に連れて行った。
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