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27、悩み ②
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「ふふ、笑っちゃってごめんね。でも、2人がお互いを思い合ってくれているのが嬉しくて」
「でも陽介はCollarくれないって」
「今はね。それにあのロマンチストが、言われて素直にくれると思う?」
「くれない…かも?」
「陽介は嘘吐くのが下手だから、言葉が足りなくなるか、喋りすぎるかのどちらかなの。今回は言葉足らずで、晴陽くんが誤解しちゃったのね」
本当にそうなのだろうか。だったら「もう少し待ってて」くらいは言ってほしかった。そう言ってくれたら、まだ期待もできたのに。言葉足らずにも程がある。
でも陽さんがそう言うならそうなのだろう。やっぱり風呂場での態度は何もかも大人気なかった気がしてきた。
「俺、子供みたいに無視して、大人気なかったですよね…」
「そんなことないわ。Collarって私たちにとって大切なものでしょ。それを欲しがって何が悪いの」
「でも少し待ったらこんなことで陽介を傷付けずに済んだんじゃ…」
ショックで冷静じゃなかったとはいえ、陽介に悪いことをしてしまった。もしかしたら本当は用意していて、何かしたいことがあったのかもしれない。
それに自分も醜い感情に悩まされることもなかったのかも。
陽介は『夜景の綺麗なホテル』を初めての場所に選ぶくらいだ、冷静に考えたらありえない話じゃない気がしてきた。
「まぁ晴陽くんが気に病むなら、陽介がお風呂から出てきたらすぐ謝ったらいいと思うわ」
「口、聞いてくれますかね…」
「そこは大丈夫よ。ショックは受けても、怒ってはないだろうから」
「ショック…ですよね…」
「晴陽くんも陽介から無視されたらショックでしょ?それと同じよ」
陽さんの言う通りだ。陽介は俺の態度にどれだけショックを受けたのだろうか。俺は陽介から無視されたら立ち直れないかもしれない。
考えただけでも苦しくなって、俺は胸を押さえた。
「ちゃんと謝らないと、ですよね」
「自分が悪いと思うならね。でも、陽介も悪いと思うなら、そこもちゃんと言ってあげて。じゃないと同じことで晴陽くんも陽介もまた傷付くことになるわ」
「ちゃんと話さないと、ですよね」
陽さんに話を聞いてもらって、俺の心は一時的にでも軽くなった。俺は別に陽介を苦しめたいわけじゃなかった。ただ自分の不安を消すためだけに陽介を悲しませたり傷付けたりしていただけだった。そう思わせてくれただけでも俺は自分の醜さが少し浄化されたような気分だった。
それから俺は涼しい部屋で陽さんと他愛無い会話を楽しみながら、陽介がお風呂から出てくるのを待った。
だけどどれだけ待っても陽介は出てこなかった。
「陽介、遅いですね…」
「早く洗濯したいのに、何してるのかしら」
「俺、様子見てきますね」
俺は陽さんにそう言い、立ち上がった。瞬間、風呂場の方から陽介の叫び声が聞こえた。
「やめろ!近寄るな!触るな!」
「でも陽介はCollarくれないって」
「今はね。それにあのロマンチストが、言われて素直にくれると思う?」
「くれない…かも?」
「陽介は嘘吐くのが下手だから、言葉が足りなくなるか、喋りすぎるかのどちらかなの。今回は言葉足らずで、晴陽くんが誤解しちゃったのね」
本当にそうなのだろうか。だったら「もう少し待ってて」くらいは言ってほしかった。そう言ってくれたら、まだ期待もできたのに。言葉足らずにも程がある。
でも陽さんがそう言うならそうなのだろう。やっぱり風呂場での態度は何もかも大人気なかった気がしてきた。
「俺、子供みたいに無視して、大人気なかったですよね…」
「そんなことないわ。Collarって私たちにとって大切なものでしょ。それを欲しがって何が悪いの」
「でも少し待ったらこんなことで陽介を傷付けずに済んだんじゃ…」
ショックで冷静じゃなかったとはいえ、陽介に悪いことをしてしまった。もしかしたら本当は用意していて、何かしたいことがあったのかもしれない。
それに自分も醜い感情に悩まされることもなかったのかも。
陽介は『夜景の綺麗なホテル』を初めての場所に選ぶくらいだ、冷静に考えたらありえない話じゃない気がしてきた。
「まぁ晴陽くんが気に病むなら、陽介がお風呂から出てきたらすぐ謝ったらいいと思うわ」
「口、聞いてくれますかね…」
「そこは大丈夫よ。ショックは受けても、怒ってはないだろうから」
「ショック…ですよね…」
「晴陽くんも陽介から無視されたらショックでしょ?それと同じよ」
陽さんの言う通りだ。陽介は俺の態度にどれだけショックを受けたのだろうか。俺は陽介から無視されたら立ち直れないかもしれない。
考えただけでも苦しくなって、俺は胸を押さえた。
「ちゃんと謝らないと、ですよね」
「自分が悪いと思うならね。でも、陽介も悪いと思うなら、そこもちゃんと言ってあげて。じゃないと同じことで晴陽くんも陽介もまた傷付くことになるわ」
「ちゃんと話さないと、ですよね」
陽さんに話を聞いてもらって、俺の心は一時的にでも軽くなった。俺は別に陽介を苦しめたいわけじゃなかった。ただ自分の不安を消すためだけに陽介を悲しませたり傷付けたりしていただけだった。そう思わせてくれただけでも俺は自分の醜さが少し浄化されたような気分だった。
それから俺は涼しい部屋で陽さんと他愛無い会話を楽しみながら、陽介がお風呂から出てくるのを待った。
だけどどれだけ待っても陽介は出てこなかった。
「陽介、遅いですね…」
「早く洗濯したいのに、何してるのかしら」
「俺、様子見てきますね」
俺は陽さんにそう言い、立ち上がった。瞬間、風呂場の方から陽介の叫び声が聞こえた。
「やめろ!近寄るな!触るな!」
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