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24、思い出の星空 ③
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「せめてベンチまで頑張れよ」
「一旦休憩だから」
「じゃあ今度は俺が背負ってやるよ」
時間が経ってようやく立てるようになった俺は、意気揚々と陽介の腕を自分の肩に置き、背負おうとした。
だけどどんなに踏ん張っても、俺の力じゃ陽介を持ち上げることはできなかった。
「くっ…引きずることしかできない…」
「あはは、無理しなくて大丈夫だよ」
「くそ…大きくなりやがって…」
俺は意地でもベンチに陽介を座らせるため、引きずりながらも無理やり連れて行った。
すくすくと成長したことは喜ばしいことだけど、それにしても大きくなりすぎだ。もう陽介を背負えないことに俺は寂しくなった。
「はい座って」
「ありがとう…もう足が棒だよ…」
「無理するからだろ」
「だってさ…ってそうだ!晴兄、大丈夫?」
陽介は何かを思い出したかのように、俺の身体をペタペタと触って、不安そうな顔で俺を見てきた。
「大丈夫って何が?」
「学校で、晴兄信じられないほど冷たかったんだよ」
「そうだったんだ」
「反応薄いよ…」
「だって、寝てただけだし」
「違うよ!俺が晴兄を気絶させたんだよ!」
陽介は急に苦しそうな顔をして俺にしがみついてきた。その身体は僅かに震えていて、俺はどうしたらいいか分からなかった。
「俺、晴兄にGlare、浴びせちゃった…晴兄、俺のことすごく怖がってた…怖がって、ずっと『俺のモノ』って言い続けてたんだ…ずっと身体が震えてて冷たくて、呼吸もうまくできなくなっちゃって…俺、すごく後悔して…」
必死に教室であった出来事を話しながら、陽介は俺を逃すまいと腕に力を込めて俺を抱きしめた。この強引で力強い抱きしめ方は、学校での陽介そのものだった。
陽介は何かに俺を取られるんじゃないかって、学校で常に怯えていた。それを表すかのように痛いくらい俺を抱きしめてくる。
家では絶対にしない、強引で、自分勝手とも取れる行動だった。
だけどその力強さが、俺の心も安心させてくれた。まだ求めてくれているんだって、そう思わせてくれた。
「俺、ちゃんと陽介に言われたこと、言えてたんだな…良かった」
「良くないよ、あんなの…」
「俺はちゃんと伝えられてないと思って不安だった。でも伝えられていたならいいし、勝手に気を失ったことも、陽介が怒ってないなら、俺はそれでいいよ」
「怒ってなんてないよ…でも…」
「それでも陽介が後悔するならさ、俺のお願い聞いてよ。それでチャラ。どう?」
本当にそれでいいのかと迷いながら、陽介は考え込んでしまった。当事者がいいって言ってるのに、きっとバカ真面目にそれが償いになるのか考えているんだ。
大胆なのか、小心者なのか、大切に思ってくれているのは嬉しいけど、少しくらい子供の頃みたいに遠慮なしにぶつかってきてほしいとも思う。
「答えは出たか?」
「うーん…晴兄がそれでいいなら?」
「言質取ったからな。後で出来ないは無しだから」
俺は抱きしめられた陽介の腕を振り解き、自分から陽介に覆い被さるように抱きついた。俺の急な行動に、陽介は驚きすぎたのか、ただただ固まっていた。それから耳まで真っ赤にしていた。
ただ抱きしめただけなのに、今更何を恥ずかしがることがあるのかと思うが、そんな反応もすごく可愛くて、愛おしかった。
俺はそのまま頭を撫でて、その撫でた手を首に置いて、じっと陽介を見つめた。
住宅街から離れたこの山はとても静かで、聞こえるのは虫の鳴き声と、お互いの心臓の音だけだった。
その心臓の音も、俺が陽介に顔を近付けたことで、さらにドクンドクンと心配になるほど心音が大きく聞こえた。
「顔…近いよ…」
「わざと…」
「恥ずかしいんだけど…」
「あ、目逸らすなよ」
陽介は見つめられたことに耐えきれず、外方を向いてしまった。俺はその顔を追いかけて、陽介の唇に自分の唇を重ねた。
「逃げないで」
「逃げてない」
「だったらこっち向いて」
俺は陽介の頬を持って自分の方に向けた。
月明かりに照らされた陽介の頬も耳も、林檎のように真っ赤に染まっていた。その赤い頬は火傷しそうなくらい熱くて、今にも火が吹きそうな顔をしていた。
「一旦休憩だから」
「じゃあ今度は俺が背負ってやるよ」
時間が経ってようやく立てるようになった俺は、意気揚々と陽介の腕を自分の肩に置き、背負おうとした。
だけどどんなに踏ん張っても、俺の力じゃ陽介を持ち上げることはできなかった。
「くっ…引きずることしかできない…」
「あはは、無理しなくて大丈夫だよ」
「くそ…大きくなりやがって…」
俺は意地でもベンチに陽介を座らせるため、引きずりながらも無理やり連れて行った。
すくすくと成長したことは喜ばしいことだけど、それにしても大きくなりすぎだ。もう陽介を背負えないことに俺は寂しくなった。
「はい座って」
「ありがとう…もう足が棒だよ…」
「無理するからだろ」
「だってさ…ってそうだ!晴兄、大丈夫?」
陽介は何かを思い出したかのように、俺の身体をペタペタと触って、不安そうな顔で俺を見てきた。
「大丈夫って何が?」
「学校で、晴兄信じられないほど冷たかったんだよ」
「そうだったんだ」
「反応薄いよ…」
「だって、寝てただけだし」
「違うよ!俺が晴兄を気絶させたんだよ!」
陽介は急に苦しそうな顔をして俺にしがみついてきた。その身体は僅かに震えていて、俺はどうしたらいいか分からなかった。
「俺、晴兄にGlare、浴びせちゃった…晴兄、俺のことすごく怖がってた…怖がって、ずっと『俺のモノ』って言い続けてたんだ…ずっと身体が震えてて冷たくて、呼吸もうまくできなくなっちゃって…俺、すごく後悔して…」
必死に教室であった出来事を話しながら、陽介は俺を逃すまいと腕に力を込めて俺を抱きしめた。この強引で力強い抱きしめ方は、学校での陽介そのものだった。
陽介は何かに俺を取られるんじゃないかって、学校で常に怯えていた。それを表すかのように痛いくらい俺を抱きしめてくる。
家では絶対にしない、強引で、自分勝手とも取れる行動だった。
だけどその力強さが、俺の心も安心させてくれた。まだ求めてくれているんだって、そう思わせてくれた。
「俺、ちゃんと陽介に言われたこと、言えてたんだな…良かった」
「良くないよ、あんなの…」
「俺はちゃんと伝えられてないと思って不安だった。でも伝えられていたならいいし、勝手に気を失ったことも、陽介が怒ってないなら、俺はそれでいいよ」
「怒ってなんてないよ…でも…」
「それでも陽介が後悔するならさ、俺のお願い聞いてよ。それでチャラ。どう?」
本当にそれでいいのかと迷いながら、陽介は考え込んでしまった。当事者がいいって言ってるのに、きっとバカ真面目にそれが償いになるのか考えているんだ。
大胆なのか、小心者なのか、大切に思ってくれているのは嬉しいけど、少しくらい子供の頃みたいに遠慮なしにぶつかってきてほしいとも思う。
「答えは出たか?」
「うーん…晴兄がそれでいいなら?」
「言質取ったからな。後で出来ないは無しだから」
俺は抱きしめられた陽介の腕を振り解き、自分から陽介に覆い被さるように抱きついた。俺の急な行動に、陽介は驚きすぎたのか、ただただ固まっていた。それから耳まで真っ赤にしていた。
ただ抱きしめただけなのに、今更何を恥ずかしがることがあるのかと思うが、そんな反応もすごく可愛くて、愛おしかった。
俺はそのまま頭を撫でて、その撫でた手を首に置いて、じっと陽介を見つめた。
住宅街から離れたこの山はとても静かで、聞こえるのは虫の鳴き声と、お互いの心臓の音だけだった。
その心臓の音も、俺が陽介に顔を近付けたことで、さらにドクンドクンと心配になるほど心音が大きく聞こえた。
「顔…近いよ…」
「わざと…」
「恥ずかしいんだけど…」
「あ、目逸らすなよ」
陽介は見つめられたことに耐えきれず、外方を向いてしまった。俺はその顔を追いかけて、陽介の唇に自分の唇を重ねた。
「逃げないで」
「逃げてない」
「だったらこっち向いて」
俺は陽介の頬を持って自分の方に向けた。
月明かりに照らされた陽介の頬も耳も、林檎のように真っ赤に染まっていた。その赤い頬は火傷しそうなくらい熱くて、今にも火が吹きそうな顔をしていた。
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