モラトリアムの俺たちはー

木陰みもり

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20、幸せの匂い 後編

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 晴兄が手を動かすたびに、その液体が俺のものと晴兄の手の間に入り込んで、くちゅくちゅといやらしい水音を響かせている。

「スゲー濡れてるけど、俺、陽介のこと気持ち良くできてるか?」
「うん、Goodいいよ…」

俺は一生懸命な晴兄の頭を撫でて褒めた。撫でると、晴兄は周りに花が飛んでるみたいに、ふにゃふにゃととろけた顔をした。

「こ…Commandコマンド使って…舐めさせて…」
「しょうがないな…Kneel下に座って

頬を紅潮させて、うっとりとCommandコマンドを要求する晴兄の言葉に、ここがリビングだということが俺の頭の中からすっぽりと抜け落ちていった。
 晴兄もそのことがすっぽりと抜け落ちてしまっていたのか、すんなりと床に座っていた。
 俺は自分のズボンと下着を少しズラして、下半身を顕にした。

Lick舐めて

俺の命令に、晴兄は躊躇することなく俺のものを舐め始めた。まるでアイスでも食べるかのように、ぺろぺろと美味しそうに、一心不乱にだ。その光景はまさに眼福だった。
 精通してからずっと、俺はこの光景を夢見ていた。それが今目の前に広がっているというだけで、俺はもう達しそうになっていた。

「晴兄、Hold咥えて

昨日からの興奮と朝の生理現象、それに晴兄のもどかしい手付きと舌遣いに俺はもう我慢の限界を迎え、自分のものを晴兄に咥えさせた。
 その命令に晴兄は苦しそうに口一杯に俺のものを咥え込んだ。しかも一気に奥まで咥え込んだせいでえずいていた。
 それでも晴兄は嬉しそうに咥えてくれて、その妖艶な姿に俺は晴兄の口の中で一瞬で達してしまった。

「ヤバッ…イくっ…ぅ…」
「んぐっ…」

すごく気持ちよかった。だけどそれと同時に、自分の体内にあった熱い熱を吐き出したことによって、一気に冷静になった。
 リビングで達してしまったたこともそうだが、何よりも晴兄の口の中に吐き出してしまったことに俺は動揺した。
 俺は慌てて起き上がり、晴兄の頭を掴んで下半身から引き剥がした。

「ご、ごめん…すぐ吐き出して」

しかし晴兄は吐き出そうとせず、そのまま飲み込んでしまった。それから潤んだ瞳で、褒めてほしそうに俺を見つめてきた。
 だけど吐き出せって言ったのに吐き出さないなんて、明らかに言うことを聞かなかったことに俺はモヤモヤしてしまった。俺の体内から出たものを飲んでくれて嬉しかったけど、俺の言ったことは聞いてくれなかった、だから褒めてもいいのか分からなくなってしまった。
 だから俺は褒めてほしいと晴兄を無視して、問い詰めてしまった。

「吐き出してって言ったよね」
「あ…ご、ごめんなさい…」

晴兄は俺の雰囲気に、いけないことをしたと感じ取り、キラキラした目から一瞬で怯えたような目をしてしまった。

「怒ってるわけじゃないよ。ただ納得する理由を聞かせて…Listen言えるよね?
「吐き出すなんて…も…もったいない…と思って…陽介から与えられるもの、なんでも欲しい…から…」

晴兄は話しながら恥ずかしくなってしまったのか、耳まで真っ赤にして俺から目を逸らしてしまった。
 俺は俺で、その可愛い発言に悶えるしかできなかった。それから問い詰めたことを恥じた。
 俺も嬉しかったのに、言うことを聞いてくれないからって、問い詰めるんじゃなかった。少しの間でも怯えさせちゃって、晴兄に悪いことをしてしまった。

「晴兄、Comeおいで

俺はズボンを上げて座り直し、晴兄を自分の膝の上に呼んだ。晴兄はその呼びかけに、嬉しそうに反応し、俺の膝に乗ってきた。

Good Boyいい子だね。すごく気持ち良かったよ、晴兄」
「ふふ、嬉しい」
「それと、飲んでくれてありがとう、嬉しかった」
「うん、でも言ったこと聞かなくてごめん…躾でもする?」

そう言いながら晴兄は自分の頬を俺の頬にくっ付けてきた。それからもう片方の俺の頬を撫でながら、さらに身体を密着させてくる。
 これは『躾』を楽しみに待っているのだろうか。身体が密着されたことで聞こえてきた晴兄の鼓動はドクンドクンと大きく鳴っていた。
 それならばと俺は晴兄にある提案をしてみた。

「じゃあ、勝手に飲むの禁止。これからは俺が『いいよ』って言うまで口の中で溜めてて」
「がんばる」
「できたらご褒美、できなかったらお仕置きね」
「今日の分は?」
「んーどうしようかな…」

俺は考えるフリをして晴兄の口に鼻を近付けた。うっすらと開いた晴兄の口からは、呼吸するたびに独特な香りが鼻を刺激した。
 それを嗅ぐたびに、本当に晴兄は俺の出したものを飲んだんだと再確認させられる。
 それがまた、晴兄が俺で染まっていっているようで、俺は興奮した。
 俺はたまらず、晴兄の口元からその下へ、顔をゆっくり下げていき、晴兄の首元に顔を埋めた。
 晴兄は俺の行動にキスマークをつけられると期待したのか、微かに震えていた。期待だけで身体を震わせてしまうなんて、可愛すぎて焦らしたくなる。
 まだかまだかと待つ晴兄を余所に、俺は晴兄の首筋に唇を当てては離してを繰り返した。その度に期待と落胆の吐息を漏らす晴兄はさらに愛おしかった。
 そろそろ本当にキスマークを付けてあげようかなと思った矢先、俺たちの上にバスタオルが降ってきた。

「雰囲気いいところ悪いんだけど、君たちここリビングって分かってる?」

その声にタオルを退けて見上げると、父さんが困ったように俺たちと見ていた。

「陽さんにバレる前にお風呂に入ってきなさい」
「も、もしかして…」
「息子たちの情事なんて見たくなかったよ。全く、陽さんが料理中で良かったよ」

父さんは俺たちの頭に手を置いて、深いため息を吐いた。
 晴兄は顔が見えなかったけど、タオルの中で顔を手で覆っているのがシルエットで分かった。きっと、いやかなり後悔してるんだろうな。さっきとは違う震え方をしていた。

「じゃ、じゃあ俺たちお風呂入ってくるね」
「陽さんには言っておくから、早く行っておいで」
「ありがとう」

俺は晴兄にタオルを被せたまま立ち上がり、そそくさとリビングを出ていった。

「この後どんな顔して聖司さんの前に出ればいいんだろ…」
「そんな気にしなくていいんじゃない?」
「気にするだろ。だって見られてたんだぞ」

よほど恥ずかしかったのか、晴兄は俺の腕の中でバタバタと暴れていた。

「そんな暴れたら落ちちゃう」
「いっそ落として今の記憶消してくれ」
「それはダメ」

俺は晴兄の身体をしっかりと抱き抱え直して、風呂場に直行した。
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