18 / 21
番外編 浅宮くんの事情3
しおりを挟む
次の日は、朝から不吉だった。
俺が授業中、消しゴムを使おうと思って筆箱を見たら、『三倉大好き』消しゴムがすっかり消えていた。
授業中なので騒ぐことはできないが、俺の心はザワザワしっぱなしだ。だってあの消しゴムは浅宮からもらった大切な消しゴムなんだから。
いつからないんだろう。昨日の午前の授業のときまではあったはずだけど……。午後は体育だったからあったかどうかは確認してはいない。
気づかないうちに落としたのか。家で眺めていたときに置いてきてしまったのか。
俺は浅宮からもらった消しゴムを保存するために、予備の消しゴムを持っていたからそれを使ったが、あの消しゴムだけはどうしても見つけなきゃいけない。
授業の合間の休み時間に、俺の席のすぐ前を浅宮が通り過ぎようとしていたので、俺はこっそり浅宮に視線を送る。
いつもならなんとなく浅宮と視線を交わしているのに、浅宮は俺のほうを見ようともしない。
「おい、目黒。昨日言ってた日本史のノート貸してやる」
浅宮は俺の隣の席に座っている、目黒に声をかけ、浅宮の日本史のノートを差し出している。
「うわぁ! ありがとう! 浅宮!」
目黒はめちゃくちゃ嬉しそうだ。
「ねぇ、浅宮はどこがテストに出ると思う?」
目黒の質問に浅宮はノートを開いて指差しながら、丁寧に答えている。
浅宮は誰にでも親切でホントにいい奴だな。そのくらいはいい。
でも、目黒と浅宮って、仲良かったかな……。俺はふたりが話してるとこ初めてみたかも……。
昼休み、廊下を俺がひとりで歩いていると浅宮たちのグループが前からやってくる。
浅宮たちのグループは皆ハイスペック野郎ばっかりで、当然優れたビジュアルの持ち主たちだ。その中でも浅宮は群を抜いてかっこいい。
背が高いのに頭ちっさいし、顔はめちゃくちゃかっこいい。
浅宮の容姿の良さはやばすぎるよな……。一般人とレベルが違いすぎる。
浅宮は学校一のビジュアル男だと思っていたけど、日本一かっこいい高校生なんじゃないだろうか。今度ネットでそういうコンテストを探して浅宮に出場を薦めてみようか。
浅宮とすれ違う。
そこには何のリアクションもない。ただすれ違っただけだ。
すれ違ったあと、俺は思わず振り返る。浅宮の背中はどんどん遠ざかっていき、一度も俺を振り返ることはなかった。
次の日、また浅宮は俺の目の前を通り過ぎて、俺の隣の席の目黒と話している。
「浅宮が昨日教えてくれた動画、むっちゃ楽しかったよ! マジ笑ったよ」
「そ?」
「うん! また面白そうなのあったら俺に送ってよ」
はぁ……。浅宮と話す目黒の楽しそうな声を聞くとなんだかイライラする。
昨日は俺、一度も浅宮と連絡取り合ってないぞ。なのに目黒には動画のリンクを送る暇があったのかよ!
そんな状態が一週間も続いた。
酷くないか?
浅宮は前みたいに学校で俺に視線を送ってくれなくなった。
浅宮にメールすればちゃんと返事は返ってくるけど、学校での浅宮の態度に心折れた俺はこの三日間、浅宮に連絡することをやめた。
そうしたら浅宮からの連絡はない。浅宮は忙しいのかもしんないけど、たまには浅宮からメールくれてもよくねぇ?
なんでいつも俺から連絡しないといけないんだよ……。
今日は木曜日。今日こそ放課後、浅宮から事情を問いただしてやるんだ!
HRが終わり、帰りの支度も済ませた。俺はいつも木曜日に浅宮と待ち合わせている空き教室に向かう。
教室をチラッと覗くとそこに浅宮がいた。浅宮の姿を見た途端に俺は緊張MAXだ。だってこれから浅宮と言い合いをしなきゃいけないんだから。
なんて言おう。
まずはどんなふうに切り出そう。
浅宮のことを責めるのをやめ、ここは何にもなかったふうに笑顔で浅宮に声をかけて、ジワジワと聞き出すべきか……?
それともいきなり「酷いぞ、浅宮!」と怒ってみせるべきか……?
俺がひとり躊躇していると、俺の横を通り越して目黒が空き教室の中に入っていく。
……え?
目黒と何やら話をしている浅宮。
そしてふたりはそのまま仲良くふたりで教室を出ていく。
どういうことだ……? 浅宮は俺を待っていたんじゃなくて、目黒を待ってたってことなのか?!
俺はショックでヨロヨロと壁に寄りかかる。
嘘だろ。浅宮。
お前、俺のことが好きだったんじゃなかったのかよ!
俺が授業中、消しゴムを使おうと思って筆箱を見たら、『三倉大好き』消しゴムがすっかり消えていた。
授業中なので騒ぐことはできないが、俺の心はザワザワしっぱなしだ。だってあの消しゴムは浅宮からもらった大切な消しゴムなんだから。
いつからないんだろう。昨日の午前の授業のときまではあったはずだけど……。午後は体育だったからあったかどうかは確認してはいない。
気づかないうちに落としたのか。家で眺めていたときに置いてきてしまったのか。
俺は浅宮からもらった消しゴムを保存するために、予備の消しゴムを持っていたからそれを使ったが、あの消しゴムだけはどうしても見つけなきゃいけない。
授業の合間の休み時間に、俺の席のすぐ前を浅宮が通り過ぎようとしていたので、俺はこっそり浅宮に視線を送る。
いつもならなんとなく浅宮と視線を交わしているのに、浅宮は俺のほうを見ようともしない。
「おい、目黒。昨日言ってた日本史のノート貸してやる」
浅宮は俺の隣の席に座っている、目黒に声をかけ、浅宮の日本史のノートを差し出している。
「うわぁ! ありがとう! 浅宮!」
目黒はめちゃくちゃ嬉しそうだ。
「ねぇ、浅宮はどこがテストに出ると思う?」
目黒の質問に浅宮はノートを開いて指差しながら、丁寧に答えている。
浅宮は誰にでも親切でホントにいい奴だな。そのくらいはいい。
でも、目黒と浅宮って、仲良かったかな……。俺はふたりが話してるとこ初めてみたかも……。
昼休み、廊下を俺がひとりで歩いていると浅宮たちのグループが前からやってくる。
浅宮たちのグループは皆ハイスペック野郎ばっかりで、当然優れたビジュアルの持ち主たちだ。その中でも浅宮は群を抜いてかっこいい。
背が高いのに頭ちっさいし、顔はめちゃくちゃかっこいい。
浅宮の容姿の良さはやばすぎるよな……。一般人とレベルが違いすぎる。
浅宮は学校一のビジュアル男だと思っていたけど、日本一かっこいい高校生なんじゃないだろうか。今度ネットでそういうコンテストを探して浅宮に出場を薦めてみようか。
浅宮とすれ違う。
そこには何のリアクションもない。ただすれ違っただけだ。
すれ違ったあと、俺は思わず振り返る。浅宮の背中はどんどん遠ざかっていき、一度も俺を振り返ることはなかった。
次の日、また浅宮は俺の目の前を通り過ぎて、俺の隣の席の目黒と話している。
「浅宮が昨日教えてくれた動画、むっちゃ楽しかったよ! マジ笑ったよ」
「そ?」
「うん! また面白そうなのあったら俺に送ってよ」
はぁ……。浅宮と話す目黒の楽しそうな声を聞くとなんだかイライラする。
昨日は俺、一度も浅宮と連絡取り合ってないぞ。なのに目黒には動画のリンクを送る暇があったのかよ!
そんな状態が一週間も続いた。
酷くないか?
浅宮は前みたいに学校で俺に視線を送ってくれなくなった。
浅宮にメールすればちゃんと返事は返ってくるけど、学校での浅宮の態度に心折れた俺はこの三日間、浅宮に連絡することをやめた。
そうしたら浅宮からの連絡はない。浅宮は忙しいのかもしんないけど、たまには浅宮からメールくれてもよくねぇ?
なんでいつも俺から連絡しないといけないんだよ……。
今日は木曜日。今日こそ放課後、浅宮から事情を問いただしてやるんだ!
HRが終わり、帰りの支度も済ませた。俺はいつも木曜日に浅宮と待ち合わせている空き教室に向かう。
教室をチラッと覗くとそこに浅宮がいた。浅宮の姿を見た途端に俺は緊張MAXだ。だってこれから浅宮と言い合いをしなきゃいけないんだから。
なんて言おう。
まずはどんなふうに切り出そう。
浅宮のことを責めるのをやめ、ここは何にもなかったふうに笑顔で浅宮に声をかけて、ジワジワと聞き出すべきか……?
それともいきなり「酷いぞ、浅宮!」と怒ってみせるべきか……?
俺がひとり躊躇していると、俺の横を通り越して目黒が空き教室の中に入っていく。
……え?
目黒と何やら話をしている浅宮。
そしてふたりはそのまま仲良くふたりで教室を出ていく。
どういうことだ……? 浅宮は俺を待っていたんじゃなくて、目黒を待ってたってことなのか?!
俺はショックでヨロヨロと壁に寄りかかる。
嘘だろ。浅宮。
お前、俺のことが好きだったんじゃなかったのかよ!
105
お気に入りに追加
659
あなたにおすすめの小説
嫌われものの僕について…
相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。
だか、ある日事態は急変する
主人公が暗いです
総長の彼氏が俺にだけ優しい
桜子あんこ
BL
ビビりな俺が付き合っている彼氏は、
関東で最強の暴走族の総長。
みんなからは恐れられ冷酷で悪魔と噂されるそんな俺の彼氏は何故か俺にだけ甘々で優しい。
そんな日常を描いた話である。
30歳まで独身だったので男と結婚することになった
あかべこ
BL
4年前、酒の席で学生時代からの友人のオリヴァーと「30歳まで独身だったら結婚するか?」と持ちかけた冒険者のエドウィン。そして4年後のオリヴァーの誕生日、エドウィンはその約束の履行を求められてしまう。
キラキラしくて頭いいイケメン貴族×ちょっと薄暗い過去持ち平凡冒険者、の予定
前世から俺の事好きだという犬系イケメンに迫られた結果
はかまる
BL
突然好きですと告白してきた年下の美形の後輩。話を聞くと前世から好きだったと話され「????」状態の平凡男子高校生がなんだかんだと丸め込まれていく話。
理香は俺のカノジョじゃねえ
中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。
なんで俺の周りはイケメン高身長が多いんだ!!!!
柑橘
BL
王道詰め合わせ。
ジャンルをお確かめの上お進み下さい。
7/7以降、サブストーリー(土谷虹の隣は決まってる!!!!)を公開しました!!読んでいただけると嬉しいです!
※目線が度々変わります。
※登場人物の紹介が途中から増えるかもです。
※火曜日20:00
金曜日19:00
日曜日17:00更新
生徒会長親衛隊長を辞めたい!
佳奈
BL
私立黎明学園という全寮制男子校に通っている鮎川頼は幼なじみの生徒会長の親衛隊長をしている。
その役職により頼は全校生徒から嫌われていたがなんだかんだ平和に過ごしていた。
しかし季節外れの転校生の出現により大混乱発生
面倒事には関わりたくないけどいろんなことに巻き込まれてしまう嫌われ親衛隊長の総愛され物語!
嫌われ要素は少なめです。タイトル回収まで気持ち長いかもしれません。
一旦考えているところまで不定期更新です。ちょくちょく手直ししながら更新したいと思います。
*王道学園の設定を使用してるため設定や名称などが被りますが他作品などとは関係ありません。全てフィクションです。
素人の文のため暖かい目で見ていただけると幸いです。よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる