2 / 21
2.お気に入りのカフェ
しおりを挟む俺と浅宮は、目的のカフェに到着して向かい合わせで座っている。立地の割に店内は広々としており、木の温かみを感じるような優しいインテリアが有栖の好みの店だ。
「ここは有栖が気に入ってる店で、俺もよく連れてこられるんだ」
通学路から少し外れたところにあるカフェで、値段も安めでゆっくりできるので時々ここで有栖とダラダラ喋ったりスマホゲームをしたりしている。
「ここに来れば会えるかもしれないんだな……」
そっか。浅宮はここにくれば偶然を装って有栖に会えるかもしれないって思うんだな。
「そうだ。今度俺と有栖がこの店に来るときに浅宮にこっそり教えようか?」
「え! だって俺、三倉の連絡先知らないし……」
「LINEでも交換する?」
「いいの?!」
「うん」
「うっそ、すげぇ嬉しい! どうやったら連絡先聞き出せるか昨日SNSで調べまくったのに、三倉のほうからそんなこと言ってくれるなんて思いもしなかったよ」
何を陰キャみたいなこと言ってるんだよ、お前学校でたくさん友達いるだろ。
俺と浅宮は連絡先を交換する。
「やっば、嬉しすぎる。これって俺からも三倉に連絡していいってことだよな……?」
「え? いいけど……」
当たり前だ。こっちから一方的に連絡を受ける気でいたのか?
「俺、今日勇気出して三倉に声かけてよかった。さっきから楽しすぎる」
「まだ店に来ただけで何も飲んだり食ったりしてないけど……」
なんだかわからないが、浅宮が楽しいならいいか。
「あ、あの……三倉は何をするのが好きなの……? 映画とか、カラオケとか、遊園地とかさ……」
え? なんで有栖じゃなくて俺のことを聞いてくるんだ?
あー、なる。有栖のことばっかり聞くのもあからさまだし、俺に悪いと思ったんだな。
「俺? 俺は映画が好きだな。でもホラーよりはもっとこう、アクション系が好きなんだけどね」
「そうなんだ。それじゃ俺もアクション系を好きになるわ」
意味がわからないぞ。なぜ趣味を揃えようとする……?
「あっ、あとは? すっ、好きな芸能人とかいる?」
「あー。お笑いのミドルっていうコンビいるじゃん? 俺も有栖も最近結構ハマってるんだよね」
ほら、さりげなく有栖情報も混ぜてやったぞ。喜べ浅宮。
「そいつら知ってるわ! こないだTVで見たコントがマジ面白くてさ」
「浅宮も見たのか? あれさ——」
そこから延々と色んな話を浅宮とした。
話してみると浅宮と案外気が合った。浅宮は話も面白いし、浅宮と話しているとすごく盛り上がって、あっという間に時間が経ってしまった。
それから普通に浅宮と友達になった。浅宮は結構マメな男らしく、『今なにしてる?』とか『面白い漫画見つけたから今度貸すよ』とか『おやすみ』とか、ちょいちょい俺にLINEを送ってくる。
浅宮のいいところは見た目だけだと思ってたけど、話してみたら気さくでいい奴だな。
152
お気に入りに追加
674
あなたにおすすめの小説
騎士団で一目惚れをした話
菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公
憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。
【幼馴染DK】至って、普通。
りつ
BL
天才型×平凡くん。「別れよっか、僕達」――才能溢れる幼馴染みに、平凡な自分では釣り合わない。そう思って別れを切り出したのだけれど……?ハッピーバカップルラブコメ短編です。
理香は俺のカノジョじゃねえ
中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。
告白ゲーム
茉莉花 香乃
BL
自転車にまたがり校門を抜け帰路に着く。最初の交差点で止まった時、教室の自分の机にぶら下がる空の弁当箱のイメージが頭に浮かぶ。「やばい。明日、弁当作ってもらえない」自転車を反転して、もう一度教室をめざす。教室の中には五人の男子がいた。入り辛い。扉の前で中を窺っていると、何やら悪巧みをしているのを聞いてしまった
他サイトにも公開しています
何でもできる幼馴染への告白を邪魔してみたら
たけむら
BL
何でもできる幼馴染への告白を邪魔してみたら
何でも出来る美形男子高校生(17)×ちょっと詰めが甘い平凡な男子高校生(17)が、とある生徒からの告白をきっかけに大きく関係が変わる話。
特に秀でたところがない花岡李久は、何でもできる幼馴染、月野秋斗に嫉妬して、日々何とか距離を取ろうと奮闘していた。それにも関わらず、その幼馴染に恋人はいるのか、と李久に聞いてくる人が後を絶たない。魔が差した李久は、ある日嘘をついてしまう。それがどんな結果になるのか、あまり考えもしないで…
*別タイトルでpixivに掲載していた作品をこちらでも公開いたしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる