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3.様子がおかしい
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その日の夜のことだった。柊介のスマホが鳴り、見ると大智からの着信だった。大智は同じ大学、学部の友人だ。
「もしもし」
「柊介! 大変だ!」
大智はかなり慌てているみたいだ。
「どうしたんだよ」
「俺さ、今バイト中なんだけどさ」
バイト中に電話かけてくんなよ。大智はバーテンダーの見習いのような立場でバーでアルバイトをしている。だから夜は忙しいはずだ。
「ウチの店に絋星がひとりでやってきてさ。すげぇハイペースで酒を飲んでるなと思ってたら、潰れやがった!」
「絋星が……?!」
絋星との付き合いは二年以上にもなるが、酒に強い絋星が潰れるとこなんて見たことがない。
「潰れる前にうわ言みたいに柊介の名前を呼んでたから、悪いけど電話させてもらった。お前、絋星迎えに来て、連れて帰れるか?」
なるほど。バイト中だが、酔い潰れた客を放っておくわけにもいかず引き受け人として柊介に連絡がきたのか。
絋星の身に何かあったのだろうか。具合が悪いと早く帰ったくせに酒を呷るなんてどうなってんだよ……。
「もちろん行くよ。車で行く」
実家暮らしだから、家の車を借りて向かえば20~30分で着くだろう。
「あ! 絋星が起きたみたいだ! ちょっと待ってて」
しばし待機。
「……ひとりで帰れるだとさ。ごめん、なんとかなりそうだ。急に連絡して悪かったな」
電話の向こうでやり取りがあり、なんとか解決したらしい。
それならいいが、なんか絋星が気がかりだ。
明日、大学で会えたら訊いてみよう。
次の日。
今日は急に寒い。夕方から都内でも雪がちらつくかもしれないとTVで天気予報士が熱弁をふるっていたことを思い出した。
大学の構内で、絋星の姿を見つけた。午後からの講義も一緒だし、遠慮なしに「ようっ!」と背後から絋星の肩を叩く。
「あ……。柊介……」
少しテンション低めだが、きっと疲れてるんだろう。目の下に酷いクマがある。
「昨日大丈夫だったか? 大智の店で飲み過ぎたんだろ?」
「なんで知ってんの……」
「いや普通に大智から連絡来たし」
「あいつ……なにも柊介に連絡することねぇだろ」
「なんかお前が俺のこと呼んでたって」
「ひぁ! まさか!」
絋星。お前から今まで聞いたことない変な声出てるぞ。
「だよな。そんなわけがない」
絋星が柊介を求めるなんてことはないだろう。どうせ大智が酔っ払いの相手が面倒くさくて絋星とよく一緒にいる柊介を介抱の相手に選んだだけなんだろう。
「なぁ、柊介。彼女出来て嬉しかった?」
またその話か。
「まぁ、嬉しかったよ? 俺、人から好かれたことねぇし」
想像で答えてみる。きっと一般的に彼女が出来たら嬉しいはずだ。
「そっか……。じゃあ応援しないといけないよな……」
いやそんな辛そうな顔で応援してくれなくていい。ホント変だな。まさか俺のこと下に見てたのか?!
もしかしたら柊介なんかに彼女が出来て意外過ぎてショックを受けてるのかもしれない。
「俺みたいな奴に彼女なんて、ありえねぇ話だもんな」
「そんなことねぇよ。お前、謙遜しすぎだ。自分がどれだけ魅力的か気づいてねぇの?」
「は? バカなこと言うなよ」
自分の価値がどのくらいか、さすがにわかる。柊介はいわゆる平凡だ。絋星みたいに顔が良いわけでも、金や才能があるわけでもない。
「今までお前に彼女がいなかったのが奇跡だったんだ。それなのに俺は……」
なんだよ急に落ち込むな。絋星らしくない。お前いつも堂々としてるじゃん。
「柊介。彼女がいても俺と時々は会ってくれるか……?」
「当たり前だろ」
だって柊介には嘘彼女しかいない。クリスマスの予定だって真っ白だ。
「どんな形でもいい。お前と離れたくない……」
いつもの絋星はどこ行った? 可笑しい。急に寂しがり屋かよ。なんか悩みでもあるのか?
「絋星。俺達はこれからもずっと友達だ。お前が困ってる時は俺が助けてやりたいし、反対に俺がお前を頼る時もあると思う。だから何かあるなら俺に話してくれよ」
励まそうと思って笑顔で言ったのに、絋星は押し黙ってしまった。
「友達か……。わかってはいたけど、お前に言われると……」
え……? 俺達はなんでも話せる友達だろ?
相談できないくらい、そんなにも頼りないのか。でも確かに絋星が解決できない問題を、柊介が聞いてなんとかなることなどないのだろう。
「ごめん。俺頼りないよな。絋星はいつも助けてくれるけど、俺はお前の力になんてなれないよな」
誰かに言われた言葉は悔しいが本当だ。絋星と柊介ではまるで釣り合わない。
「そんなことない。むしろ、今の俺をなんとかできるのはお前しかいないんだよ……」
「どういう意味だ?」
「なんでもない……」
絋星は逃げるように講義室のドアを開け、先に行ってしまった。
昨日から絋星の様子が変だ。なんなんだよあいつ。
「もしもし」
「柊介! 大変だ!」
大智はかなり慌てているみたいだ。
「どうしたんだよ」
「俺さ、今バイト中なんだけどさ」
バイト中に電話かけてくんなよ。大智はバーテンダーの見習いのような立場でバーでアルバイトをしている。だから夜は忙しいはずだ。
「ウチの店に絋星がひとりでやってきてさ。すげぇハイペースで酒を飲んでるなと思ってたら、潰れやがった!」
「絋星が……?!」
絋星との付き合いは二年以上にもなるが、酒に強い絋星が潰れるとこなんて見たことがない。
「潰れる前にうわ言みたいに柊介の名前を呼んでたから、悪いけど電話させてもらった。お前、絋星迎えに来て、連れて帰れるか?」
なるほど。バイト中だが、酔い潰れた客を放っておくわけにもいかず引き受け人として柊介に連絡がきたのか。
絋星の身に何かあったのだろうか。具合が悪いと早く帰ったくせに酒を呷るなんてどうなってんだよ……。
「もちろん行くよ。車で行く」
実家暮らしだから、家の車を借りて向かえば20~30分で着くだろう。
「あ! 絋星が起きたみたいだ! ちょっと待ってて」
しばし待機。
「……ひとりで帰れるだとさ。ごめん、なんとかなりそうだ。急に連絡して悪かったな」
電話の向こうでやり取りがあり、なんとか解決したらしい。
それならいいが、なんか絋星が気がかりだ。
明日、大学で会えたら訊いてみよう。
次の日。
今日は急に寒い。夕方から都内でも雪がちらつくかもしれないとTVで天気予報士が熱弁をふるっていたことを思い出した。
大学の構内で、絋星の姿を見つけた。午後からの講義も一緒だし、遠慮なしに「ようっ!」と背後から絋星の肩を叩く。
「あ……。柊介……」
少しテンション低めだが、きっと疲れてるんだろう。目の下に酷いクマがある。
「昨日大丈夫だったか? 大智の店で飲み過ぎたんだろ?」
「なんで知ってんの……」
「いや普通に大智から連絡来たし」
「あいつ……なにも柊介に連絡することねぇだろ」
「なんかお前が俺のこと呼んでたって」
「ひぁ! まさか!」
絋星。お前から今まで聞いたことない変な声出てるぞ。
「だよな。そんなわけがない」
絋星が柊介を求めるなんてことはないだろう。どうせ大智が酔っ払いの相手が面倒くさくて絋星とよく一緒にいる柊介を介抱の相手に選んだだけなんだろう。
「なぁ、柊介。彼女出来て嬉しかった?」
またその話か。
「まぁ、嬉しかったよ? 俺、人から好かれたことねぇし」
想像で答えてみる。きっと一般的に彼女が出来たら嬉しいはずだ。
「そっか……。じゃあ応援しないといけないよな……」
いやそんな辛そうな顔で応援してくれなくていい。ホント変だな。まさか俺のこと下に見てたのか?!
もしかしたら柊介なんかに彼女が出来て意外過ぎてショックを受けてるのかもしれない。
「俺みたいな奴に彼女なんて、ありえねぇ話だもんな」
「そんなことねぇよ。お前、謙遜しすぎだ。自分がどれだけ魅力的か気づいてねぇの?」
「は? バカなこと言うなよ」
自分の価値がどのくらいか、さすがにわかる。柊介はいわゆる平凡だ。絋星みたいに顔が良いわけでも、金や才能があるわけでもない。
「今までお前に彼女がいなかったのが奇跡だったんだ。それなのに俺は……」
なんだよ急に落ち込むな。絋星らしくない。お前いつも堂々としてるじゃん。
「柊介。彼女がいても俺と時々は会ってくれるか……?」
「当たり前だろ」
だって柊介には嘘彼女しかいない。クリスマスの予定だって真っ白だ。
「どんな形でもいい。お前と離れたくない……」
いつもの絋星はどこ行った? 可笑しい。急に寂しがり屋かよ。なんか悩みでもあるのか?
「絋星。俺達はこれからもずっと友達だ。お前が困ってる時は俺が助けてやりたいし、反対に俺がお前を頼る時もあると思う。だから何かあるなら俺に話してくれよ」
励まそうと思って笑顔で言ったのに、絋星は押し黙ってしまった。
「友達か……。わかってはいたけど、お前に言われると……」
え……? 俺達はなんでも話せる友達だろ?
相談できないくらい、そんなにも頼りないのか。でも確かに絋星が解決できない問題を、柊介が聞いてなんとかなることなどないのだろう。
「ごめん。俺頼りないよな。絋星はいつも助けてくれるけど、俺はお前の力になんてなれないよな」
誰かに言われた言葉は悔しいが本当だ。絋星と柊介ではまるで釣り合わない。
「そんなことない。むしろ、今の俺をなんとかできるのはお前しかいないんだよ……」
「どういう意味だ?」
「なんでもない……」
絋星は逃げるように講義室のドアを開け、先に行ってしまった。
昨日から絋星の様子が変だ。なんなんだよあいつ。
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