上 下
36 / 44

36.信じている ※

しおりを挟む
 神乃は部屋の中に戻り鍵をかけた。
 富永の様子を伺うと、眠りに落ちているみたいだ。
 そばに近寄って富永を眺めているうちに、もっと近づきたくなって、そっと富永と同じ布団の中に潜り込む。



 ——富永。ごめん。朝起きたとき、俺じゃなくて藍羅がそばにいたら、きっと富永はびっくりするよな。

 富永を驚かせることになり、申し訳ないと思うが、わけを話せば富永ならきっと理解してくれるのではないだろうか。

 神乃の思惑としては、このまま夜をここで過ごし、朝になったら藍羅と入れ替わる。
 目覚めたあと藍羅の姿を見て驚いた富永は、きっと「恋人交換なんて認めない!」と、神乃とヒロくんに会おうとするだろうから、そこで富永にネタばらしだ。

 ヒロくんは「恋人交換だなんて、人をバカにしてるのか」と藍羅を責めるに違いない。
 ヒロくんには既に藍羅の本性を暴露してあるし、藍羅が言い逃れできないよう、恋人交換の茶番劇にのってくれるように話を持ちかけてある。
 そうすれば神乃としても、『富永へ金を返す』という藍羅との約束の交換条件を満たすことができる。神乃は藍羅にできる限りの協力はした立場だ。なにを責められよう。

 女と女の交換ならまだしも、男と女の恋人交換には無理がある。そもそも身体の構造が違うのだからそれを酔っていたとはいえ、間違って抱くものか?!

 聞けばヒロくんは仕事中心の真面目な性格も相まって三十六歳独身、藍羅とは結婚を前提として付き合い始めたんだそうだ。さぞかしぶつける怒りは大きかろう。

 藍羅はヒロくんに捨てられる。
 富永も、藍羅になにを言われても藍羅を受け入れることはないはずだ。富永は責任を取らなきゃいけないことは何もしていないし、きっと藍羅よりも神乃を選んでくれると信じている。

 恋人交換なんてできもしないことを考えついた藍羅は、結局お金を返すことになり、恋人には振られ、富永には受け入れてもらえず、ただ自滅するだけだ。



 ——こんな富永を騙すような真似をして、俺は富永に嫌われたりしないかな。

 お金を取り戻したかったと理由を説明して、神乃はもともと恋人交換などはなからするつもりはなかったんだと富永に訴えれば、許してもらえるんじゃないだろうか。
 富永は「もうこんなバカなことは二度とするなよ」と言ってきっと抱き締めてくれるはず。



 ——富永。頼むから俺を嫌いにならないでくれ。

 少しだけ富永に触れてみたくなって、神乃はそっと富永に身体を寄せ、その身体に抱きついた。途端、富永に抱き締め返された。

「神乃……」

 富永が急に喋ったことに驚いて、富永を見ると、目はすわっているが開いている。
 だがいつもと全然様子が違う。いつもは紳士的な富永が、性急に神乃のズボンと下着に手をかけ、それを奪い取ろうとする。

「ちょっ……えっ……?!」

 神乃が動揺しているうちに、富永にあっという間に組み敷かれた。

「あっ……ン……」

 いきなり性器を掴まれて、弄ばれて、どうやら富永は神乃のものを無理に勃たせる気のようだ。
 抵抗しようにもすぐに抑えつけられる。富永はこんなに力が強かったのかと恐ろしくなるくらいだ。

「もっと喘げ。声出せよ」

 みっともなく鳴けと服を乱され乳首をキュッと摘まれる。それに神乃が「あぁっ……」と声を洩らすと富永は満足そうな顔をした。

「あっ、だめ、も……出るっ……っ」

 富永は容赦ない。全然手を止めてくれないから、神乃はすぐに達してしまった。
 その神乃が放ったものを富永は手で受け止めた。
 それを使って今度は神乃の後孔へ自身の屹立したものを侵入させてくる。

「えっ……」

 性急にイかされて、過敏になった神乃の中を富永は力ずくでこじ開けた。

「あっ、あっ、あっ、とみなっ……!」

 これは雄の本能だ。前戯なんてあったものじゃない。富永は自由に神乃の身体を貪っている。

「キス、キス、キスしたい」

 富永は強引に神乃の唇を奪う。そのまま熱い舌を捩じ込んできて、神乃の舌を絡めとる。

「……んっ……ンぁ……っ」

 上も下も富永に蹂躙され、神乃はすっかり身動きがとれない。
 こんな激しい富永は初めてだ。いつもはどれだけ気持ちを抑制していたのだろうと心配になるくらいの別人ぶりだ。

 なんだか急に身体が変だ。富永の雄に責められるたびに今まで感じたことのないところからオーガズムを感じる。
 やばいやばいと思っても、富永の律動は激しくなるばかりだ。

「あぁぁぁっ……!」

 ゴムの隔りもないままに、富永に中に放たれて、神乃は身体を仰け反らせる。
 富永が達すると同時に自分も中からの前立腺への刺激で達してしまったからだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。 「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」 高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。 そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに… その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。 ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。 かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで… ハッピーエンドです。 R18の場面には※をつけます。

[R18] 転生したらおちんぽ牧場の牛さんになってました♡

ねねこ
BL
転生したら牛になってて、毎日おちんぽミルクを作ってます♡

本気の心と身体の浮気。

丹砂 (あかさ)
BL
和真に拾われて一緒に暮らす亜樹は、溺愛されて誰よりも優しく扱われていた。 エッチの時の辛い意地悪や道具だって、差し出される腕や温もりの為には我慢できた。 そんな毎日の中で偶然知った和真の誕生日。 いつも与えてもらえる愛情を少しでも返したくて、その方法を考える。 でも、亜樹が持っている物は全て和真が与えてくれたものだから、自分の力で喜ばせる為に、昔馴染んだ方法の「売り」でお金を稼ぐ事にした。 ただ、喜ばせたかっただけなのに。 それが幸せな日々が壊れてしまう切っ掛けだった。 ******************* スパダリ系S彼 × 健気受け  ハピエンです。 ハッキリとR18のシーンが含まれている話数には※を付けています!苦手な方は参考にして下さい。 (だいぶ前に自サイトで公開していた作品のリメイクです) ******************* S彼/ドS/射精管理/言葉責め/連続絶頂/前立腺責め/調教/玩具/アナルビーズ/ローション浣腸(大スカは苦手なのでありません) こちらには上のような傾向やプレーがあります。 苦手な方はご注意ください。

イケメン大学生にナンパされているようですが、どうやらただのナンパ男ではないようです

市川パナ
BL
会社帰り、突然声をかけてきたイケメン大学生。断ろうにもうまくいかず……

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

女装趣味がバレてイケメン優等生のオモチャになりました

都茉莉
BL
仁科幸成15歳、趣味−−女装。 うっかり女装バレし、クラスメイト・宮下秀次に脅されて、オモチャと称され振り回される日々が始まった。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...