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24.あり得ない 〜富永side〜
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「とみー! そろそろ起きてよとみー!」
不快な声が聞こえてきて、朝からイラッとしながら富永は目を覚ました。
富永のいるベッドのそばにはadidasのスタンスミスが脱ぎ捨てられて転がっている。
ズキズキする頭を押さえつつ、富永がベッドから身体を起こす。
目の前にいたのは藍羅だった。
「なんでお前がここに……」
おいおい、朝から会いたくない奴の顔をどうして見なきゃいけないんだと富永は顔をしかめる。
「やだー、とみーったら。私にあんなことやそんなことまでしといてそれはないんじゃない?」
「は……?」
藍羅はいったい何を言っている……?
「私を抱いた責任、ちゃんと取ってよね?」
藍羅を抱いた……?
そんなことをした記憶はない。見れば自分はリラックスウェアとはいえ、きちんと服を着ている。
富永の恋人は神乃で、思い起こせば、昨夜は神乃と過ごしたのでは——?
そういえば、神乃はどこにいる……?
「私排卵日だったから、私が妊娠したらとみーの子供だよ?」
「おい! だれがお前なんか……!」
聞き捨てならなくて思わず声を張り上げたが、よく見ると藍羅はいつも神乃が着ているネイビーのスウェットを着ていた。
酔ってて富永の記憶は曖昧だ。
まさかあのとき感じた神乃の匂いや肌触りはあのスウェットのせい……?
いや、あり得ない。どんなに酔っていても、藍羅が神乃の服を着ていようとも、セックスの相手を間違えるわけがない。
「か、神乃は……? なんでお前が神乃の服を着てるんだ……?」
「これ? そこに置いてあったから、かみのんから借りたの。かみのんはヒロくんと一緒にいると思うけど」
「なんで神乃がお前の彼氏と……」
何がなんだか意味がわからない。いったい昨日の夜何が起きたんだ……?
「恋人交換だよ」
藍羅はゾッとするような笑みを浮かべた。
「かみのんと恋人を交換しようって話をしたんだよ。それでとみーとヒロくんを交換したの」
「な、何言って……! 物じゃないんだ。交換なんかできるわけないだろ?! それにそんなこと神乃がするはずがないっ!」
「じゃあかみのんに聞いてみなよ。かみのんはとみーを私にくれるって言ってたよ」
藍羅は勝ち誇ったように笑った。
「とみーは私を抱いておいて、無責任に捨てるような人じゃないよね?」
「はぁっ?!」
「私、ヒロくんなんかより、とみーがいい。ヒロくんは真面目すぎるし、なんかもう飽きちゃった。ヒロくんはかみのんにあげる。とみーは社長さんでお金持ちだし、ヒロくんよりイケメンだし、いちいち反応も可愛いしさ。私、とみーと結婚する!」
「おい! ふざけるな。そんなことあり得ないからな!」
「私、妊娠してたら下ろさないから」
「待て待て待て待て! 神乃とヒロくんと四人で話そう!」
「いいよー。かみのんとヒロくんも地味同士でいい感じだったし、とみーもかみのんに言われたら恋人交換したこと、納得するでしょ?」
藍羅のこの余裕はなんなんだ……?
神乃が藍羅との恋人交換に応じて、富永を藍羅に差し出すような真似をするとは到底思えない。
だが藍羅の態度が気になる。
藍羅の言うとおり、神乃が恋人交換に応じていたとしたら、昨夜、神乃はヒロくんと寝たのか?!
もしそうだったとしたらショック過ぎる。いや、まさか、神乃に限ってそんなことは……。
でも、もし神乃がヒロくんと付き合うことを選んだとしたら、自分はどうすればいい……?
——昨日の夜、俺は藍羅を抱いたのか……?
それで責任取るために、神乃と藍羅を交換?!
そんなこと、絶対にあり得ない!
不快な声が聞こえてきて、朝からイラッとしながら富永は目を覚ました。
富永のいるベッドのそばにはadidasのスタンスミスが脱ぎ捨てられて転がっている。
ズキズキする頭を押さえつつ、富永がベッドから身体を起こす。
目の前にいたのは藍羅だった。
「なんでお前がここに……」
おいおい、朝から会いたくない奴の顔をどうして見なきゃいけないんだと富永は顔をしかめる。
「やだー、とみーったら。私にあんなことやそんなことまでしといてそれはないんじゃない?」
「は……?」
藍羅はいったい何を言っている……?
「私を抱いた責任、ちゃんと取ってよね?」
藍羅を抱いた……?
そんなことをした記憶はない。見れば自分はリラックスウェアとはいえ、きちんと服を着ている。
富永の恋人は神乃で、思い起こせば、昨夜は神乃と過ごしたのでは——?
そういえば、神乃はどこにいる……?
「私排卵日だったから、私が妊娠したらとみーの子供だよ?」
「おい! だれがお前なんか……!」
聞き捨てならなくて思わず声を張り上げたが、よく見ると藍羅はいつも神乃が着ているネイビーのスウェットを着ていた。
酔ってて富永の記憶は曖昧だ。
まさかあのとき感じた神乃の匂いや肌触りはあのスウェットのせい……?
いや、あり得ない。どんなに酔っていても、藍羅が神乃の服を着ていようとも、セックスの相手を間違えるわけがない。
「か、神乃は……? なんでお前が神乃の服を着てるんだ……?」
「これ? そこに置いてあったから、かみのんから借りたの。かみのんはヒロくんと一緒にいると思うけど」
「なんで神乃がお前の彼氏と……」
何がなんだか意味がわからない。いったい昨日の夜何が起きたんだ……?
「恋人交換だよ」
藍羅はゾッとするような笑みを浮かべた。
「かみのんと恋人を交換しようって話をしたんだよ。それでとみーとヒロくんを交換したの」
「な、何言って……! 物じゃないんだ。交換なんかできるわけないだろ?! それにそんなこと神乃がするはずがないっ!」
「じゃあかみのんに聞いてみなよ。かみのんはとみーを私にくれるって言ってたよ」
藍羅は勝ち誇ったように笑った。
「とみーは私を抱いておいて、無責任に捨てるような人じゃないよね?」
「はぁっ?!」
「私、ヒロくんなんかより、とみーがいい。ヒロくんは真面目すぎるし、なんかもう飽きちゃった。ヒロくんはかみのんにあげる。とみーは社長さんでお金持ちだし、ヒロくんよりイケメンだし、いちいち反応も可愛いしさ。私、とみーと結婚する!」
「おい! ふざけるな。そんなことあり得ないからな!」
「私、妊娠してたら下ろさないから」
「待て待て待て待て! 神乃とヒロくんと四人で話そう!」
「いいよー。かみのんとヒロくんも地味同士でいい感じだったし、とみーもかみのんに言われたら恋人交換したこと、納得するでしょ?」
藍羅のこの余裕はなんなんだ……?
神乃が藍羅との恋人交換に応じて、富永を藍羅に差し出すような真似をするとは到底思えない。
だが藍羅の態度が気になる。
藍羅の言うとおり、神乃が恋人交換に応じていたとしたら、昨夜、神乃はヒロくんと寝たのか?!
もしそうだったとしたらショック過ぎる。いや、まさか、神乃に限ってそんなことは……。
でも、もし神乃がヒロくんと付き合うことを選んだとしたら、自分はどうすればいい……?
——昨日の夜、俺は藍羅を抱いたのか……?
それで責任取るために、神乃と藍羅を交換?!
そんなこと、絶対にあり得ない!
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