恋人にバカにされて捨てられたのでイケメン社長と仕返しして更に付き合うことになった話

雨宮里玖

文字の大きさ
上 下
24 / 44

24.あり得ない 〜富永side〜

しおりを挟む
「とみー! そろそろ起きてよとみー!」

 不快な声が聞こえてきて、朝からイラッとしながら富永は目を覚ました。
 富永のいるベッドのそばにはadidasのスタンスミスが脱ぎ捨てられて転がっている。

 ズキズキする頭を押さえつつ、富永がベッドから身体を起こす。

 目の前にいたのは藍羅だった。



「なんでお前がここに……」

 おいおい、朝から会いたくない奴の顔をどうして見なきゃいけないんだと富永は顔をしかめる。

「やだー、とみーったら。私にあんなことやそんなことまでしといてそれはないんじゃない?」
「は……?」

 藍羅はいったい何を言っている……?

「私を抱いた責任、ちゃんと取ってよね?」

 藍羅を抱いた……?
 そんなことをした記憶はない。見れば自分はリラックスウェアとはいえ、きちんと服を着ている。

 富永の恋人は神乃で、思い起こせば、昨夜は神乃と過ごしたのでは——?

 そういえば、神乃はどこにいる……?


「私排卵日だったから、私が妊娠したらとみーの子供だよ?」
「おい! だれがお前なんか……!」

 聞き捨てならなくて思わず声を張り上げたが、よく見ると藍羅はいつも神乃が着ているネイビーのスウェットを着ていた。
 酔ってて富永の記憶は曖昧だ。
 まさかあのとき感じた神乃の匂いや肌触りはあのスウェットのせい……?

 いや、あり得ない。どんなに酔っていても、藍羅が神乃の服を着ていようとも、セックスの相手を間違えるわけがない。


「か、神乃は……? なんでお前が神乃の服を着てるんだ……?」
「これ? そこに置いてあったから、かみのんから借りたの。かみのんはヒロくんと一緒にいると思うけど」
「なんで神乃がお前の彼氏と……」

 何がなんだか意味がわからない。いったい昨日の夜何が起きたんだ……?




「恋人交換だよ」

 藍羅はゾッとするような笑みを浮かべた。

「かみのんと恋人を交換しようって話をしたんだよ。それでとみーとヒロくんを交換したの」

「な、何言って……! 物じゃないんだ。交換なんかできるわけないだろ?! それにそんなこと神乃がするはずがないっ!」

「じゃあかみのんに聞いてみなよ。かみのんはとみーを私にくれるって言ってたよ」

 藍羅は勝ち誇ったように笑った。

「とみーは私を抱いておいて、無責任に捨てるような人じゃないよね?」
「はぁっ?!」
「私、ヒロくんなんかより、とみーがいい。ヒロくんは真面目すぎるし、なんかもう飽きちゃった。ヒロくんはかみのんにあげる。とみーは社長さんでお金持ちだし、ヒロくんよりイケメンだし、いちいち反応も可愛いしさ。私、とみーと結婚する!」
「おい! ふざけるな。そんなことあり得ないからな!」
「私、妊娠してたら下ろさないから」
「待て待て待て待て! 神乃とヒロくんと四人で話そう!」
「いいよー。かみのんとヒロくんも地味同士でいい感じだったし、とみーもかみのんに言われたら恋人交換したこと、納得するでしょ?」

 藍羅のこの余裕はなんなんだ……?

 神乃が藍羅との恋人交換に応じて、富永を藍羅に差し出すような真似をするとは到底思えない。
 だが藍羅の態度が気になる。

 藍羅の言うとおり、神乃が恋人交換に応じていたとしたら、昨夜、神乃はヒロくんと寝たのか?!

 もしそうだったとしたらショック過ぎる。いや、まさか、神乃に限ってそんなことは……。

 でも、もし神乃がヒロくんと付き合うことを選んだとしたら、自分はどうすればいい……?


 ——昨日の夜、俺は藍羅を抱いたのか……?
 
 それで責任取るために、神乃と藍羅を交換?!

 そんなこと、絶対にあり得ない!
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

イケメン大学生にナンパされているようですが、どうやらただのナンパ男ではないようです

市川パナ
BL
会社帰り、突然声をかけてきたイケメン大学生。断ろうにもうまくいかず……

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(10/21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。 ※4月18日、完結しました。ありがとうございました。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

処理中です...