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18.可愛い恋人 〜富永side〜
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富永side
「今日も仕事が遅くなりそうなんだ。夕食も要らない。だから富永も俺のことは気にしないでいいから」
金曜日の朝、出社する前に神乃は笑顔で言った。
「あ、ああ……わかった……」
ここのところ、神乃の帰宅時間が遅くなった。今週は毎日帰宅が二十三時をとうに過ぎている。頑張り屋の神乃は会社で社畜のように働いているのだろう。
「じゃあ、いってきます!」
玄関でひらひらと手を振る神乃は可愛い。でも少し痩せたみたいだ。朝食はきちんと食べているが、昼と夜はちゃんと食べているのだろうかと心配になる。
「富永?」
最近の神乃の異変について考えていて呆けていた。そのせいで目の前の神乃が不安気な顔で富永の顔を覗き込んできた。
「俺、いってきますって言ってるんだけど……」
神乃は富永をじっと見上げて待機している。そうだ。神乃は富永からのいってらっしゃいのキスを待っているのだ。
その事実に気がついて、富永の心の中が『あー! 神乃はやっぱ可愛い。もはや俺には神乃しかいない、こいつは俺の女神だ!』と騒がしい。
目の前の神乃の唇にいつものキスをしてやると、神乃が照れながらも満足そうな顔をして「じゃあ」と出かけていった。
その仕草を見てまた『あーやっぱ神乃は最高だ!』とやっぱり心がうるさくなった。
神乃がいなくなったあとの家はしんと静まり返っている。
昔はこれが当たり前だったのに、神乃と暮らすようになってから神乃なしの生活が考えられなくなった。
この先の人生、神乃がいなければ生きていけない。だって富永の思考はすべて神乃を中心に回っているのだから、神乃がいなければ自分がどうすればいいのかわからない。
さすがの神乃も土日は仕事は休みだ。今晩は神乃が帰ってくるまで絶対に待っていよう。神乃の様子次第では、濃厚な夜を過ごすことができるかもしれない。
夜遅く帰ってきた神乃を早速抱き締めると、神乃は富永に「疲れたぁ」と甘えてきた。
そのままバスルームに連行し、神乃の身体と髪を丁寧に洗ってやる。
神乃の頭をゴシゴシしてやると「ううん……」と気持ちよさそうな声を出すから可愛すぎて思わず抱き締めてしまった。
それから神乃を早々にベッドに誘った。
今夜はどうだろうと、とりあえず神乃の首筋にキスをして、ちょっかいを出してみたら「する……?」と上目遣いで神乃に言われて大興奮してしまった。
それから神乃と夢のような時間を過ごした。
盛り上がったあと、「明日はゆっくりできるな」と神乃に言ったら「俺は仕事なんだ」と返された。
「えっ……! 明日も仕事?!」
「うん……ごめん……どうしても……」
「神乃、そんなに無理して倒れるんじゃないのか?」
「ううん……大丈夫だよ。心配してくれてありがとう、とみな……が……」
大丈夫だと言う神乃は既にウトウトしている。
疲れて眠いし、明日も仕事だとわかっていながら富永とのセックスに応じてくれたのかと思うと神乃をとても愛おしく思った。
——はぁ、もうこんなの一生大事にするわ。
すうすうと寝息を立てる神乃の寝顔を眺めながら富永は改めて心に誓った。
「今日も仕事が遅くなりそうなんだ。夕食も要らない。だから富永も俺のことは気にしないでいいから」
金曜日の朝、出社する前に神乃は笑顔で言った。
「あ、ああ……わかった……」
ここのところ、神乃の帰宅時間が遅くなった。今週は毎日帰宅が二十三時をとうに過ぎている。頑張り屋の神乃は会社で社畜のように働いているのだろう。
「じゃあ、いってきます!」
玄関でひらひらと手を振る神乃は可愛い。でも少し痩せたみたいだ。朝食はきちんと食べているが、昼と夜はちゃんと食べているのだろうかと心配になる。
「富永?」
最近の神乃の異変について考えていて呆けていた。そのせいで目の前の神乃が不安気な顔で富永の顔を覗き込んできた。
「俺、いってきますって言ってるんだけど……」
神乃は富永をじっと見上げて待機している。そうだ。神乃は富永からのいってらっしゃいのキスを待っているのだ。
その事実に気がついて、富永の心の中が『あー! 神乃はやっぱ可愛い。もはや俺には神乃しかいない、こいつは俺の女神だ!』と騒がしい。
目の前の神乃の唇にいつものキスをしてやると、神乃が照れながらも満足そうな顔をして「じゃあ」と出かけていった。
その仕草を見てまた『あーやっぱ神乃は最高だ!』とやっぱり心がうるさくなった。
神乃がいなくなったあとの家はしんと静まり返っている。
昔はこれが当たり前だったのに、神乃と暮らすようになってから神乃なしの生活が考えられなくなった。
この先の人生、神乃がいなければ生きていけない。だって富永の思考はすべて神乃を中心に回っているのだから、神乃がいなければ自分がどうすればいいのかわからない。
さすがの神乃も土日は仕事は休みだ。今晩は神乃が帰ってくるまで絶対に待っていよう。神乃の様子次第では、濃厚な夜を過ごすことができるかもしれない。
夜遅く帰ってきた神乃を早速抱き締めると、神乃は富永に「疲れたぁ」と甘えてきた。
そのままバスルームに連行し、神乃の身体と髪を丁寧に洗ってやる。
神乃の頭をゴシゴシしてやると「ううん……」と気持ちよさそうな声を出すから可愛すぎて思わず抱き締めてしまった。
それから神乃を早々にベッドに誘った。
今夜はどうだろうと、とりあえず神乃の首筋にキスをして、ちょっかいを出してみたら「する……?」と上目遣いで神乃に言われて大興奮してしまった。
それから神乃と夢のような時間を過ごした。
盛り上がったあと、「明日はゆっくりできるな」と神乃に言ったら「俺は仕事なんだ」と返された。
「えっ……! 明日も仕事?!」
「うん……ごめん……どうしても……」
「神乃、そんなに無理して倒れるんじゃないのか?」
「ううん……大丈夫だよ。心配してくれてありがとう、とみな……が……」
大丈夫だと言う神乃は既にウトウトしている。
疲れて眠いし、明日も仕事だとわかっていながら富永とのセックスに応じてくれたのかと思うと神乃をとても愛おしく思った。
——はぁ、もうこんなの一生大事にするわ。
すうすうと寝息を立てる神乃の寝顔を眺めながら富永は改めて心に誓った。
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