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15.愛撫 ※

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 富永に抱かれる——。

 まさかそんな日が来るなんて。

 富永は神乃の初恋の相手だった。神乃が望んでも神乃は男で、同じく男の富永との恋は実らないと密かに諦めた学生の頃の初恋。

 そのはずだったのに、社会人になり、富永からまさかの告白を受けた。そのときは仁井の存在があったから、受け入れることができずに諦めた。

 一度ならず、二度も諦めた。そして三度目も、振った相手に今さら好きになってもらえるわけがないと諦めようとしていたのに。




「とっ、富永っ! 待って、俺、なんの準備してないしっ」

 富永に横抱きにされたまま、神乃は足をバタつかせて訴える。

 神乃は男だ。いきなりの挿入は痛みを伴うことを仁井との生活で何度も味わっている。仁井はいくら神乃が待って欲しいと訴えても聞き入れてくれなかった。仁井の好きなように乱暴に抱かれて神乃は怪我をした。
 それ以来神乃は自分の身を守るためにできるだけ事前に準備をするようにしていた。


「準備? じゃあ一緒にシャワーを浴びようか」
「いやっ、俺ひとりで準備してくるから……」
「俺がいるのに?」
「だって、汚いし、面倒だろ……?」

 全部仁井に言われた言葉だ。たしかに綺麗じゃないし、前戯なんて突っ込む側の人間にとってはつまらないものだろう。

「そんなことあるわけないだろ? 全部俺にやらせろ」

 バスルームに着き、富永の腕から下ろされた。今度は富永にスーツとシャツのボタンをひとつひとつ丁寧に外されていく。神乃が自分でやろうとしても「俺がやると言っただろ」と拒否された。

 カチャカチャとベルトの金具が外された。やがてスラックスも下着もすべてするりと下げられ剥ぎ取られていく。
 富永の前で全裸になるのは初めてで、すごく恥ずかしい。



「神乃は綺麗だ」

 その身体を富永に抱き締められる。

「好きだよ、神乃」

 富永は神乃の額に慈しむようなキスを落としてきた。




「んっ……はぁ……っ……んぅ……!」

 神乃はいい加減恥ずかしくなってきた。
 富永に隅々まで身体を洗われた。今は後ろから富永に抱かれるような姿勢で秘部に指を突っ込まれ、入り口をクチュクチュと解され、中を掻き回されている。

「富永、も……やばいかも……」

 すごく身体が熱っている。セックスの事前準備のはずが、まさかここで達するわけにはいかない。そろそろ限界だと神乃は富永に訴える。

「もう少しだけ……」

 富永の舌が神乃の身体を這う。背中や首筋、うなじに、脇まで舐め尽くされたあと、今は手を取られ、神乃の耳元近くで五本の指を順番にしゃぶられている。
 あまりにも丁寧に身体を舐められるから、富永に食べられているような気持ちになる。

「神乃の手、大好きだ」

 そんなことを言われて羞恥の限界だ。そんな大事にされるほどの人間じゃないのにと思う。

 だって富永も裸だから触れ合うとわかる。富永のそれもすっかり張り詰めており、富永だってもう限界なんじゃないのかと思うが、それでも神乃の身体を愛撫し続けている。
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