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二月・三月 親衛隊は承認していれば『推し』に選ばれたとき通知がくるルール
エンディング⑨.3
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「玄野、てめぇっ!」
誰の声かと思うくらいの白石の乱暴な声だった。白石は玄野の膝から吉良を引きずり下ろして、玄野の胸ぐらを思い切り掴んだ。
「何の真似だよ! さっき言ったろっ? 吉良には手を出すなって! なのに、それなのになんてことすんだよ!」
白石は玄野を鋭い目で睨む。温厚なイメージの白石に、こんな激情的な面があることを初めて知った。
「白石もやれば? 羨ましいならやれよ、俺とシェアしようぜ?」
「できるか! 吉良は誰にも渡せない! いくらお前が親友でも吉良だけは触らせたくない!」
白石は吉良を庇うようにして腕を伸ばす。
——白石って、すげぇ男らしいじゃん。
その力強さにドキッとした。俗に言うギャップ萌えだ。何をされても怒らないような奴が、吉良のために声を荒げて、玄野に向かっていく。その姿にたまらなく惹かれる。
しかも、今の白石の発言は——。
「なんだよ、さっきは選ばれないくらいならシェアしていいって言ったくせに、強がりかよ。目の前で吉良が俺にやられたら耐えられなかった? キスでこれなら、俺と吉良がヤったらお前、気が狂うんじゃねぇの?」
玄野は怖いもの知らずにも程がある。こんなにキレてる白石をさらに煽るようなことを言っている。
これはさすがにやばいのではないかと、吉良も立ち上がった。
「その言葉、そっくりそのまま玄野に返してやるよ」
白石は立ち上がったばかりの吉良の腰を抱き寄せ、後頭部を抑えつけ、吉良の唇を奪った。
玄野に見せつけるような、白石からのキス。しかも触れるだけだった玄野のキスとは違う、長い、吉良を求めるような熱いキスだ。
まさかの展開に、吉良の思考が追いつかない。玄野と白石から争うようにキスをされるなんて。
「おー、おー、やっと優等生の化けの皮が剥がれたな? やってくれんじゃん」
玄野が立ち上がり、吉良の腕を引っ張ろうとしたら、その手を白石が素早く振り払った。
「ダメだ。お前のムカつく態度でよくわかった。俺は他の誰にも譲れない」
白石がもう一度キスをしようと迫ってくるから、吉良は「待って待って待って!」と必死で止める。
「何? 吉良。俺は退学でも何でも構わない。三年間、ずっと我慢してきたんだ。これ以上耐えられない……胸が苦しくて、痛くてたまらないんだ」
「わかった、わかったから、これ」
吉良は制服のポケットからスマホを取り出して、親衛隊のページを開く。
「これしたら、多分、白石は退学にならない、かも……」
さっき通知が来たのだ。そのときに吉良は気がついた。うやむやだった自分の気持ちに。
「えぇっ!?」
吉良の親衛隊サイトを覗き込んで、白石がめちゃくちゃ驚いている。白石は実は、学校では優等生ぶっているだけで、面白い奴なのかもしれない。だから、玄野とも気が合っていたのだろうか。
「承認、していい……?」
チラッと白石を見上げると、白石が右手で顔を覆って照れている。
「マジかよ……マジかよ吉良、あれだけの男を蹴散らして、白石を……」
玄野も信じられない様子だ。でもそれも無理はないと思う。当の吉良が、今日の今日まで自分の気持ちに気がついていなかったのだから。
吉良が承認ボタンをタップすると、白石と吉良のスマホが同時に振動した。
「吉良……! 吉良っ!」
白石は吉良の名前を呼ぶばかり。せっかくのイケメンが台無しになるくらい、口元のニヤけが止まらないみたいだ。
「好きだっ、好きだ吉良っ!」
「ゔっ……!」
いきなり白石に抱きしめられて、吉良はおののく。
ここはオープンなスペースだ。ドリンクスタンドのお客さんや、テラスを散歩している人たちだっているのに、そんなデカい声で……。
「ああ、ずっと、ずっと言いたかった!」
「おいこら、白石——」
吉良が制しても、白石は止まらない。
「大好きだよ。吉良。俺を選んでくれてありがとう。俺、吉良のこと好きだって全世界に、 叫びたいよっ」
「だから、声がデカいって……!」
ほらもう、クスクス笑われてる。恥ずかしくて吉良は赤面する。
「照れてるの? 吉良可愛いなぁ♡」
「違うわ!」
やばいぞ。やばい。紳士的に見えた優等生白石は、実は猫を被ってただけなのかもしれない。
「やっと白石らしくなったな」
玄野。余裕の笑み。
「吉良。さぁ、これから行けるところまで行こうか!」
「えっ? はぁっ?」
白石に連行される吉良を玄野は見守っているだけだ。
「玄野、俺どうなんの……っ?」
「大丈夫、大丈夫。俺は察していなくなるから。初めてだろ? 頑張れよ、吉良」
「えっ……!」
何を頑張るんだよ、玄野……っ!
——エンディング⑨ 白石Ver. 完。
誰の声かと思うくらいの白石の乱暴な声だった。白石は玄野の膝から吉良を引きずり下ろして、玄野の胸ぐらを思い切り掴んだ。
「何の真似だよ! さっき言ったろっ? 吉良には手を出すなって! なのに、それなのになんてことすんだよ!」
白石は玄野を鋭い目で睨む。温厚なイメージの白石に、こんな激情的な面があることを初めて知った。
「白石もやれば? 羨ましいならやれよ、俺とシェアしようぜ?」
「できるか! 吉良は誰にも渡せない! いくらお前が親友でも吉良だけは触らせたくない!」
白石は吉良を庇うようにして腕を伸ばす。
——白石って、すげぇ男らしいじゃん。
その力強さにドキッとした。俗に言うギャップ萌えだ。何をされても怒らないような奴が、吉良のために声を荒げて、玄野に向かっていく。その姿にたまらなく惹かれる。
しかも、今の白石の発言は——。
「なんだよ、さっきは選ばれないくらいならシェアしていいって言ったくせに、強がりかよ。目の前で吉良が俺にやられたら耐えられなかった? キスでこれなら、俺と吉良がヤったらお前、気が狂うんじゃねぇの?」
玄野は怖いもの知らずにも程がある。こんなにキレてる白石をさらに煽るようなことを言っている。
これはさすがにやばいのではないかと、吉良も立ち上がった。
「その言葉、そっくりそのまま玄野に返してやるよ」
白石は立ち上がったばかりの吉良の腰を抱き寄せ、後頭部を抑えつけ、吉良の唇を奪った。
玄野に見せつけるような、白石からのキス。しかも触れるだけだった玄野のキスとは違う、長い、吉良を求めるような熱いキスだ。
まさかの展開に、吉良の思考が追いつかない。玄野と白石から争うようにキスをされるなんて。
「おー、おー、やっと優等生の化けの皮が剥がれたな? やってくれんじゃん」
玄野が立ち上がり、吉良の腕を引っ張ろうとしたら、その手を白石が素早く振り払った。
「ダメだ。お前のムカつく態度でよくわかった。俺は他の誰にも譲れない」
白石がもう一度キスをしようと迫ってくるから、吉良は「待って待って待って!」と必死で止める。
「何? 吉良。俺は退学でも何でも構わない。三年間、ずっと我慢してきたんだ。これ以上耐えられない……胸が苦しくて、痛くてたまらないんだ」
「わかった、わかったから、これ」
吉良は制服のポケットからスマホを取り出して、親衛隊のページを開く。
「これしたら、多分、白石は退学にならない、かも……」
さっき通知が来たのだ。そのときに吉良は気がついた。うやむやだった自分の気持ちに。
「えぇっ!?」
吉良の親衛隊サイトを覗き込んで、白石がめちゃくちゃ驚いている。白石は実は、学校では優等生ぶっているだけで、面白い奴なのかもしれない。だから、玄野とも気が合っていたのだろうか。
「承認、していい……?」
チラッと白石を見上げると、白石が右手で顔を覆って照れている。
「マジかよ……マジかよ吉良、あれだけの男を蹴散らして、白石を……」
玄野も信じられない様子だ。でもそれも無理はないと思う。当の吉良が、今日の今日まで自分の気持ちに気がついていなかったのだから。
吉良が承認ボタンをタップすると、白石と吉良のスマホが同時に振動した。
「吉良……! 吉良っ!」
白石は吉良の名前を呼ぶばかり。せっかくのイケメンが台無しになるくらい、口元のニヤけが止まらないみたいだ。
「好きだっ、好きだ吉良っ!」
「ゔっ……!」
いきなり白石に抱きしめられて、吉良はおののく。
ここはオープンなスペースだ。ドリンクスタンドのお客さんや、テラスを散歩している人たちだっているのに、そんなデカい声で……。
「ああ、ずっと、ずっと言いたかった!」
「おいこら、白石——」
吉良が制しても、白石は止まらない。
「大好きだよ。吉良。俺を選んでくれてありがとう。俺、吉良のこと好きだって全世界に、 叫びたいよっ」
「だから、声がデカいって……!」
ほらもう、クスクス笑われてる。恥ずかしくて吉良は赤面する。
「照れてるの? 吉良可愛いなぁ♡」
「違うわ!」
やばいぞ。やばい。紳士的に見えた優等生白石は、実は猫を被ってただけなのかもしれない。
「やっと白石らしくなったな」
玄野。余裕の笑み。
「吉良。さぁ、これから行けるところまで行こうか!」
「えっ? はぁっ?」
白石に連行される吉良を玄野は見守っているだけだ。
「玄野、俺どうなんの……っ?」
「大丈夫、大丈夫。俺は察していなくなるから。初めてだろ? 頑張れよ、吉良」
「えっ……!」
何を頑張るんだよ、玄野……っ!
——エンディング⑨ 白石Ver. 完。
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白石は委員長だから、表の顔と裏の顔があるのかなと思いました😅
続き……どうだろう……。
この作品めちゃくちゃふざけてるのに、時々すごく熱い感想をくださる方々がいらっしゃってそれを原動力に続いております☺️
リクエストあったら。
ホントこの高校には、吉良が足りない現象が起きております……。
9人目の攻めのエンディングです!
3Pなのか、そうでないのか!
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