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二月・三月 親衛隊は承認していれば『推し』に選ばれたとき通知がくるルール

エンディング⑦ 3.

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 なんかだんだん話が見えてきた。
 これはきっと隠岐にハメられたのではないか。
 隠岐は自分の卒業パーティーだと嘘をついて吉良を呼び出した。
 もしかしたら安居院からのメールを遠隔操作で削除したのも隠岐かもしれない。
 安居院の真意を知ったら、このパーティーが安居院の婚約発表会だと知ったら、吉良が気が引けて参加しなくなるとでも考えたのかもしれない。

「俺、婚約候補の三人に会ったんだ」

 そうだ。安居院には決められた家柄の候補者が三人いたはずだ。

「三人には、『どうしても忘れられない人がいるから、結婚できない』ってちゃんと会って説明したかったんだ。そのために三人に会うことを決めた」
「そう、だったのか……」

 てっきり安居院が結婚を覚悟したから候補者に会うことにしたのだとばかり思っていた。

「だって俺に気持ちがないって知っても、吉良のことを諦められなかったんだ。こんな中途半端な気持ちで別の誰かと結婚なんてできるはずがない」
「今、なんて……」

 誰が、誰のことを諦められなかったって?

「そんな俺が、吉良の気持ちを知ったら離すわけがない。吉良。大好きだ。今すぐ俺と結婚しよう」
「待っ……」

 紆余曲折あったが、両想いになれたのはいい。なれたまではいいが安居院には安居院グループの未来を背負って立つという壮大かつ重要な役割があるはずだ。男の吉良では、安居院の嫁は絶対に絶対に務まらない!

「吉良くん。息子を頼んだぞ」
「はいいっ?」

 安居院父、話を全部まるっと聞いていたのか。

「安居院雅樹まさきの母、恵子です。これからは私のことを本当の母親だと思って接してね」
「んんんっ?」

 安居院母は、吉良が男だということをきちんと認識しているのだろうか。どっからどうみてもDK! そこんところダイジョブですかー?

「吉良。そろそろ婚約発表会が始まる。俺と腕を組んで入場するのと、手を繋いでいくのとどっちがいい?」
「あのさ、そんなことよりももっと話し合うべき大事な問題、他にもたくさんあるんじゃないかなっ?」
「え? カメラアングルか? 大丈夫だ、吉良はどこから映されても可愛いから」
「さすが俺の息子だ。こんないい子を見つけてくるとは人を見る目がある」
「吉良くん、卒業したら是非うちで暮らしてね。部屋はたくさん余っているから好きなだけ使って」

 やばいぞ、この家族。常識が通じない!

「決めた。これで行こう!」

 安居院は、さっきみたいに吉良をお姫様抱っこする。

「えっ? おい! 俺ホントに安居院の嫁になんのっ?」

 慌てた吉良が安居院に抱かれながらジタバタしても、安居院はびくともしない。

「吉良が来なかったら、俺はひとりで出て行って、婚約発表延期を告げるところだった。でも吉良が来てくれた。俺は吉良と結婚できるなんて最高に幸せだ」

 安居院は迷いなく会場へと続くドアに向かっていく。あんな大勢の前で嫁発表されたらどうなる⁉︎
 高校卒業と同時に安居院と婚約発表⁉︎

「離せっ、ちょっとだけでいい、ちょっとだけでいいから俺に考える時間をくれっ。俺さ、安居院のこと好きだよ? 好きだけど、モノゴトには順序ってのがあるじゃん?」
「吉良が俺のこと好きって……好きって言ってくれた……」

 待てよ、安居院。冷静に聞いてくれ。そっちに感動して気を取られないでほしい。

「俺も好きだよ、吉良」
「んんっ……!」

 安居院にいろいろ訴えたかったのに、吉良の唇が、安居院の唇で塞がれ、話すことができない。

「ふたりで幸せな家庭を作ろうな」
「だから俺は……ングッ……!」

 安居院からの熱烈なキスをされ、吉良は抵抗できない。

 そんなふたりの様子を安居院父と安居院母は「微笑ましいな」「若いわね」とあたたか~く見守っている。

 ——これ、俺の人生ルート一択しかねぇじゃん……。


 ——エンディング⑦    安居院Ver. 完。
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