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二月・三月 親衛隊は承認していれば『推し』に選ばれたとき通知がくるルール
エンディング⑤ 3.
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上杉とふたりで日が暮れた道を寮へと向かって歩いていく。日が落ちると急に肌寒くなってきた。今日は晴れているからと薄手のジャケットで出かけてしまったことを今さらになって後悔する。
「吉良先輩、寒いですか?」
上杉は自分が着ていたダウンジャケットを脱いで吉良の肩にふわっとかける。
「上杉、いいよ大丈夫。寒くないから」
ダウンジャケットを脱いでしまったら上杉はロンTだけだ。一月の夜にそれではさすがに寒いだろう。
「俺は寒くないです。吉良先輩にできることは何でもしたいんです。どうか着てください」
パーカーブルゾンの上から、上杉のダウンジャケットを着させられる。
「ほらやっぱり可愛い、先輩。よく似合ってます。これで少しはあったかくなりますか?」
「ま、まぁ……」
正直すごく温かい。上杉の温もりが残っていて、とても心地よい。
「よかった」
上杉はホッとしたように微笑み、さり気なく吉良の手を握ってきた。
「こんなに冷えてたんですね」
上杉は吉良の手を指でさすり、ぎゅっと握り、熱を伝えてくる。
「寒いときはすぐに教えてください。俺、先輩のことあっためにいきますから」
手を離そうにも、上杉にしっかり握られ逃れられない。
それに、上杉の手は優しくて、あったかくて、心地いい。
歩きながら、隣を歩く上杉をそっと見上げてみる。
あたりはすっかり暗く、夜の街灯に照らされるだけ。
上杉の精悍な横顔。吉良を引っ張っていくような力強い手。上杉のことを頼もしいと思った。
吉良が寄りかかっても、上杉ならびくともしないだろう。
「先輩、疲れちゃいましたか? 俺、寮までおぶっていきましょうか?」
「えっ? こ、子供扱いするなよ!」
「子供扱いじゃないです。恋人扱いですよ」
「は……」
「先輩のこと子供だって思ってたら、ご褒美にキスなんて求めません。俺は先輩に、性的な意味で憧れていますから」
「上杉、お前、先輩をからかうなよ」
「からかってません。俺は先輩の隣にいて、こうして先輩の身体に触れている。それだけでさっきからかなり興奮してますよ。送りオオカミになりそうですが、欲望を理性で必死に抑えています。その理由は先輩に嫌われたくないからです」
全然わからなかった。上杉はどこかそういうこととは無縁の、爽やか真面目男子だと思っていた。
「先輩こそ俺のこと、子供扱いしてますよね?」
上杉はジト目で吉良を振り返った。
「俺なりに先輩に精一杯アピールしているつもりですが、先輩はいつも俺のこと、まともに見てくれません。俺が告白できないのをいいことに、俺の気持ちを年下の戯言だって聞き流してる。俺はいつだって先輩に本気なのに」
上杉の足が止まった。上杉は急に向きを変え、吉良に迫ってくる。
「おいっ! 上杉止まれ!」
「止まれません」
抵抗する間もなく、上杉に建物の陰に追い詰められる。
両手首をブロック屏に縫いつけられるように抑え込まれ、足の間にも上杉の右膝が割って入ってきた。
「先輩。口開けて」
上杉は吉良の両手首を吉良の頭の上にして、片手だけで手首をまとめて抑えつけてきた。もう一方の手は吉良の唇に触れ、人差し指で無理矢理口をこじ開けてくる。
「ふ……ぅあっ……!」
上杉の力が強すぎて、抵抗できない。
上杉の目の色が違う。さっきまでの上杉とはまるで別人だ。
まさか上杉はゾーンに入ってるのか。
「ん……っ!」
指で強引にこじ開けられた唇に、上杉がキスを重ねてきた。
口内を乱される、深いキスだ。
上杉に貪るようにキスをされ、吉良は息も絶え絶えになる。
長いキスのあと、ぷは、とやっと解放された頃には吉良は苦しくてすっかり涙目だ。
「俺だって男です。エロいことだって当然考えますよ。吉良先輩のことを考えて、何度抜いたか。それなのに先輩は俺を完全にみくびってる。そんな無防備でいたら、俺、あっという間に先輩のこと食べちゃいますよ」
「へっ……?」
上杉はいつものワンコじゃない。完全に野獣モードだ。
「キスだけじゃない。もっと大人のやること、先輩にしていいですか?」
「な、何を……!」
こんなに強引に迫られて、激しいキスもされ、吉良の心臓がうるさく高鳴り、どうにかなりそうだ。
そのとき、上杉が吉良のスマホを奪い取り、吉良にスマホの画面を見せて顔認証でロックを解除する。
「上杉っ、人のスマホで何やってんだ?!」
当たり前のように上杉は吉良のスマホを操作している。吉良は阻止しようとするが、あっさり上杉にかわされた。
「親衛隊サイトから通知、きてますよ」
「通知?!」
上杉は吉良の許可なしに、勝手に人の親衛隊サイトまで操作する。親衛隊サイトには上杉に最も見られたくない画面が表示されていた。
『あなたは上杉一成さんの親衛隊に加入しました』
「吉良先輩。いつから俺に惚れてました?」
「い、いや何かの間違いじゃないのか……な……」
上杉に問い詰められても吉良には返す言葉がない。
「これ。承認しますね」
「えっ! おいっ、それは……!」
まさか年下を好きになんてならないと、承認ボタンだけは押さずにいたのに。
吉良かスマホを取り返そうとするが、またしても見事なディフェンスで上杉にかわされ、承認ボタンを押されてしまった。
「上杉、何してんだよ! 勝手に!」
人の親衛隊サイトをいじるなんてあり得ない。完全にルール違反だ。しかも勝手に承認ボタンを押すなんて……。
「吉良先輩。俺から逃げようとしても無駄ですよ。俺は絶対に先輩のこと振り向かせますから」
「え……」
「俺、今、試合の前よりも興奮してます。だってやっと先輩に堂々と告白できるんですから」
上杉は顔が良すぎる。ただでさえイケメンなのに、こんな奴に告白されたら——。
「好きです、先輩。俺、先輩のことずっと好きでした」
やけにドキドキする。
吉良としては、先輩として常に上杉に余裕を持って接したいと思っているのに。
「先輩も俺のこと好きなんですよね? だって俺の親衛隊に加入してくれてるんですから」
「そ、それは……」
親衛隊のシステムが憎らしい。気持ちを隠したいのに、本音をはっきりと文字にして通知してくるなんて。
「先輩。俺と付き合ってください。俺の生涯ただひとりの恋人になってください」
「お、お前はまだ十六歳だろ? 仮に付き合ったとしてもすぐに別れるかもしれないよな?」
「いいえ。別れません。先輩からも別れを言わせません。俺が必ず先輩を幸せにして、楽しくして、大切にして、別れたくないと思わせてみせますから」
どこからそんなに強い自信と想いが溢れ出てくるのだろう。
「先輩、さっさと俺に絆されてください。俺、先輩ときちんと恋人同士になってからセックスしたい。でも、先輩がずっと逃げ腰だと俺、我慢できなくなりそうです」
上杉は自身の下半身を吉良に擦り付けてきた。
上杉は完全に発情期を迎えているらしい。
平凡な吉良でも、上杉が興奮してくれている。その事実を嬉しいと思ってしまったのはなぜだろう。
「生徒会室。行きませんか?」
「えっ? 今から?!」
「そうです。俺、忘れ物したんで、吉良先輩、俺についてきてください」
「せ、生徒会室に忘れ物を取りに行くだけか……?」
「はい。夜の学校、暗くて怖いので先輩についてきてもらいたいです」
上杉は完全に嘘をついている。目を見ればわかる。まさか上杉は初めてを生徒会室で……。
「先輩も興奮してますね。ほら、ここ、ズボンが苦しそうです。先輩って実はこういうこと好きですか?」
「上杉っ!」
恥ずかしいからそういうことを言わないで欲しい。吉良だって男だ。さっきからキスされたり、ドキドキさせられたりしたら、耐えられるわけがない。
「それとも今すぐここでしますか? 俺はどこでも構わないです」
「ここで?!」
ここは道端で、ちょっと奥まったところに隠れているだけだ。間違っても発情していい場所じゃない。
「とりあえず、もう一度キス、させてもらってもいいですか?」
「えっ? ダメだって……あっ……」
この大型ワンコを躾ける方法をなんとかして見つけ出さなくては。
「先輩。大好きですっ!」
年下だけは好きにならないと思っていたのに!
——エンディング⑤ 上杉Ver. 完。
「吉良先輩、寒いですか?」
上杉は自分が着ていたダウンジャケットを脱いで吉良の肩にふわっとかける。
「上杉、いいよ大丈夫。寒くないから」
ダウンジャケットを脱いでしまったら上杉はロンTだけだ。一月の夜にそれではさすがに寒いだろう。
「俺は寒くないです。吉良先輩にできることは何でもしたいんです。どうか着てください」
パーカーブルゾンの上から、上杉のダウンジャケットを着させられる。
「ほらやっぱり可愛い、先輩。よく似合ってます。これで少しはあったかくなりますか?」
「ま、まぁ……」
正直すごく温かい。上杉の温もりが残っていて、とても心地よい。
「よかった」
上杉はホッとしたように微笑み、さり気なく吉良の手を握ってきた。
「こんなに冷えてたんですね」
上杉は吉良の手を指でさすり、ぎゅっと握り、熱を伝えてくる。
「寒いときはすぐに教えてください。俺、先輩のことあっためにいきますから」
手を離そうにも、上杉にしっかり握られ逃れられない。
それに、上杉の手は優しくて、あったかくて、心地いい。
歩きながら、隣を歩く上杉をそっと見上げてみる。
あたりはすっかり暗く、夜の街灯に照らされるだけ。
上杉の精悍な横顔。吉良を引っ張っていくような力強い手。上杉のことを頼もしいと思った。
吉良が寄りかかっても、上杉ならびくともしないだろう。
「先輩、疲れちゃいましたか? 俺、寮までおぶっていきましょうか?」
「えっ? こ、子供扱いするなよ!」
「子供扱いじゃないです。恋人扱いですよ」
「は……」
「先輩のこと子供だって思ってたら、ご褒美にキスなんて求めません。俺は先輩に、性的な意味で憧れていますから」
「上杉、お前、先輩をからかうなよ」
「からかってません。俺は先輩の隣にいて、こうして先輩の身体に触れている。それだけでさっきからかなり興奮してますよ。送りオオカミになりそうですが、欲望を理性で必死に抑えています。その理由は先輩に嫌われたくないからです」
全然わからなかった。上杉はどこかそういうこととは無縁の、爽やか真面目男子だと思っていた。
「先輩こそ俺のこと、子供扱いしてますよね?」
上杉はジト目で吉良を振り返った。
「俺なりに先輩に精一杯アピールしているつもりですが、先輩はいつも俺のこと、まともに見てくれません。俺が告白できないのをいいことに、俺の気持ちを年下の戯言だって聞き流してる。俺はいつだって先輩に本気なのに」
上杉の足が止まった。上杉は急に向きを変え、吉良に迫ってくる。
「おいっ! 上杉止まれ!」
「止まれません」
抵抗する間もなく、上杉に建物の陰に追い詰められる。
両手首をブロック屏に縫いつけられるように抑え込まれ、足の間にも上杉の右膝が割って入ってきた。
「先輩。口開けて」
上杉は吉良の両手首を吉良の頭の上にして、片手だけで手首をまとめて抑えつけてきた。もう一方の手は吉良の唇に触れ、人差し指で無理矢理口をこじ開けてくる。
「ふ……ぅあっ……!」
上杉の力が強すぎて、抵抗できない。
上杉の目の色が違う。さっきまでの上杉とはまるで別人だ。
まさか上杉はゾーンに入ってるのか。
「ん……っ!」
指で強引にこじ開けられた唇に、上杉がキスを重ねてきた。
口内を乱される、深いキスだ。
上杉に貪るようにキスをされ、吉良は息も絶え絶えになる。
長いキスのあと、ぷは、とやっと解放された頃には吉良は苦しくてすっかり涙目だ。
「俺だって男です。エロいことだって当然考えますよ。吉良先輩のことを考えて、何度抜いたか。それなのに先輩は俺を完全にみくびってる。そんな無防備でいたら、俺、あっという間に先輩のこと食べちゃいますよ」
「へっ……?」
上杉はいつものワンコじゃない。完全に野獣モードだ。
「キスだけじゃない。もっと大人のやること、先輩にしていいですか?」
「な、何を……!」
こんなに強引に迫られて、激しいキスもされ、吉良の心臓がうるさく高鳴り、どうにかなりそうだ。
そのとき、上杉が吉良のスマホを奪い取り、吉良にスマホの画面を見せて顔認証でロックを解除する。
「上杉っ、人のスマホで何やってんだ?!」
当たり前のように上杉は吉良のスマホを操作している。吉良は阻止しようとするが、あっさり上杉にかわされた。
「親衛隊サイトから通知、きてますよ」
「通知?!」
上杉は吉良の許可なしに、勝手に人の親衛隊サイトまで操作する。親衛隊サイトには上杉に最も見られたくない画面が表示されていた。
『あなたは上杉一成さんの親衛隊に加入しました』
「吉良先輩。いつから俺に惚れてました?」
「い、いや何かの間違いじゃないのか……な……」
上杉に問い詰められても吉良には返す言葉がない。
「これ。承認しますね」
「えっ! おいっ、それは……!」
まさか年下を好きになんてならないと、承認ボタンだけは押さずにいたのに。
吉良かスマホを取り返そうとするが、またしても見事なディフェンスで上杉にかわされ、承認ボタンを押されてしまった。
「上杉、何してんだよ! 勝手に!」
人の親衛隊サイトをいじるなんてあり得ない。完全にルール違反だ。しかも勝手に承認ボタンを押すなんて……。
「吉良先輩。俺から逃げようとしても無駄ですよ。俺は絶対に先輩のこと振り向かせますから」
「え……」
「俺、今、試合の前よりも興奮してます。だってやっと先輩に堂々と告白できるんですから」
上杉は顔が良すぎる。ただでさえイケメンなのに、こんな奴に告白されたら——。
「好きです、先輩。俺、先輩のことずっと好きでした」
やけにドキドキする。
吉良としては、先輩として常に上杉に余裕を持って接したいと思っているのに。
「先輩も俺のこと好きなんですよね? だって俺の親衛隊に加入してくれてるんですから」
「そ、それは……」
親衛隊のシステムが憎らしい。気持ちを隠したいのに、本音をはっきりと文字にして通知してくるなんて。
「先輩。俺と付き合ってください。俺の生涯ただひとりの恋人になってください」
「お、お前はまだ十六歳だろ? 仮に付き合ったとしてもすぐに別れるかもしれないよな?」
「いいえ。別れません。先輩からも別れを言わせません。俺が必ず先輩を幸せにして、楽しくして、大切にして、別れたくないと思わせてみせますから」
どこからそんなに強い自信と想いが溢れ出てくるのだろう。
「先輩、さっさと俺に絆されてください。俺、先輩ときちんと恋人同士になってからセックスしたい。でも、先輩がずっと逃げ腰だと俺、我慢できなくなりそうです」
上杉は自身の下半身を吉良に擦り付けてきた。
上杉は完全に発情期を迎えているらしい。
平凡な吉良でも、上杉が興奮してくれている。その事実を嬉しいと思ってしまったのはなぜだろう。
「生徒会室。行きませんか?」
「えっ? 今から?!」
「そうです。俺、忘れ物したんで、吉良先輩、俺についてきてください」
「せ、生徒会室に忘れ物を取りに行くだけか……?」
「はい。夜の学校、暗くて怖いので先輩についてきてもらいたいです」
上杉は完全に嘘をついている。目を見ればわかる。まさか上杉は初めてを生徒会室で……。
「先輩も興奮してますね。ほら、ここ、ズボンが苦しそうです。先輩って実はこういうこと好きですか?」
「上杉っ!」
恥ずかしいからそういうことを言わないで欲しい。吉良だって男だ。さっきからキスされたり、ドキドキさせられたりしたら、耐えられるわけがない。
「それとも今すぐここでしますか? 俺はどこでも構わないです」
「ここで?!」
ここは道端で、ちょっと奥まったところに隠れているだけだ。間違っても発情していい場所じゃない。
「とりあえず、もう一度キス、させてもらってもいいですか?」
「えっ? ダメだって……あっ……」
この大型ワンコを躾ける方法をなんとかして見つけ出さなくては。
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