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七月 親衛隊に転校生はその翌日から加入するルール
4.
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「楯山。俺に生徒会なんて出来ると思うか?」
夜になり、そろそろ規則の就寝時間という時に、寮で同室の楯山に事情を話して意見を求める。
「んー。無理だな。やめとけ」
「だよな……」
生徒会の仕事は生半可じゃ出来ないし、吉良が生徒会なんてやったら更に勉強時間がなくなり、成績が急降下しそうだ。
「あの生徒会メンバーの中に吉良が入ったら、生徒会が機能しなくなるな」
「おいっ! そこまで言うか?!」
歯に衣着せぬ物言いも構わないが、ちょっと言い過ぎじゃないか?!
「吉良にはわかんないだろうけどさ、距離が近すぎるってのは結構ツラいんだぜ?」
「……どういう意味だよ」
「目の前にいるのに、すぐ隣にいるのに、手が出せない。それって本当にフラストレーション溜まるぜ? 吉良が生徒会に入ったら絶対に誰かが動き出す。我慢出来なくなって事件が起こるに決まってる」
「なんだよそれ。俺がいるとみんながイライラするってことか?」
「そうだよ。吉良は仕事が遅くて足を引っ張ることになるからやめておけって意味だ!」
楯山は揶揄うように笑ってる。
「お前っ! 性格悪いなっ!」
「知ってるだろ?」
こうやっていつも二人で笑い合ってる。
二人楽しくそんな雑談をしている時、不意にドンドンッとドアを叩く音がして、楯山と二人で顔を見合わせる。
「はい」
吉良はドアの方へと向かう。こんな時間に誰だろう。
「きーらっ!」
「み、水李葉?!」
ドアを開けると同時に水李葉は遠慮なく部屋に入ってきた。
「吉良。俺、吉良と一緒に寝てもいい?」
「は?!」
「昔みたいにさ、吉良の部屋にお泊まりしたいんだ」
「おい、水李葉……。俺達もうガキじゃない。こんな狭いベッドに二人は無理だ」
「なんで? 抱き合って寝れば大丈夫。問題ないよ」
「おい、どうした、水李葉? お前はお前の部屋で寝ればいいだろ?」
「え……? 無理。今日だけでもいいから、吉良と寝たい……」
水李葉ってこんなに寂しがり屋だったか?!
「おい、お前が噂の転校生か?」
楯山が首を突っ込んできた。楯山は水李葉を訝しげな目で見ている。
「楯山、こいつは水李葉で俺の幼馴染。今日俺のクラスに転入してきたんだ。水李葉、楯山は俺と同室の友達だ」
二人をそれぞれ紹介してやったのに、楯山も水李葉もお互い腹の探り合いみたいに相手を警戒しているようだ。全然フレンドリーな雰囲気にならない。
「楯山君、ごめん、君、邪魔。俺さ今日中に吉良に伝えたいことがあるんだ。だからちょっとどっか行ってくれる?」
「水李葉! そんな言い方……っ」
「ぜってぇ嫌だ。誰がお前にそんなことさせるかよ!」
「おい、楯山……っ」
「この学校にはルールがあるらしい。だから今日言わなくちゃ、卒業まで吉良に伝えられなくなるんだよ」
ルール……? 転校生にはまた何か特殊なルールがあるのか……?
「ルールなんてバカバカしいと思ったけど、ここを追い出される訳にはいかない。俺、この学校に転校して正解だったと思ってる。出来るだけ吉良のそばにいて、ちゃんと吉良を守らなくちゃ、俺の吉良が誰に何されるかわからないからな!」
水李葉。こんな平和な学校で、俺に危害を加える奴なんていない。心配しすぎだ。
「は? 俺の吉良だと?! ふざけんなっ、何が守るだよ! てめぇが一番危ねぇんだよ!」
楯山、なんでそんなに怒るんだ……。
「君もだろ。楯山君。今すぐ部屋を代わってよ。吉良がこんな奴と一緒の部屋で寝泊まりするなんて俺は耐えられない。まさか、吉良が寝てる間に手ェ出したりしてないだろうな?!」
「そんなことするかっ! 吉良がいいって言ってくれるまでダメだろ。吉良が知ったら傷つくから……。吉良が俺を『選んで』くれるなんて自信も、最近、なくなってきたし……」
「へぇ。じゃあさっさと諦めてよ。俺は絶対に諦めないから」
「俺がダメでも、水李葉、お前だけは許さない。認めない。さっきからマジでムカつくんだよっ!」
「いい加減にしろ!」
吉良が大声を出したから、水李葉と楯山は言い合いをやめて吉良を見て目をしばたかせている。
「水李葉。俺に言いたいことがあるならさっさと言えよ! 俺は水李葉にどんなにバカにされても怒らねぇから。それに俺は水李葉に守られなきゃいけないほど弱くない。ほっといてくれ!」
水李葉は驚いて言葉を失ってるみたいだ。
「楯山っ! 俺はお前が同室で良かったっていつも思ってるんだ! 俺に同室者を選ぶ権利はないけど、卒業までこのまま楯山といられたらと思ってる。その間、俺と一緒にいてムカついて手ェ出したいならいくらでも殴れよ。俺も殴り返してやるから!」
楯山は、ポカンとした顔になった後、「吉良の恋人になったら、気持ちを伝えるのに苦労しそうだよな」と水李葉に向かって言う。
「ここまで言ってわかってもらえないのはさすがにね……」
水李葉も楯山に同意し、二人は急に意気投合している。
なんだかわからないが、二人の喧嘩は収まったみたいだ。
「吉良」
水李葉は、仕切り直しをして、吉良を真っ直ぐに見つめてきた。
「今日が終わったら想いをしばらく封印しなくちゃいけなくなるから、今、言わせてね」
水李葉は微笑んだ。
「吉良。好きだよ」
なんなんだ急に、水李葉は……。
「吉良には、はっきり伝えなくちゃ。俺は吉良が好き。何もかもを吉良のために捧げても惜しくない。きっと俺は吉良に会うために生まれてきたんだ。だから俺のそばに吉良がいてくれないと生きていけないの。俺ね、本気だよ。やっと会いに来れた。だから吉良、ちゃんと俺の告白の返事を聞かせてよ。俺としては、吉良の返事がイエスでもノーでも吉良に今すぐキスしたい。吉良は? 俺のこと好き?」
水李葉は俺のことが好きなのか……?
久しぶりに再会したばかりなのに。離れていたけどその間、吉良を忘れるどころかずっと想っていてくれていたのか……?
夜になり、そろそろ規則の就寝時間という時に、寮で同室の楯山に事情を話して意見を求める。
「んー。無理だな。やめとけ」
「だよな……」
生徒会の仕事は生半可じゃ出来ないし、吉良が生徒会なんてやったら更に勉強時間がなくなり、成績が急降下しそうだ。
「あの生徒会メンバーの中に吉良が入ったら、生徒会が機能しなくなるな」
「おいっ! そこまで言うか?!」
歯に衣着せぬ物言いも構わないが、ちょっと言い過ぎじゃないか?!
「吉良にはわかんないだろうけどさ、距離が近すぎるってのは結構ツラいんだぜ?」
「……どういう意味だよ」
「目の前にいるのに、すぐ隣にいるのに、手が出せない。それって本当にフラストレーション溜まるぜ? 吉良が生徒会に入ったら絶対に誰かが動き出す。我慢出来なくなって事件が起こるに決まってる」
「なんだよそれ。俺がいるとみんながイライラするってことか?」
「そうだよ。吉良は仕事が遅くて足を引っ張ることになるからやめておけって意味だ!」
楯山は揶揄うように笑ってる。
「お前っ! 性格悪いなっ!」
「知ってるだろ?」
こうやっていつも二人で笑い合ってる。
二人楽しくそんな雑談をしている時、不意にドンドンッとドアを叩く音がして、楯山と二人で顔を見合わせる。
「はい」
吉良はドアの方へと向かう。こんな時間に誰だろう。
「きーらっ!」
「み、水李葉?!」
ドアを開けると同時に水李葉は遠慮なく部屋に入ってきた。
「吉良。俺、吉良と一緒に寝てもいい?」
「は?!」
「昔みたいにさ、吉良の部屋にお泊まりしたいんだ」
「おい、水李葉……。俺達もうガキじゃない。こんな狭いベッドに二人は無理だ」
「なんで? 抱き合って寝れば大丈夫。問題ないよ」
「おい、どうした、水李葉? お前はお前の部屋で寝ればいいだろ?」
「え……? 無理。今日だけでもいいから、吉良と寝たい……」
水李葉ってこんなに寂しがり屋だったか?!
「おい、お前が噂の転校生か?」
楯山が首を突っ込んできた。楯山は水李葉を訝しげな目で見ている。
「楯山、こいつは水李葉で俺の幼馴染。今日俺のクラスに転入してきたんだ。水李葉、楯山は俺と同室の友達だ」
二人をそれぞれ紹介してやったのに、楯山も水李葉もお互い腹の探り合いみたいに相手を警戒しているようだ。全然フレンドリーな雰囲気にならない。
「楯山君、ごめん、君、邪魔。俺さ今日中に吉良に伝えたいことがあるんだ。だからちょっとどっか行ってくれる?」
「水李葉! そんな言い方……っ」
「ぜってぇ嫌だ。誰がお前にそんなことさせるかよ!」
「おい、楯山……っ」
「この学校にはルールがあるらしい。だから今日言わなくちゃ、卒業まで吉良に伝えられなくなるんだよ」
ルール……? 転校生にはまた何か特殊なルールがあるのか……?
「ルールなんてバカバカしいと思ったけど、ここを追い出される訳にはいかない。俺、この学校に転校して正解だったと思ってる。出来るだけ吉良のそばにいて、ちゃんと吉良を守らなくちゃ、俺の吉良が誰に何されるかわからないからな!」
水李葉。こんな平和な学校で、俺に危害を加える奴なんていない。心配しすぎだ。
「は? 俺の吉良だと?! ふざけんなっ、何が守るだよ! てめぇが一番危ねぇんだよ!」
楯山、なんでそんなに怒るんだ……。
「君もだろ。楯山君。今すぐ部屋を代わってよ。吉良がこんな奴と一緒の部屋で寝泊まりするなんて俺は耐えられない。まさか、吉良が寝てる間に手ェ出したりしてないだろうな?!」
「そんなことするかっ! 吉良がいいって言ってくれるまでダメだろ。吉良が知ったら傷つくから……。吉良が俺を『選んで』くれるなんて自信も、最近、なくなってきたし……」
「へぇ。じゃあさっさと諦めてよ。俺は絶対に諦めないから」
「俺がダメでも、水李葉、お前だけは許さない。認めない。さっきからマジでムカつくんだよっ!」
「いい加減にしろ!」
吉良が大声を出したから、水李葉と楯山は言い合いをやめて吉良を見て目をしばたかせている。
「水李葉。俺に言いたいことがあるならさっさと言えよ! 俺は水李葉にどんなにバカにされても怒らねぇから。それに俺は水李葉に守られなきゃいけないほど弱くない。ほっといてくれ!」
水李葉は驚いて言葉を失ってるみたいだ。
「楯山っ! 俺はお前が同室で良かったっていつも思ってるんだ! 俺に同室者を選ぶ権利はないけど、卒業までこのまま楯山といられたらと思ってる。その間、俺と一緒にいてムカついて手ェ出したいならいくらでも殴れよ。俺も殴り返してやるから!」
楯山は、ポカンとした顔になった後、「吉良の恋人になったら、気持ちを伝えるのに苦労しそうだよな」と水李葉に向かって言う。
「ここまで言ってわかってもらえないのはさすがにね……」
水李葉も楯山に同意し、二人は急に意気投合している。
なんだかわからないが、二人の喧嘩は収まったみたいだ。
「吉良」
水李葉は、仕切り直しをして、吉良を真っ直ぐに見つめてきた。
「今日が終わったら想いをしばらく封印しなくちゃいけなくなるから、今、言わせてね」
水李葉は微笑んだ。
「吉良。好きだよ」
なんなんだ急に、水李葉は……。
「吉良には、はっきり伝えなくちゃ。俺は吉良が好き。何もかもを吉良のために捧げても惜しくない。きっと俺は吉良に会うために生まれてきたんだ。だから俺のそばに吉良がいてくれないと生きていけないの。俺ね、本気だよ。やっと会いに来れた。だから吉良、ちゃんと俺の告白の返事を聞かせてよ。俺としては、吉良の返事がイエスでもノーでも吉良に今すぐキスしたい。吉良は? 俺のこと好き?」
水李葉は俺のことが好きなのか……?
久しぶりに再会したばかりなのに。離れていたけどその間、吉良を忘れるどころかずっと想っていてくれていたのか……?
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