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六月  親衛隊に教師は含まれ、教師は生徒の親衛隊の人数を閲覧できるルール

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佐々木総一郎(24)攻。長男。美術教師。元不良。
佐々木賢治(18)攻。次男。吉良のクラスメイト。
佐々木三玖(15)攻。三男。高校一年生。
柳(19)攻。不良。


「今日の授業はこれで終わりだ。課題が終わってないやつは次回までにやってこいよ」

 チャイムと同時に、美術教師の佐々木ささきは授業を終了させた。

「吉良。ちょっと手伝え」

 佐々木は当然のように吉良を呼びつける。先生の小間使いをさせられるのは、一番前の席にいる生徒のサガだ。

「はい」

 正直ダルいが、吉良は立ち上がる。佐々木の指示に従うしかない。

「この段ボール、準備室まで運んでくれないか?」
「わかりました」

 佐々木はいつも吉良ばかりを指名して小間使いにする。なんで自分ばかりと吉良は常々思っているが、周りを見渡すと黒田という素行の悪い生徒や有名企業のお偉いさんの息子などで、とでも小間使いできないような奴らばっかりだ。

 だから佐々木は声がかけやすい平凡な吉良ばかりを選ぶのだろう。



「ありがとう、吉良。助かったよ」

 美術準備室まで段ボールを運ぶと、佐々木に礼を言われた。

「吉良。ついでにその課題を名前順に並べるの手伝ってくれないかな」

 でた。いつも佐々木は、荷物を運ぶだけじゃなくさらに仕事を頼んでくるのだ。

「わかりました」

 仕方がないので手伝ってやる。


 黙々と二人で作業をしていると、不意に佐々木の手に吉良の手がぶつかった。その拍子に佐々木に手を取られて、佐々木の両手でその手を撫でられる。

「吉良の手って、綺麗だ」

 手をまじまじと見られてもなんだか小恥ずかしい。

「今度デッサンさせてよ」
「えっ、マジですか?!」

 佐々木から逃れるように、思わず手を引っ込める。こんな平凡な手のどこがいいのだろう。芸術家の考えることはよくわからない。


「俺。吉良の手、好きだよ。大好きだ。爪も綺麗に切り揃えられているし、艶やかでさ」
「そうですか……」

 そんなに手のことを好き好き言われたのは初めてだ。

「たまらないくらい本当に大好きなんだ」

 佐々木は笑顔で吉良を見つめている。そんなにニッコニコされてもどう反応したらいいのか困ってしまう。



「あ、そうだ。手伝ってくれたお礼」

 佐々木はペットボトルのフルーツティーを吉良に手渡してきた。

「あざっす」

 フルーツティーは吉良の好きな飲み物だ。いつかそんな話を佐々木として以来、佐々木はいつも手伝いの度に吉良にフルーツティーをくれるようになった。

「吉良が好きだから、俺までフルーツティーを好きになっちゃったよ」
「なんでですか。俺の好みは関係ないでしょう」
「そうなんだけどさ。これ飲んでると吉良のこと思い出すからつい嬉しくて」

 吉良を思い出して何が嬉しいのか理解できないが、とりあえず本人の好きにさせとこう。



「じゃあ俺はこれで」

 吉良が準備室から退散しようとした時に、何かに腕がぶつかった。その衝撃で頭上で何か崩れたみたいだ。

「危ないっ!」

 ガラガラと上から降ってくる画材道具から吉良を守るようにして佐々木が覆い被さってきた。

「吉良っ! 大丈夫?!」
「俺は、大丈夫です……」

 佐々木が庇ってくれたお陰で吉良はなんともない。一方の佐々木はというと、顔や腕などあちこちすり傷だらけだ。

「先生こそ怪我してますよ?!」
「吉良が無事ならいい。ごめんね、俺が道具を山積みにし過ぎたせいだ」
「いや、俺の方こそすみません……」

 二人で謝り合うのはいいのだが、ふと佐々木との距離が二人抱き合うくらいに異常に近いことに気がついて、びっくりして佐々木を押しのけて身体を離した。

 佐々木も佐々木で様子がおかしい。

「吉良。昼休みだもんな。後の片付けは俺がやるからもう行っていいよ」
「でも先生。保健室くらい、俺が付き添いますよ。手当てしてもらわないと」
「ありがとう。でも俺ひとりで行けるから。男のサガで今俺はちょっと大変なことになってるから、後で大丈夫」

 なんだその理由。よくわからないが、とりあえず目につくところだけサッと片付けてから、準備室を出た。


 ◆◆◆


「吉良先輩! 兄貴を見ませんでしたか?」

 放課後、佐々木三玖みくが吉良に声をかけてきた。

「お前の兄貴? どっちの?」

 三男の三玖の兄は、美術教師の長男・佐々木総一郎そういちろうと、吉良のクラスメイトの次男・佐々木賢治けんじの二人いる。
 この三人は皆異なる雰囲気の美形兄弟なのだが、特に三玖はアイドル並のルックスの持ち主で、入学してまだ二ヶ月ばかりだというのにもう親衛隊がいるらしい。

「賢治です。先輩と同じクラスの」
「賢治は見てないな……」
「じゃあもし見かけたら俺に連絡くれませんか?」
「そう言われても俺、お前の連絡先知らな——」
「そうでした! 吉良先輩、連絡先交換しましょう!」

 食い気味に言われて、吉良も三玖に従ってスマホを取り出す。

「今、先輩に試しのメール送りました! 届いてますか?」
「ああ……届いてるけど……」

 三玖のメールは受け取ったが、この内容は……。

「じゃあ俺、もう少し兄貴を探してみます!」

 三玖は急いで行ってしまった。

 吉良は三玖のメールをもう一度見返す。

『吉良先輩と連絡先交換できて嬉しいです!俺、先輩に男として見てもらえるように頑張りますから、先輩もたまには俺のこと見てくださいね!』

 なんなんだよ、このメール。兄貴を見つけたときの連絡用だったんじゃねぇのかよ。
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