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9.一途に
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「和泉と一緒にいてすごく楽しかった。話してみてわかった。和泉は綺麗な顔してるから、クールで愛想がない奴かと思いきや、実は仕事に熱くてさ。すぐにムキになって怒るところも、褒められると赤くなって照れるところも可愛いくて正直惚れたよ。なによりプレイがいい。普段は俺に全然懐かないくせに、プレイとなると正直になる。こいつはそんなに俺が好きなのかって思って、ずっと抱き締めていたくなった」
佐原は静かな声で、熱い気持ちをぶつけてくる。だが表情は明るくない。伏し目がちで、どこか諦めたような顔をしている。
だが和泉としては信じられない。さっきからの佐原の愛の告白が嬉しくて、身体中が満たされていって、今にも想いがあふれ出しそうだ。
「俺は和泉とプレイをしたあと、なんとかお前を繋ぎ止めたくて、脅迫までして偽のパートナーにさせた。なんでだろうな。三ヶ月だけでもいいから和泉を手に入れたかったんだろうな」
佐原の行動は全部、責任感と和泉に対する同情心からくるものだと思っていた。だがそれは違っていたのだろう。
佐原は、本心で一緒にいたいと思ってくれたのかもしれない。だとしたら。
「でも、虚しかった。俺はDomだから命令さえすればSubのお前を思い通りにできる。脅して無理矢理プレイをさせて、お前を手に入れた気になってただけだったんだ。SubはDomの命令ならなんでも聞くから、お前の気持ちがわからなかった。もしかしたら和泉に好かれてるかもって思った俺は、浅はかだった」
DomとSubの関係は一方通行だと思う。Domは命令し、Subは従うだけ。
本当の信頼関係を築くには、DomはSubの気持ちを汲んでコマンドを出さなければならない。Subは嫌でも従ってしまうから、自分がSubに信頼されているのか、Subが喜んでいるかどうか、Domには伝わりにくいことなのだろう。
「和泉は、俺に身体は預けても気持ちは向けてくれなかった。まぁ、尚紘を死に追いやった俺と一緒になんていたくないよな。俺はお前に罪を告白したあの日、こっ酷く和泉に振られてよくわかったよ」
「佐原あれは……っ」
振ったつもりなんてない。佐原に同情で抱かれていると思ったから、佐原を罪の意識と義務感から解放してやろうと思ったからこその行動だったのに。
俯き加減でずっと暗い顔をしていた佐原だが、おもむろに顔を上げて和泉に切なげな目を向けてくる。
麗しい漆黒の双眼が揺れるさまを見ただけで愛しくて、胸がいっぱいになって、今にも泣き出しそうになる。
「一度は諦めようとした。でも無理なんだ。お前から離れても、いつも和泉のことばかり考えてる。和泉の口からはっきりと『尚紘が忘れられない』と面と向かって言われたのに、まだ諦められない。俺は和泉を好きで好きでどうしようもないんだ」
あれは和泉の嘘だ。最後に佐原とプレイがしたかったから、佐原の同情心を煽るためについた和泉の嘘だった。
佐原は切実に気持ちを伝えてくる。その言葉ひとつひとつが嬉しくて、和泉の胸が打ち震え、ドクンドクンと心臓が高鳴っていく。
「俺は今日、叔父に和泉のことを話した。今でさえ敵わないのに、尚紘からのカラーを受け取ったら、和泉はさらに尚紘のことを好きになる。俺のことを今よりもっと見てくれなくなる。そうなるのが嫌で、五年のあいだずっと黙ってた。バカだと思うだろ? そんなことをしても和泉に振り向いてもらえないのにな」
佐原の一途な想いを知って胸が苦しくなる。佐原がそんなにずっと好きでいてくれていたとは思わなかった。
「和泉。お前は俺を好きじゃなくても、俺は和泉が好きだ。大好きなんだよ。好きになってほしいとは言わない。尚紘を好きなままでいいから、俺をお前のそばに置いてくれないか? 和泉の嫌がることはしないと約束する。立場をわきまえて行動する。お前の心は要らない。そんな高望みはしないから、ただ一緒にいたい。それを許してくれないか?」
佐原の涙で揺れる瞳が、和泉だけを見つめている。
佐原は静かな声で、熱い気持ちをぶつけてくる。だが表情は明るくない。伏し目がちで、どこか諦めたような顔をしている。
だが和泉としては信じられない。さっきからの佐原の愛の告白が嬉しくて、身体中が満たされていって、今にも想いがあふれ出しそうだ。
「俺は和泉とプレイをしたあと、なんとかお前を繋ぎ止めたくて、脅迫までして偽のパートナーにさせた。なんでだろうな。三ヶ月だけでもいいから和泉を手に入れたかったんだろうな」
佐原の行動は全部、責任感と和泉に対する同情心からくるものだと思っていた。だがそれは違っていたのだろう。
佐原は、本心で一緒にいたいと思ってくれたのかもしれない。だとしたら。
「でも、虚しかった。俺はDomだから命令さえすればSubのお前を思い通りにできる。脅して無理矢理プレイをさせて、お前を手に入れた気になってただけだったんだ。SubはDomの命令ならなんでも聞くから、お前の気持ちがわからなかった。もしかしたら和泉に好かれてるかもって思った俺は、浅はかだった」
DomとSubの関係は一方通行だと思う。Domは命令し、Subは従うだけ。
本当の信頼関係を築くには、DomはSubの気持ちを汲んでコマンドを出さなければならない。Subは嫌でも従ってしまうから、自分がSubに信頼されているのか、Subが喜んでいるかどうか、Domには伝わりにくいことなのだろう。
「和泉は、俺に身体は預けても気持ちは向けてくれなかった。まぁ、尚紘を死に追いやった俺と一緒になんていたくないよな。俺はお前に罪を告白したあの日、こっ酷く和泉に振られてよくわかったよ」
「佐原あれは……っ」
振ったつもりなんてない。佐原に同情で抱かれていると思ったから、佐原を罪の意識と義務感から解放してやろうと思ったからこその行動だったのに。
俯き加減でずっと暗い顔をしていた佐原だが、おもむろに顔を上げて和泉に切なげな目を向けてくる。
麗しい漆黒の双眼が揺れるさまを見ただけで愛しくて、胸がいっぱいになって、今にも泣き出しそうになる。
「一度は諦めようとした。でも無理なんだ。お前から離れても、いつも和泉のことばかり考えてる。和泉の口からはっきりと『尚紘が忘れられない』と面と向かって言われたのに、まだ諦められない。俺は和泉を好きで好きでどうしようもないんだ」
あれは和泉の嘘だ。最後に佐原とプレイがしたかったから、佐原の同情心を煽るためについた和泉の嘘だった。
佐原は切実に気持ちを伝えてくる。その言葉ひとつひとつが嬉しくて、和泉の胸が打ち震え、ドクンドクンと心臓が高鳴っていく。
「俺は今日、叔父に和泉のことを話した。今でさえ敵わないのに、尚紘からのカラーを受け取ったら、和泉はさらに尚紘のことを好きになる。俺のことを今よりもっと見てくれなくなる。そうなるのが嫌で、五年のあいだずっと黙ってた。バカだと思うだろ? そんなことをしても和泉に振り向いてもらえないのにな」
佐原の一途な想いを知って胸が苦しくなる。佐原がそんなにずっと好きでいてくれていたとは思わなかった。
「和泉。お前は俺を好きじゃなくても、俺は和泉が好きだ。大好きなんだよ。好きになってほしいとは言わない。尚紘を好きなままでいいから、俺をお前のそばに置いてくれないか? 和泉の嫌がることはしないと約束する。立場をわきまえて行動する。お前の心は要らない。そんな高望みはしないから、ただ一緒にいたい。それを許してくれないか?」
佐原の涙で揺れる瞳が、和泉だけを見つめている。
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