おいてけぼりのSubは一途なDomに愛される

雨宮里玖

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7.真相は

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「どんなに謝っても許されない。お前に嫌われるのが怖くて、どうしても言えなかった」

 佐原の漆黒の瞳が濡れ、不安げに揺れている。
 いつもの佐原と雰囲気が違うことに気がついて怖くなる。
 佐原は何を言おうとしているのだろう。

 あの笑顔と優しい微笑みの下に、ずっと何を隠していた……?



「尚紘を殺したのは俺だ。俺がお前から大切なパートナーを奪った」


 突然の佐原の告白に、時が止まったようだった。
 尚紘は薬の過剰服用のせいで事故死したはずだ。
 佐原は何を言っているのだろう。佐原がそれに関係しているとは到底思えない。

「五年前の六月三日、最後に尚紘に会ったのは俺なんだ。あいつに呼び出されて話をした。そこで俺はあいつとケンカして、グレアをぶつけ合って尚紘の右手に怪我を負わせた」
「怪我……?」
「運転に支障があったと思う。ついでに俺はあいつを散々怒らせたから、尚紘のメンタルも悪かった。あいつは相当イライラしてたと思う。それで尚紘は事故を起こして死んだんだ」
「知らなかった……」

 事故の直前、尚紘と佐原のふたりはケンカをしていた。そんなことは想像すらしなかった。
 和泉が尚紘に会ったのは事故のあとで、事故以前に尚紘が怪我をしていたかも、どんな様子だったのかもわからなかった。

 ただ佐原の話を聞いていて、ひとつだけわかったことがある。

 和泉が尚紘の死にずっと責任を感じていたように、佐原も長い間その責任を背負って生きていたということだ。

 まさか佐原がそんな気持ちでいるとは夢にも思わなかった。


「尚紘の葬式のときに、和泉はずっと泣いてたよな。俺が何度見に行っても泣いてて、雨が降ってきたのにずぶ濡れのまま、まだ泣いてた。俺はなんてことをしたんだとあのとき思い知った。和泉から最愛のパートナーを奪ったんだ。俺がくだらない意地を張って尚紘を怒らせたせいで、和泉は、和泉は……」

 佐原の目から涙が溢れる。
 佐原はこのことをずっと後悔し続けていたのだろう。

 それは和泉も同じことだ。何年経っても尚紘を失ったときの後悔は、決して薄れることはなかった。


「あのとき、俺に傘をくれたのはお前か?」

 和泉は佐原の涙を指で拭い、頬を撫でてやる。
 佐原は静かに頷く。
 あのとき和泉に声をかけてきたのは、佐原だったのだ。尚紘の死を自分のせいだと思って苦しんでいた優しい佐原がくれた傘だった。

「謝ってもあいつは帰って来ないし、これは俺のひとりよがりな気持ちだとわかってる。それでも和泉に謝りたい。和泉、お前をひとりにしてごめん。お前から尚紘を奪ってごめん……」

 佐原の言うとおり、謝ってもどうにもならないことだ。それでも和泉が謝罪を受け入れることで、佐原の懺悔の気持ちがほんの少しでも軽くなるならいい。佐原の気持ちが沈むたびに何度でも聞いて、受け止めてやりたい。


「お前のせいじゃない。佐原は何も悪くないよ」

 和泉は佐原の身体を抱き寄せた。和泉の左肩に頭を寄せ、身体を小さく震わせている佐原の大きな背中をそっと撫でてやる。


 これでわかった。

 佐原がなぜ和泉の前に突然現れたのか。

 あんなに和泉を助けようとしたのか。
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