借金のカタにイケメン社長に囲われる

雨宮里玖

文字の大きさ
上 下
121 / 138

    サプライズプレゼント4

しおりを挟む
「嬉しい……冬麻からペアデザインのネックレスをもらえたことも嬉しいし、俺が欲しがってたことに冬麻が気づいてくれたことも、冬麻が俺とペアのものを身につけてくれることも、全部、全部嬉しい……」

 ふと久我の顔を見ると、外なのに本当に涙ぐんでいて、冬麻は驚いた。
 久我ならなんでも持っているし、欲しいものを買うお金も十分に持っている。だからプレゼントなんて喜ばないかなと少し不安に思っていたから、まさかこんなに喜んでもらえるとは思わなかった。


「俺も安心しました。久我さんが誰かからもらったアクセサリーを着けていたら、ちょっと、嫌です……」
「それって、冬麻が俺を自分だけのものにしたいってこと?」
「うっ……」

 久我に言われて言葉に詰まる。自分は久我に束縛しないでくださいと言っているくせに、自分はどうなんだ、と突っ込まれているようだ。

「そんなものを俺が身に着けるわけがないだろう? そもそもアクセサリーは受け取らない。全部お断りだ。俺を縛っていいのは冬麻だけ。冬麻なら俺を雁字搦がんじがらめにしてくれていい。『一秒も離れないでください』って言われたら本当にずっとそばにいる。俺の人生で冬麻よりも大事なものは何もないんだ。冬麻に縛りつけられたら本望だよ」

 やばい。久我の目がやばい。久しぶりにこのヤンデレ臭がただよう目で見つめられた。

「冬麻……冬麻……」

 やばいやばい。完全ヤンデレモードに突入している。

「久我さんっ、落ち着いてくださいっ。あー、えーっとえーっと、桜っ、見ましょうか!」

 冬麻が久我をもとに戻そうとしているのに、久我は「今すぐ冬麻に触れたい……」とぐいぐい迫ってくる。

 桜の木の陰とはいえ、こんなにたくさんの人がいるのにイチャイチャモードはありえない。

「そうだ! ネックレス! 久我さんに着けてあげますね。少し屈んでくださいっ」

 冬麻は自分のぶんのネックレスを素早く首にかけて、次は背の高い久我にかけるために、ネックレスの留め具を外して準備する。

「いいの? 冬麻に着けてもらえるなんて、光栄だな」

 久我は冬麻の背の高さに合わせて屈み、じっと待っている。
 冬麻は久我の正面からゆっくりと首にネックレスを回し、首の後ろで留めた。

「少し向きを直します」

 留め具が綺麗に首の後ろになるように、ネックレスチェーンを回して整える。その間、久我は冬麻にされるがままだ。

「できました」

 久我の胸元に、冬麻が買ったネックレスが光っている。この姿が無事に見られて嬉しく思う。

 いろいろ誤解があって思っていたのと違うサプライズ演出になってしまったが、これはこれでサプライズになったかもしれない。



「これでお揃いですね」

 冬麻はネックレスを首にかけた状態で、久我に身体を寄せ、ネックレスのモチーフを久我のネックレスに近づけて、模様を繋げる。ふたり身体を寄せ合えば、首に下げたままでもピタッと模様を繋げることができる。

「ありがとう冬麻」

 あっと思ったときには、久我にキスをされていた。一瞬の隙をついた素早いキスで、唇を奪われてしまった。

「あ! こらっ、ちょっと久我さんっ! だ、誰かに見られてたら……!」

 久我はキスをしてすぐに冬麻から離れたが、一瞬とはいえ、誰か見ていたかもしれない。こんなところでキスなんて、めちゃくちゃ恥ずかしい。

「もし見られてたら、責任を取って冬麻と入籍する」

 んん……? それは、久我の思うツボなのではないだろうか。それを許したら責任を取りたくて仕方がなくて、街中でキスされまくることになってしまうのではないか。

「だって可愛い。たまらなく大好きだ。一緒にいればいるほど、どんどん好きになる」

 そんなことを久我は臆面もなく言ってくるから、冬麻はタジタジだ。
 いつもこうだ。久我に散々好き好き言われて、冬麻が恥ずかしくて耳まで真っ赤になり完全ノックアウトさせられる。


 ——やられっぱなしじゃダメだ!

 サプライズ、サプライズ……と久我を驚かせるような言葉を必死で考える。
 いつも、好きだと言われても「そういうこと言うのやめてくださいっ!」とかありきたりなことしか言えないから、今日こそ。


「久我さん」

 冬麻は背伸びをして久我の耳元に唇を寄せた。

「今夜、抱いてください」

 ——これでどうだっ!

 冬麻が渾身のサプライズな言葉を久我に浴びせたのに、久我の反応が返ってこない。もしかして、周りが賑やかでよく聞こえなかったのだろうか。

「……冬麻」

 久我の抑揚のない、低い声。もしかしてふざけすぎだと怒ったのだろうか。

「すまない。もう我慢の限界だ。家に帰ろう」
「えっ?」

 急に久我に腕を引っ張られ、歩いてきた道をそのまま家の方向に向かって歩かされる。

「夜まで待ちきれない。デートは中断して、家で一度イチャイチャ休憩しよう」
「はぁっ?」

 違う。全然違う。夜だって言ったのに、なんで今すぐ!?



 その後、冬麻は家に入った途端、玄関で久我に食われることとなる……。



 ——番外編『サプライズプレゼント』完。
しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する

知世
BL
大輝は悩んでいた。 完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。 自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは? 自分は聖の邪魔なのでは? ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。 幼なじみ離れをしよう、と。 一方で、聖もまた、悩んでいた。 彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。 自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。 心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。 大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。 だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。 それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。 小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました) 受けと攻め、交互に視点が変わります。 受けは現在、攻めは過去から現在の話です。 拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 宜しくお願い致します。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

処理中です...