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冬麻ハッピーラッキーLOVE作戦編3
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「久我さん、おやすみなさい」
冬麻は久我の部屋の前で寝る前の挨拶をして自分の部屋に向かう。
「えっ? 冬麻自分の部屋で寝るのっ?」
久我が慌てた様子で冬麻の腕を掴んできた。
「はい。明日早いんで。おやすみなさい」
久我の言いたいことはわかる。気がついたら冬麻の寝る場所は久我の部屋のベッドが当たり前になっていたから違和感があるのだろう。
でもそれはよくない。同じベッドに入ったらなんとなくいい雰囲気になって、そういうことを致してしまうから。
本当に久我と毎晩のようにセックスしている。もうちょっと頻度を減らさないと物珍しさがなくなって、恋人同士だけの特別な行為が当たり前のことになってしまう。
「そうだね、おやすみ冬麻……」
久我は掴んだ腕を放し、それ以上は何も言わずに部屋に入っていった。
冬麻は部屋に入ってニマニマほくそ笑む。たまには別々のベッドで寝る日を作らないといけない。ちょっと寂しいが、この寂しいと思う時間がマンネリ解消のためには必要なのだ。
冬麻は自分の部屋のベッドに入る。いつもは部屋でゴロゴロするときくらいにしか使わないベッドは自分のベッドなのに新しい感じがして、布団がひんやり冷たく感じた。
「やっぱり一緒がいいなぁ……」
久我と一緒のほうが眠る寸前まで寂しくないし、寒くなったら久我にくっつけばいいから温かい。
でもこれも、長く一緒にいるための少しの試練だ。今日は我慢するから、明日は久我のベッドで眠らせてもらおう。
ひとりだからか目が冴えてしまって寝つけない。冬麻はゲーム機を取り出して、眠くなるまでプレイすることにした。最近追加コンテンツが発売になり、一度クリアはしたものの、再び始めることにしたのだ。
「なつき度を上げなくちゃな」
今は進化させたいポケ◯ンがいて、ゲーム内のなつき度をアップさせなければならない。そのために積極的に構ってみたり、メインの六匹の中に入れて連れ回したりしている。
「進化前も可愛いんだけど、進化後もいいんだよな」
癒し系のピンク色の丸いボディがなんとも可愛らしい。進化すると天使の羽が生えて、さらに可愛くなる。
ニックネームは「さくやくん」だ。冬麻はメインキャラには大抵ニックネームを付けてプレイしている。この子はイチ推しだから、久我朔夜の名前からそっくりそのままいただいた名前にした。
「ほーら、さくや。ごはんの時間だぞ~」
冬麻はなつき度アップのためのとっておきの木の実を与える。レアなアイテムだが、この子だけは特別可愛がっているので惜しくはない。
ポケ◯ンもそうだが、恋人だって大切な相棒だ。愛情を向けて大切にして、いつも隣にいるべきだ。
◆◆◆
『ごめん、冬麻、今日は仕事で遅くなるから夕飯は要らない』
久我からの連絡を受けて、いそいそと料理をしていた手が止まった。
なんとなく予想はできていた。取引先の西野社長に会うときは大抵そのあと食事にも付き合うことになる。そのためわざわざ久我は予定を空けておくくらいに周到だ。
『かしこまりました。送迎は櫂堂さんですよね?』
冬麻も運転免許は取ったが、送迎は基本的に久我のもうひとりの秘書・櫂堂の担当になっている。元タクシードライバーだった櫂堂は都内の抜け道も詳しいし、運転も慣れたものだからだ。
『冬麻。これは業務連絡じゃないよ。どうしてそんなに他人行儀なの?』
久我に指摘されて気がついた。そうだった。今まで久我が用意してくれていたから、夕食を食べる食べないの連絡なんてもらったことがなく、勘違いしていた。
『そうでしたね。すみません。夕食の件、了解いたしました』
メールを送ってから、文面が固かったなと少し後悔したが、まぁ内容が伝わればいいだろうと思い直す。
問題は、目の前にある作りかけの料理たちだ。
さっきまで張り切ってたのに、久我が食べないと知った瞬間に一気にやる気が削ぎれてしまった。このために今日もひとり早めに帰宅したのに。
「久我さんは、俺より付き合いを選ぶんだな」
久我の予定が空いていたのは、西野社長に高頻度で食事に誘われる可能性があるからだ。そんなことは秘書で久我の予定を把握しきっている冬麻にはわかっているが、なんとなく愚痴をこぼしたくなった。
「やめたっ! やめやめ!」
冬麻はキッチンに並んだ食材たちをザッと眺めて、冷蔵庫に戻せるものは戻して、残りは炒めて自分の夕食にする。自分ひとり分なのに、凝った料理なんて作りたくなかった。
適当な夕食を終わらせ、のんびり湯船に浸かり、それでも時間が余ったのでリビングのソファーでいつものゲームをしながら久我の帰宅を待つ。
「早く帰ってきてよ……」
冬麻は待ちきれず、そのままソファーでうたた寝してしまった。
「あれ……?」
気がつくと、冬麻はベッドの上だった。ここは自分の部屋だ。
ソファーでゲームをしていたはずが、いつの間にか自分の部屋にいて、しっかり布団をかけられベッドの中にいる。深夜だったはずなのに外はすでに明るい。
「久我さん……?」
せっかく起きて久我の帰りを待っていたかったのに、眠ってしまったようだ。きっと、冬麻をここまで運んだのは久我に違いない。思い出してみると、なんとなく久我に運ばれた気がする。
でも、いつもなら寝てしまっても久我のベッドに運んでくれるのに。
冬麻は久我の部屋の前で寝る前の挨拶をして自分の部屋に向かう。
「えっ? 冬麻自分の部屋で寝るのっ?」
久我が慌てた様子で冬麻の腕を掴んできた。
「はい。明日早いんで。おやすみなさい」
久我の言いたいことはわかる。気がついたら冬麻の寝る場所は久我の部屋のベッドが当たり前になっていたから違和感があるのだろう。
でもそれはよくない。同じベッドに入ったらなんとなくいい雰囲気になって、そういうことを致してしまうから。
本当に久我と毎晩のようにセックスしている。もうちょっと頻度を減らさないと物珍しさがなくなって、恋人同士だけの特別な行為が当たり前のことになってしまう。
「そうだね、おやすみ冬麻……」
久我は掴んだ腕を放し、それ以上は何も言わずに部屋に入っていった。
冬麻は部屋に入ってニマニマほくそ笑む。たまには別々のベッドで寝る日を作らないといけない。ちょっと寂しいが、この寂しいと思う時間がマンネリ解消のためには必要なのだ。
冬麻は自分の部屋のベッドに入る。いつもは部屋でゴロゴロするときくらいにしか使わないベッドは自分のベッドなのに新しい感じがして、布団がひんやり冷たく感じた。
「やっぱり一緒がいいなぁ……」
久我と一緒のほうが眠る寸前まで寂しくないし、寒くなったら久我にくっつけばいいから温かい。
でもこれも、長く一緒にいるための少しの試練だ。今日は我慢するから、明日は久我のベッドで眠らせてもらおう。
ひとりだからか目が冴えてしまって寝つけない。冬麻はゲーム機を取り出して、眠くなるまでプレイすることにした。最近追加コンテンツが発売になり、一度クリアはしたものの、再び始めることにしたのだ。
「なつき度を上げなくちゃな」
今は進化させたいポケ◯ンがいて、ゲーム内のなつき度をアップさせなければならない。そのために積極的に構ってみたり、メインの六匹の中に入れて連れ回したりしている。
「進化前も可愛いんだけど、進化後もいいんだよな」
癒し系のピンク色の丸いボディがなんとも可愛らしい。進化すると天使の羽が生えて、さらに可愛くなる。
ニックネームは「さくやくん」だ。冬麻はメインキャラには大抵ニックネームを付けてプレイしている。この子はイチ推しだから、久我朔夜の名前からそっくりそのままいただいた名前にした。
「ほーら、さくや。ごはんの時間だぞ~」
冬麻はなつき度アップのためのとっておきの木の実を与える。レアなアイテムだが、この子だけは特別可愛がっているので惜しくはない。
ポケ◯ンもそうだが、恋人だって大切な相棒だ。愛情を向けて大切にして、いつも隣にいるべきだ。
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『ごめん、冬麻、今日は仕事で遅くなるから夕飯は要らない』
久我からの連絡を受けて、いそいそと料理をしていた手が止まった。
なんとなく予想はできていた。取引先の西野社長に会うときは大抵そのあと食事にも付き合うことになる。そのためわざわざ久我は予定を空けておくくらいに周到だ。
『かしこまりました。送迎は櫂堂さんですよね?』
冬麻も運転免許は取ったが、送迎は基本的に久我のもうひとりの秘書・櫂堂の担当になっている。元タクシードライバーだった櫂堂は都内の抜け道も詳しいし、運転も慣れたものだからだ。
『冬麻。これは業務連絡じゃないよ。どうしてそんなに他人行儀なの?』
久我に指摘されて気がついた。そうだった。今まで久我が用意してくれていたから、夕食を食べる食べないの連絡なんてもらったことがなく、勘違いしていた。
『そうでしたね。すみません。夕食の件、了解いたしました』
メールを送ってから、文面が固かったなと少し後悔したが、まぁ内容が伝わればいいだろうと思い直す。
問題は、目の前にある作りかけの料理たちだ。
さっきまで張り切ってたのに、久我が食べないと知った瞬間に一気にやる気が削ぎれてしまった。このために今日もひとり早めに帰宅したのに。
「久我さんは、俺より付き合いを選ぶんだな」
久我の予定が空いていたのは、西野社長に高頻度で食事に誘われる可能性があるからだ。そんなことは秘書で久我の予定を把握しきっている冬麻にはわかっているが、なんとなく愚痴をこぼしたくなった。
「やめたっ! やめやめ!」
冬麻はキッチンに並んだ食材たちをザッと眺めて、冷蔵庫に戻せるものは戻して、残りは炒めて自分の夕食にする。自分ひとり分なのに、凝った料理なんて作りたくなかった。
適当な夕食を終わらせ、のんびり湯船に浸かり、それでも時間が余ったのでリビングのソファーでいつものゲームをしながら久我の帰宅を待つ。
「早く帰ってきてよ……」
冬麻は待ちきれず、そのままソファーでうたた寝してしまった。
「あれ……?」
気がつくと、冬麻はベッドの上だった。ここは自分の部屋だ。
ソファーでゲームをしていたはずが、いつの間にか自分の部屋にいて、しっかり布団をかけられベッドの中にいる。深夜だったはずなのに外はすでに明るい。
「久我さん……?」
せっかく起きて久我の帰りを待っていたかったのに、眠ってしまったようだ。きっと、冬麻をここまで運んだのは久我に違いない。思い出してみると、なんとなく久我に運ばれた気がする。
でも、いつもなら寝てしまっても久我のベッドに運んでくれるのに。
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