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74.良い知らせと悪い知らせ
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「そうだ。冬麻にいいお知らせがある。グラビティのM&Aが決まったよ」
「よかったですね!」
色々あったからその後どうなったか気になっていた。上手くいったのならなによりだ。
「経営権は俺が持って、実際に経営に深く関与する。三島社長は立場上は経営者ではなくなるけど彼の思うような方針で経営ができたらなとは思っている。今は従業員の待遇の細かいすり合わせをしてるよ。残りたい人は全員、俺の会社の社員になってもらうんだけど、給与体系が変わるから、できるだけ損のないようにしなきゃね」
「そうですね……」
「これを機にインセンティブを増やそうかと思ってる。基本給の他に、報奨金を貰えるチャンスを増やせば社員のモチベーション向上にもなると思うし、M&Aによる多少の給与の差異を埋めるために利用することもできる」
「秘書課もインセンティブが貰えるチャンスがあるんですか?」
「えっ……」
久我が目をしばたかせている。
「か、考えておくよ」
「久我さん? どうしたんですか?」
急に様子がおかしくなった……? 久我はどうしたのだろう。
「なんでもない。社長としてあるまじきよからぬことを考えた。冬麻を秘書にしたとき、俺は他の社員と公平に扱うと決めたんだ。でも本音を言うと冬麻を特別扱いしたい。……いや、でも俺からしたら冬麻がそばにいてくれることで俺の仕事はかなりはかどってる。つまり会社経営の効率を上げることに冬麻は大いに貢献しているんだから、最高のインセンティブを与えてもおかしくないと思う。そう考えれば特別扱いにはならない……?」
「い、いやあの……是非、櫂堂さんに相談してください……」
冬麻の評価が異常によかったらきっとそれは実力ではなく、社長の仕業だと思うことにしよう。
「うわっ。これ可愛いですね!」
メインの食事が終わり、最後にハッピーバースデーと文字の描かれたデザートプレートが冬麻の目の前に置かれる。イチゴなどの季節のフルーツに、フォンダンショコラやバニラアイス。モンブランタルト、クレームブリュレなど冬麻の好きなものが映える感じで盛られている。
「どうだろう。冬麻の好きなものだけになるように少し無理を言って用意してもらったんだけど」
「はい! 完璧です!」
久我の冬麻リサーチ力は最強だ。冬麻の好物は全部把握しているんじゃないかと思う。
遠慮なくデザートプレートに手をつけて、甘々を堪能しているとき、久我の視線を感じて冬麻は顔を上げる。
久我は紅茶を飲みつつ冬麻を眺めてひとり満足そうだ。
「——なんですか? ニヤニヤして」
「え? なんでもないよ。ただ幸せなだけ」
まったく。久我はさっきから顔が緩みっぱなしだ。それでもイケメンなのが憎らしい。
「もう……」
秘書にこんなにデレデレしてたらおかしいだろと思うのに、冬麻も冬麻でさっきから自慢の恋人に惚れ惚れしているので文句は言えない。
久我は本当にかっこいい。あーもう見ていて好きの二文字しか浮かばない。今すぐ抱きつきたいくらいに大大大好きだ。
「冬麻。来週から俺、海外出張なんだけどさ」
「そうでしたね……」
思い出した。冬麻が全てのチケットを手配したのだから旅程も把握している。来週は一週間ほど久我とは離れ離れになるのか。
「俺、久我さんに電話かけてもいいですか? フランスとの時差はどのくらいでしたっけ……」
「マイナス7時間。東京が深夜十二時ならパリは夕方の十七時だ」
「その頃久我さんはまだお仕事中ですね……。じゃあ俺は早起きします。そしたら夜に俺と電話で話してくれますか?」
マイナス7時間なら、五時に起きれば夜十時の久我と話ができる。それならお互いに負担が少ないのではないか。
「冬麻。それはできないな……」
久我は難しい顔になる。
「そ、そうですね。レストランの営業時間が終わってから話をしたりすることもあるかもですね……。な、なんでもないです、忘れてください……」
レストランが終わるのが夜の十時くらいだ。久我の仕事はきっと深夜にまで及ぶのだろう。
電話がダメならメールもあるし、会えないのもせいぜい一週間。別に大したことじゃないと冬麻は自分に言い聞かせる。
「よかったですね!」
色々あったからその後どうなったか気になっていた。上手くいったのならなによりだ。
「経営権は俺が持って、実際に経営に深く関与する。三島社長は立場上は経営者ではなくなるけど彼の思うような方針で経営ができたらなとは思っている。今は従業員の待遇の細かいすり合わせをしてるよ。残りたい人は全員、俺の会社の社員になってもらうんだけど、給与体系が変わるから、できるだけ損のないようにしなきゃね」
「そうですね……」
「これを機にインセンティブを増やそうかと思ってる。基本給の他に、報奨金を貰えるチャンスを増やせば社員のモチベーション向上にもなると思うし、M&Aによる多少の給与の差異を埋めるために利用することもできる」
「秘書課もインセンティブが貰えるチャンスがあるんですか?」
「えっ……」
久我が目をしばたかせている。
「か、考えておくよ」
「久我さん? どうしたんですか?」
急に様子がおかしくなった……? 久我はどうしたのだろう。
「なんでもない。社長としてあるまじきよからぬことを考えた。冬麻を秘書にしたとき、俺は他の社員と公平に扱うと決めたんだ。でも本音を言うと冬麻を特別扱いしたい。……いや、でも俺からしたら冬麻がそばにいてくれることで俺の仕事はかなりはかどってる。つまり会社経営の効率を上げることに冬麻は大いに貢献しているんだから、最高のインセンティブを与えてもおかしくないと思う。そう考えれば特別扱いにはならない……?」
「い、いやあの……是非、櫂堂さんに相談してください……」
冬麻の評価が異常によかったらきっとそれは実力ではなく、社長の仕業だと思うことにしよう。
「うわっ。これ可愛いですね!」
メインの食事が終わり、最後にハッピーバースデーと文字の描かれたデザートプレートが冬麻の目の前に置かれる。イチゴなどの季節のフルーツに、フォンダンショコラやバニラアイス。モンブランタルト、クレームブリュレなど冬麻の好きなものが映える感じで盛られている。
「どうだろう。冬麻の好きなものだけになるように少し無理を言って用意してもらったんだけど」
「はい! 完璧です!」
久我の冬麻リサーチ力は最強だ。冬麻の好物は全部把握しているんじゃないかと思う。
遠慮なくデザートプレートに手をつけて、甘々を堪能しているとき、久我の視線を感じて冬麻は顔を上げる。
久我は紅茶を飲みつつ冬麻を眺めてひとり満足そうだ。
「——なんですか? ニヤニヤして」
「え? なんでもないよ。ただ幸せなだけ」
まったく。久我はさっきから顔が緩みっぱなしだ。それでもイケメンなのが憎らしい。
「もう……」
秘書にこんなにデレデレしてたらおかしいだろと思うのに、冬麻も冬麻でさっきから自慢の恋人に惚れ惚れしているので文句は言えない。
久我は本当にかっこいい。あーもう見ていて好きの二文字しか浮かばない。今すぐ抱きつきたいくらいに大大大好きだ。
「冬麻。来週から俺、海外出張なんだけどさ」
「そうでしたね……」
思い出した。冬麻が全てのチケットを手配したのだから旅程も把握している。来週は一週間ほど久我とは離れ離れになるのか。
「俺、久我さんに電話かけてもいいですか? フランスとの時差はどのくらいでしたっけ……」
「マイナス7時間。東京が深夜十二時ならパリは夕方の十七時だ」
「その頃久我さんはまだお仕事中ですね……。じゃあ俺は早起きします。そしたら夜に俺と電話で話してくれますか?」
マイナス7時間なら、五時に起きれば夜十時の久我と話ができる。それならお互いに負担が少ないのではないか。
「冬麻。それはできないな……」
久我は難しい顔になる。
「そ、そうですね。レストランの営業時間が終わってから話をしたりすることもあるかもですね……。な、なんでもないです、忘れてください……」
レストランが終わるのが夜の十時くらいだ。久我の仕事はきっと深夜にまで及ぶのだろう。
電話がダメならメールもあるし、会えないのもせいぜい一週間。別に大したことじゃないと冬麻は自分に言い聞かせる。
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