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64.耐えなければ
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「いい? 身体に触るよ?」
梶ヶ谷が冬麻の身体を両腕で抱き締めた。恋人にするように優しく、少し艶めかしく。
抱き締められてわかる。ものすごく嫌だ。梶ヶ谷と触れ合っているだけで耐えられない。背中を優しく撫でられても気持ちが悪いとしか思えない。
「逃げないんだ。ちゃんと俺に抱かれる覚悟してきたんだね。可愛いなぁ」
梶ヶ谷は冬麻の髪を撫でる。それから冬麻は梶ヶ谷に身体を触れられるがままだ。
それに身を固くして耐える。人形のように感情を殺し、何も感じないようにしていたのに、梶ヶ谷の手でいやらしく尻を撫で回されたとき、堪えきれずに涙が溢れてきた。
「えっ?! 冬麻くん泣いてるの?!」
スンスン鼻を啜っていたら、梶ヶ谷に気づかれた。
「ちょっと待ってよ、まだ俺何もしてないけど?」
梶ヶ谷の言うとおりだ。ちょっと触られたくらいで泣くなんて自分はどうかしている。こんな状態でこれから梶ヶ谷にされることに耐えられるのだろうか。
「やばい」
梶ヶ谷は冬麻を顔を覗き込み、冬麻の涙に指で触れた。
「その泣き顔、マジでそそられるわ。ねぇ、写真撮っていい?」
冬麻は強く首を横に振る。嫌に決まっているのに、そんなことをさらっという梶ヶ谷はとんでもなく意地が悪い。
「これ、久我くんが見たら発狂すんじゃねぇ? やっば。俺、興奮してきたわ」
梶ヶ谷は躊躇なく冬麻のシャツのボタンに手をかけた。三つボタンを外したあと、梶ヶ谷は乱暴にシャツを引っ張り、冬麻の首筋の肌を露わにし、そこへ唇を当てて吸いついてくる。
「いっ……た……!」
やめて欲しくて冬麻が手を出したら、梶ヶ谷にその手を捕まれ、両手首をドアに押さえつけられ、抵抗ができない。
「あっ……!」
梶ヶ谷は冬麻の首筋に、キスをして吸いつき、アザをつけようとしている。
冬麻が嫌がるからしないと、久我にもされたことないのに。
「やだぁ……!」
冬麻が嫌がり身をよじっても、梶ヶ谷はやめてくれなかった。
梶ヶ谷がやっと離れたあと、壁に備え付けてある鏡に映った自分を見ると、誤魔化せないくらいにくっきりアザができている。
「ひどい……」
「これが消えるまでは久我くんの前で服を脱ぐことはできないね。理由をつけてセックスは断りなよ。久我くんもしばらくはお預けくらうのか。ざまぁみろだな」
さっきからの梶ヶ谷の言動がおかしい。まるで冬麻が久我の恋人だととっくに気がついているような喋りだ。
「まぁ、恋人同士ならキスマくらいつけるよね? 久我くんにも散々つけられてんじゃないの?」
「だから、久我さんとは何の関係も——!」
「嘘だ」
梶ヶ谷は冬麻の言葉を遮った。
「間違いない。久我くんが最も大事にしているものは君だよね? 初めて君と久我くんをホテルで見かけたときから怪しいなと思ってたんだ。君を見ているときの久我くんの顔。あんな顔をする久我くんを俺は初めて見た」
梶ヶ谷は、最初から久我と冬麻の仲を疑って、それで冬麻に近づいてきたのか。
「久我くんが君みたいな子を社長秘書にするのもおかしい。それで冬麻くんと話してみたら、久我くんと違って君には隙だらけ。俺が『久我くんが女連れてるのみたことない』って言ったら喜んじゃってるし、久我くんのことを社長と呼ばずに久我さんと呼んでみたり、冬麻くんは上手く誤魔化しているつもりなのかもしれないけど君は嘘が下手。あれじゃすぐにバレるよ」
「…………っ!」
梶ヶ谷にせめられ、冬麻は反撃の言葉が咄嗟にみつからない。
「久我くんとどれくらい付き合ってるの? 久我くんが指輪をし始めたのは二年くらい前だから、もしかして結構長い付き合いなんじゃない? 一緒に暮らしているみたいだから久我くんと身体の関係は当然あるんでしょ?」
梶ヶ谷は冬麻の腕をぐいっと引き、部屋の中へと連れ込む。ベッドのすぐそばまで来たら、ドンッと身体を押されて冬麻はベッドの上に倒れ込んだ。
「まぁいいや。とりあえずフェラ、お願いしてもいいかな?」
梶ヶ谷は冬麻の身体を引っ張り、自分の下半身へ冬麻の頭を近づけさせようとする。
「えっ! 無理っ……したことない……」
冬麻は梶ヶ谷の手を必死で振り払う。
「へっ? したことないってどういうこと? 久我くんにフェラしないの?」
「…………」
久我にそれをされたことは何度もある。でも自分からしたことはないし、久我にそれを強制されたことも、頼まれたことも一度もない。
「え? マジで?!」
冬麻が何も答えないことが、答えだと思ったようだ。梶ヶ谷は驚き、珍獣をみるかのような目で冬麻を見ている。
「久我くん、君にフェラもさせないの?! 待って、マジでびっくりなんだけど。二年も付き合ってるのにそういうの、まだないの?!」
「し、してもらったことは……」
言われて気がついた。男同士なのだから久我だけがやって、冬麻がやらないというのはおかしなことなのかもしれない。
「久我くん。君にご奉仕セックスしかしないってこと? 久我くんは、冬麻くんの嫌がることはしないタイプなんでしょ?」
「はい。絶対にしません……」
「うっわ。すっげ! 久我くんは本当に冬麻くんのこと大事にしてるんだね。これはやばいな……」
梶ヶ谷と久我の話をしているうちに、久我に会いたくなってきた。
そうだ。今日家に帰ったら、久我が戻るまで起きて待っていよう。それでお願いすれば冬麻のことを抱いてくれるに違いな……
駄目だ。梶ヶ谷に変な痕をつけられてしまったから、しばらくの間は久我とはできない。梶ヶ谷に触られた部分が気持ち悪いから早く忘れるためにも久我に触れて欲しかったのに。
「じゃあフェラはとっておこう。だって冬麻くんのお口はバージンなんだもんね? 後でゆっくりやり方を俺が教えてあげるよ。久我くんより先に冬麻くんを犯せるの、たまんねぇな! あいつ相当悔しがるだろうな!」
何がそんなに嬉しいのか梶ヶ谷はバカ笑いしている。
ニヤついた顔で、梶ヶ谷もベッドに上がった。ふたり分の重みでベッドがギシリと軋んだ音を立てた。
「冬麻くんは偉いねぇ。久我くんのために、俺に抱かれにきたんだもんね?」
梶ヶ谷が迫ってくる。
駄目だ。怖い。嫌だ。自分でここまできたくせに、今すぐ走って逃げ出したい。
梶ヶ谷が冬麻の身体を両腕で抱き締めた。恋人にするように優しく、少し艶めかしく。
抱き締められてわかる。ものすごく嫌だ。梶ヶ谷と触れ合っているだけで耐えられない。背中を優しく撫でられても気持ちが悪いとしか思えない。
「逃げないんだ。ちゃんと俺に抱かれる覚悟してきたんだね。可愛いなぁ」
梶ヶ谷は冬麻の髪を撫でる。それから冬麻は梶ヶ谷に身体を触れられるがままだ。
それに身を固くして耐える。人形のように感情を殺し、何も感じないようにしていたのに、梶ヶ谷の手でいやらしく尻を撫で回されたとき、堪えきれずに涙が溢れてきた。
「えっ?! 冬麻くん泣いてるの?!」
スンスン鼻を啜っていたら、梶ヶ谷に気づかれた。
「ちょっと待ってよ、まだ俺何もしてないけど?」
梶ヶ谷の言うとおりだ。ちょっと触られたくらいで泣くなんて自分はどうかしている。こんな状態でこれから梶ヶ谷にされることに耐えられるのだろうか。
「やばい」
梶ヶ谷は冬麻を顔を覗き込み、冬麻の涙に指で触れた。
「その泣き顔、マジでそそられるわ。ねぇ、写真撮っていい?」
冬麻は強く首を横に振る。嫌に決まっているのに、そんなことをさらっという梶ヶ谷はとんでもなく意地が悪い。
「これ、久我くんが見たら発狂すんじゃねぇ? やっば。俺、興奮してきたわ」
梶ヶ谷は躊躇なく冬麻のシャツのボタンに手をかけた。三つボタンを外したあと、梶ヶ谷は乱暴にシャツを引っ張り、冬麻の首筋の肌を露わにし、そこへ唇を当てて吸いついてくる。
「いっ……た……!」
やめて欲しくて冬麻が手を出したら、梶ヶ谷にその手を捕まれ、両手首をドアに押さえつけられ、抵抗ができない。
「あっ……!」
梶ヶ谷は冬麻の首筋に、キスをして吸いつき、アザをつけようとしている。
冬麻が嫌がるからしないと、久我にもされたことないのに。
「やだぁ……!」
冬麻が嫌がり身をよじっても、梶ヶ谷はやめてくれなかった。
梶ヶ谷がやっと離れたあと、壁に備え付けてある鏡に映った自分を見ると、誤魔化せないくらいにくっきりアザができている。
「ひどい……」
「これが消えるまでは久我くんの前で服を脱ぐことはできないね。理由をつけてセックスは断りなよ。久我くんもしばらくはお預けくらうのか。ざまぁみろだな」
さっきからの梶ヶ谷の言動がおかしい。まるで冬麻が久我の恋人だととっくに気がついているような喋りだ。
「まぁ、恋人同士ならキスマくらいつけるよね? 久我くんにも散々つけられてんじゃないの?」
「だから、久我さんとは何の関係も——!」
「嘘だ」
梶ヶ谷は冬麻の言葉を遮った。
「間違いない。久我くんが最も大事にしているものは君だよね? 初めて君と久我くんをホテルで見かけたときから怪しいなと思ってたんだ。君を見ているときの久我くんの顔。あんな顔をする久我くんを俺は初めて見た」
梶ヶ谷は、最初から久我と冬麻の仲を疑って、それで冬麻に近づいてきたのか。
「久我くんが君みたいな子を社長秘書にするのもおかしい。それで冬麻くんと話してみたら、久我くんと違って君には隙だらけ。俺が『久我くんが女連れてるのみたことない』って言ったら喜んじゃってるし、久我くんのことを社長と呼ばずに久我さんと呼んでみたり、冬麻くんは上手く誤魔化しているつもりなのかもしれないけど君は嘘が下手。あれじゃすぐにバレるよ」
「…………っ!」
梶ヶ谷にせめられ、冬麻は反撃の言葉が咄嗟にみつからない。
「久我くんとどれくらい付き合ってるの? 久我くんが指輪をし始めたのは二年くらい前だから、もしかして結構長い付き合いなんじゃない? 一緒に暮らしているみたいだから久我くんと身体の関係は当然あるんでしょ?」
梶ヶ谷は冬麻の腕をぐいっと引き、部屋の中へと連れ込む。ベッドのすぐそばまで来たら、ドンッと身体を押されて冬麻はベッドの上に倒れ込んだ。
「まぁいいや。とりあえずフェラ、お願いしてもいいかな?」
梶ヶ谷は冬麻の身体を引っ張り、自分の下半身へ冬麻の頭を近づけさせようとする。
「えっ! 無理っ……したことない……」
冬麻は梶ヶ谷の手を必死で振り払う。
「へっ? したことないってどういうこと? 久我くんにフェラしないの?」
「…………」
久我にそれをされたことは何度もある。でも自分からしたことはないし、久我にそれを強制されたことも、頼まれたことも一度もない。
「え? マジで?!」
冬麻が何も答えないことが、答えだと思ったようだ。梶ヶ谷は驚き、珍獣をみるかのような目で冬麻を見ている。
「久我くん、君にフェラもさせないの?! 待って、マジでびっくりなんだけど。二年も付き合ってるのにそういうの、まだないの?!」
「し、してもらったことは……」
言われて気がついた。男同士なのだから久我だけがやって、冬麻がやらないというのはおかしなことなのかもしれない。
「久我くん。君にご奉仕セックスしかしないってこと? 久我くんは、冬麻くんの嫌がることはしないタイプなんでしょ?」
「はい。絶対にしません……」
「うっわ。すっげ! 久我くんは本当に冬麻くんのこと大事にしてるんだね。これはやばいな……」
梶ヶ谷と久我の話をしているうちに、久我に会いたくなってきた。
そうだ。今日家に帰ったら、久我が戻るまで起きて待っていよう。それでお願いすれば冬麻のことを抱いてくれるに違いな……
駄目だ。梶ヶ谷に変な痕をつけられてしまったから、しばらくの間は久我とはできない。梶ヶ谷に触られた部分が気持ち悪いから早く忘れるためにも久我に触れて欲しかったのに。
「じゃあフェラはとっておこう。だって冬麻くんのお口はバージンなんだもんね? 後でゆっくりやり方を俺が教えてあげるよ。久我くんより先に冬麻くんを犯せるの、たまんねぇな! あいつ相当悔しがるだろうな!」
何がそんなに嬉しいのか梶ヶ谷はバカ笑いしている。
ニヤついた顔で、梶ヶ谷もベッドに上がった。ふたり分の重みでベッドがギシリと軋んだ音を立てた。
「冬麻くんは偉いねぇ。久我くんのために、俺に抱かれにきたんだもんね?」
梶ヶ谷が迫ってくる。
駄目だ。怖い。嫌だ。自分でここまできたくせに、今すぐ走って逃げ出したい。
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