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46.二年三ヶ月
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「冬麻。明日も仕事だし、もう寝よう?」
「いいえ。久我さんは先に寝てください。俺はこの仕事が終わったら寝ますから」
まったくこの甘やかしの冬麻の恋人は仕事の邪魔ばかりする。
秘書課に配属になったばかりの冬麻は慣れないことばかりだ。しかしいつまでも新人扱いでは駄目だと、先輩秘書の櫂堂から任された仕事を完璧にこなしてみせると躍起になっている。
冬麻が任されたのは久我のヨーロッパ出張の際のホテルと飛行機などの手配だ。
成田空港からシャルル・ド・ゴール空港へ。パリ2泊。パリからリヨンまでのTGV(高速鉄道)。リヨン1泊。リヨン・サンテグジュペリ空港からバルセロナ空港へ。AVE(高速鉄道)の時刻に合わせてジローナ1泊。その後バルセロナに戻り1泊。日本へ帰るという一週間ほどの旅程となっている。
久我の仕事の予定が余裕を持ってこなせるようにタイムスケジュールしながら予約を取り付けている最中で、ここにミスがあっては久我の仕事に支障が出てしまうかもしれないと冬麻は細心の注意を払っている。
「冬麻。パリのホテルはここがいい。前に泊まったときに良かったんだ」
久我は冬麻の仕事に横やりを入れてきた。せっかく極上のホテルを見つけて予約しようと思っていたのに。久我に「冬麻、さすがだね!」と言ってもらえるような。
「わかりました。社長がご希望ならそちらを予約します」
「うん。あとは? 何の予約を取りたいの? 鉄道のチケットは俺が予約するよ」
「いいえ! 俺がやります。社長は先に寝ててくださいっ」
きっと久我が予約したほうが何もかも正確で速いのだろう。そんなことはわかっているけれど、どうしても譲りたくなかった。
「冬麻。今はふたりで家にいるんだ。せめて俺の名前を呼んでよ……」
「すみません。余裕がなくて気がつきませんでした。以後気をつけますので」
あー! 気が散るな! さっさとひとりで寝てくれよ。今夜中に終わらせたいのに。
「冬麻……」
久我からの視線が邪魔だ。どうせ能力のない冬麻に対する同情の目なのだろうから。
「俺、先に寝室に行くけど、困ったことがあればいつでも言って。冬麻を助けた——」
「必要ないですから! おやすみなさい!」
久我に頼るわけにはいかない。秘書なのに社長に補佐されるなんて駄目に決まってる。
早く役に立てるようにならなければ。
冬麻はひとり、社長室の前の秘書デスクでパソコンに向かい合いながら業務をこなしている。いつも隣にいる櫂堂は不在。そんな時に電話が鳴ったため、冬麻は2コールで素早く受話器を取った。
『ミクリヤHD(ホールディングス)の梶ヶ谷だけど』
ミクリヤHDの名前は聞いたことがある。久我の会社と並ぶくらいの規模をもつ同業者だ。
「はい。梶ヶ谷さまでいらっしゃいますね。……はい……はい……承知いたしました」
梶ヶ谷という人が、久我との面会を希望しているようだ。随分とフランクな喋りだから、久我と親しい間柄なのかもしれない。
だが櫂堂が作製してくれた、主要な久我の取り引き相手名簿には載っていない。いったい誰だ……?
『久我くんには、明後日のRTGグループの創立記念パーティーで会えると思ってるんだけど、そのあとの時間、空いてる?』
明後日のパーティー後、久我の仕事の予定はないことは、冬麻は知っている。その日はパーティーのあとふたりで会う約束になっていたから。
パーティー会場がRTGの最上ランクのホテルだと知った冬麻が「そのホテル知ってます! 一回泊まってみたいんですよね」となにげなく言ったら、「じゃあふたりで泊まろう」と久我がその日の夜のホテルの部屋をおさえたらしい。
そんな冬麻の世間話みたいなひと言で決まった予定だし、ああいうパーティーのあとはきっとたくさんのビジネスチャンスが転がっているのではないかと思った。
「久我に確認いたします」
いったん保留にして、すぐ久我に電話をする。だが、久我は着信には反応なしだ。
——まぁ、いいか。どうせ俺との約束だし。
相手は名のある企業だ。それに久我にどうするか確認したらせっかくのビジネスチャンスをふいにして、冬麻との約束を優先してしまうのではないか。
久我の足手まといにはなりたくないのに。
「梶ヶ谷さま。明後日のパーティーのあと久我は特に予定はないとのことで、梶ヶ谷さまとのアポイントメントを取りました」
こんな勝手なことをしたら、久我に「仕事じゃなくて冬麻と一緒にいたかった」と文句を言われるのだろうか。
『え! 本当に?! ありがとう! 楽しみにしていると久我くんに伝えてよ』
「かしこまりました」
梶ヶ谷は喜んでいるし、別にその日にふたりが会えなくなるわけじゃない。梶ヶ谷との仕事のぶん、会える時間が減るだけだ。
最近は仕事でも家でも久我と会っているので、そのくらい別に大したことじゃない。
「梶ヶ谷常務との約束を勝手に決めたんですか?!」
戻ってきた櫂堂は、冬麻の独断に驚いたようだ。
たしかに本人の確認なしに約束を取りつけるなんておかしなことだと冬麻もわかってはいる。
「はい……すみません……」
「駄目ですよ。しかも冬麻さま……二ノ坂さんとの予定は社長にとって絶対なんです。最優先事項ですから。そこに予定を入れたりしたら、社長に激怒されますよ?!」
そうだったのか……。たしかに久我と約束をして、約束を破られたことなど一度もない。
「二ノ坂さんご本人に言うのも変ですが、二度とこのようなことはなさらないようにしてくださいね!」
「はい……」
「二ノ坂さんは自覚が足らない!」
櫂堂に叱責され、冬麻が肩を縮こませていた時だった。
「どうした?!」
戻ってきた久我がふたりの様子をみるなり心配そうに駆け寄ってきた。
「社長。二ノ坂さんが、明後日のパーティーのあとに社長と梶ヶ谷常務との面会の予定を勝手に決めてしまったんです」
「二ノ坂くんが?!」
久我の視線がこちらに向けられる。櫂堂はことの成り行きを久我に説明している。
「社長どうしますか? 今からでもキャンセルしましょうか……」
「いや、このままでいい。櫂堂もあまり声を荒立てるな。二ノ坂くん。大丈夫だよ。きっと二ノ坂くんなりの考えがあってのことだよね?」
「はい……」
久我はいつだって優しい。仕事でもプライベートでも、冬麻のことを責めることなどしない。
「二ノ坂くん。嫌じゃなければ俺に理由を話してくれないか?」
冬麻は頷いた。
「俺を優先しないで欲しいんです」
社長室に入ってすぐに、冬麻は久我に本音をぶつけた。
「企業パーティーの後はビジネスチャンスなんでしょう? そういう大切なものを俺との約束なんかで駄目にしないで欲しいです」
久我は今まで冬麻を優先するために、ビジネスチャンスをいくつも逃しているのではないか。
「もし、俺との先約があっても後から仕事を入れてもいいですから。俺もそのほうが気が楽です」
付き合いも長いのだから、仕事を理由に約束をキャンセルされても全然気にしない。久我は冬麻を優先しすぎるくらいなんだから。
「そういうことか。よかった……」
久我は冬麻を抱き締めてきた。冬麻の頭を胸に抱え込むようにして。
「冬麻に嫌われたのかと思ったよ……」
なんでそんなふうに思うんだ……?
「俺を避けるために、俺に会いたくないからデートの時間にアポを入れたんじゃなければそれでいい。梶ヶ谷との話のあとなら、冬麻は俺と一緒に過ごしてくれるんだよね?」
「はい……」
冬麻は久我の胸の中で頷き、久我の背中に両腕を回して冬麻も久我を抱き締める。
「それならいい。冬麻の言うとおり、俺、仕事も頑張るから。冬麻を最優先にしないようになるべく気をつけるから」
そうじゃない。久我はこれ以上ないくらいに仕事をしていると思っている。過労で倒れないか心配なくらいだ。
冬麻は久我の腕の中から抜け出した。
「違います! 久我さんは働きすぎなんです。だから俺は、少しでも久我さんが楽になるように手伝いたいんです!」
そのために秘書になりたいって思ったのに……。
久我を手伝うどころか、最近は自分がいることで足を引っ張ってしまっているのではないかと思えてならない。
早く一人前になりたいともがいてみるものの、優秀な秘書への道はほど遠い。
「冬麻……。俺のことをそんなふうに思ってくれてたんだ……嬉しいよ」
久我は冬麻の頭を撫でた。
「俺は冬麻がそばにいてくれるだけでいいんだ。それだけですごく頑張れる。仕事でイライラしてても冬麻がコーヒーを運んで来てくれるだけで全部吹っ飛んじゃうんだから。冬麻は最高の秘書だよ? 冬麻が秘書になってくれて、俺の機嫌が良すぎるから周りに変に思われないよう取り繕ってるくらいだ」
「そうですか……」
それじゃまるで、冬麻は置き人形みたいだ。そこにあるだけでなにもしない、ただ愛でられるだけの人形。
そんなものにはなりたくないのに。
「夕方からは櫂堂を連れて出かけてくる。冬麻、さっきは電話に出られなくてごめんね。今後はきちんと出るようにするから」
それも違う。なんで社長が秘書に気を遣うんだよ。冬麻が秘書になることで、またひとつ、またひとつと久我の負担が増えているのではないか。
「冬麻が仕事を頑張ってくれてるのは知ってるよ。でも、まだ始めたばかりの仕事なんだから、こんを詰め過ぎないようにね。頑張りすぎる前に、俺や櫂堂を頼るんだよ?」
なに言ってるんだ。それが最も嫌なことだ。なにがあっても久我だけは頼らない。
「いいえ。久我さんは先に寝てください。俺はこの仕事が終わったら寝ますから」
まったくこの甘やかしの冬麻の恋人は仕事の邪魔ばかりする。
秘書課に配属になったばかりの冬麻は慣れないことばかりだ。しかしいつまでも新人扱いでは駄目だと、先輩秘書の櫂堂から任された仕事を完璧にこなしてみせると躍起になっている。
冬麻が任されたのは久我のヨーロッパ出張の際のホテルと飛行機などの手配だ。
成田空港からシャルル・ド・ゴール空港へ。パリ2泊。パリからリヨンまでのTGV(高速鉄道)。リヨン1泊。リヨン・サンテグジュペリ空港からバルセロナ空港へ。AVE(高速鉄道)の時刻に合わせてジローナ1泊。その後バルセロナに戻り1泊。日本へ帰るという一週間ほどの旅程となっている。
久我の仕事の予定が余裕を持ってこなせるようにタイムスケジュールしながら予約を取り付けている最中で、ここにミスがあっては久我の仕事に支障が出てしまうかもしれないと冬麻は細心の注意を払っている。
「冬麻。パリのホテルはここがいい。前に泊まったときに良かったんだ」
久我は冬麻の仕事に横やりを入れてきた。せっかく極上のホテルを見つけて予約しようと思っていたのに。久我に「冬麻、さすがだね!」と言ってもらえるような。
「わかりました。社長がご希望ならそちらを予約します」
「うん。あとは? 何の予約を取りたいの? 鉄道のチケットは俺が予約するよ」
「いいえ! 俺がやります。社長は先に寝ててくださいっ」
きっと久我が予約したほうが何もかも正確で速いのだろう。そんなことはわかっているけれど、どうしても譲りたくなかった。
「冬麻。今はふたりで家にいるんだ。せめて俺の名前を呼んでよ……」
「すみません。余裕がなくて気がつきませんでした。以後気をつけますので」
あー! 気が散るな! さっさとひとりで寝てくれよ。今夜中に終わらせたいのに。
「冬麻……」
久我からの視線が邪魔だ。どうせ能力のない冬麻に対する同情の目なのだろうから。
「俺、先に寝室に行くけど、困ったことがあればいつでも言って。冬麻を助けた——」
「必要ないですから! おやすみなさい!」
久我に頼るわけにはいかない。秘書なのに社長に補佐されるなんて駄目に決まってる。
早く役に立てるようにならなければ。
冬麻はひとり、社長室の前の秘書デスクでパソコンに向かい合いながら業務をこなしている。いつも隣にいる櫂堂は不在。そんな時に電話が鳴ったため、冬麻は2コールで素早く受話器を取った。
『ミクリヤHD(ホールディングス)の梶ヶ谷だけど』
ミクリヤHDの名前は聞いたことがある。久我の会社と並ぶくらいの規模をもつ同業者だ。
「はい。梶ヶ谷さまでいらっしゃいますね。……はい……はい……承知いたしました」
梶ヶ谷という人が、久我との面会を希望しているようだ。随分とフランクな喋りだから、久我と親しい間柄なのかもしれない。
だが櫂堂が作製してくれた、主要な久我の取り引き相手名簿には載っていない。いったい誰だ……?
『久我くんには、明後日のRTGグループの創立記念パーティーで会えると思ってるんだけど、そのあとの時間、空いてる?』
明後日のパーティー後、久我の仕事の予定はないことは、冬麻は知っている。その日はパーティーのあとふたりで会う約束になっていたから。
パーティー会場がRTGの最上ランクのホテルだと知った冬麻が「そのホテル知ってます! 一回泊まってみたいんですよね」となにげなく言ったら、「じゃあふたりで泊まろう」と久我がその日の夜のホテルの部屋をおさえたらしい。
そんな冬麻の世間話みたいなひと言で決まった予定だし、ああいうパーティーのあとはきっとたくさんのビジネスチャンスが転がっているのではないかと思った。
「久我に確認いたします」
いったん保留にして、すぐ久我に電話をする。だが、久我は着信には反応なしだ。
——まぁ、いいか。どうせ俺との約束だし。
相手は名のある企業だ。それに久我にどうするか確認したらせっかくのビジネスチャンスをふいにして、冬麻との約束を優先してしまうのではないか。
久我の足手まといにはなりたくないのに。
「梶ヶ谷さま。明後日のパーティーのあと久我は特に予定はないとのことで、梶ヶ谷さまとのアポイントメントを取りました」
こんな勝手なことをしたら、久我に「仕事じゃなくて冬麻と一緒にいたかった」と文句を言われるのだろうか。
『え! 本当に?! ありがとう! 楽しみにしていると久我くんに伝えてよ』
「かしこまりました」
梶ヶ谷は喜んでいるし、別にその日にふたりが会えなくなるわけじゃない。梶ヶ谷との仕事のぶん、会える時間が減るだけだ。
最近は仕事でも家でも久我と会っているので、そのくらい別に大したことじゃない。
「梶ヶ谷常務との約束を勝手に決めたんですか?!」
戻ってきた櫂堂は、冬麻の独断に驚いたようだ。
たしかに本人の確認なしに約束を取りつけるなんておかしなことだと冬麻もわかってはいる。
「はい……すみません……」
「駄目ですよ。しかも冬麻さま……二ノ坂さんとの予定は社長にとって絶対なんです。最優先事項ですから。そこに予定を入れたりしたら、社長に激怒されますよ?!」
そうだったのか……。たしかに久我と約束をして、約束を破られたことなど一度もない。
「二ノ坂さんご本人に言うのも変ですが、二度とこのようなことはなさらないようにしてくださいね!」
「はい……」
「二ノ坂さんは自覚が足らない!」
櫂堂に叱責され、冬麻が肩を縮こませていた時だった。
「どうした?!」
戻ってきた久我がふたりの様子をみるなり心配そうに駆け寄ってきた。
「社長。二ノ坂さんが、明後日のパーティーのあとに社長と梶ヶ谷常務との面会の予定を勝手に決めてしまったんです」
「二ノ坂くんが?!」
久我の視線がこちらに向けられる。櫂堂はことの成り行きを久我に説明している。
「社長どうしますか? 今からでもキャンセルしましょうか……」
「いや、このままでいい。櫂堂もあまり声を荒立てるな。二ノ坂くん。大丈夫だよ。きっと二ノ坂くんなりの考えがあってのことだよね?」
「はい……」
久我はいつだって優しい。仕事でもプライベートでも、冬麻のことを責めることなどしない。
「二ノ坂くん。嫌じゃなければ俺に理由を話してくれないか?」
冬麻は頷いた。
「俺を優先しないで欲しいんです」
社長室に入ってすぐに、冬麻は久我に本音をぶつけた。
「企業パーティーの後はビジネスチャンスなんでしょう? そういう大切なものを俺との約束なんかで駄目にしないで欲しいです」
久我は今まで冬麻を優先するために、ビジネスチャンスをいくつも逃しているのではないか。
「もし、俺との先約があっても後から仕事を入れてもいいですから。俺もそのほうが気が楽です」
付き合いも長いのだから、仕事を理由に約束をキャンセルされても全然気にしない。久我は冬麻を優先しすぎるくらいなんだから。
「そういうことか。よかった……」
久我は冬麻を抱き締めてきた。冬麻の頭を胸に抱え込むようにして。
「冬麻に嫌われたのかと思ったよ……」
なんでそんなふうに思うんだ……?
「俺を避けるために、俺に会いたくないからデートの時間にアポを入れたんじゃなければそれでいい。梶ヶ谷との話のあとなら、冬麻は俺と一緒に過ごしてくれるんだよね?」
「はい……」
冬麻は久我の胸の中で頷き、久我の背中に両腕を回して冬麻も久我を抱き締める。
「それならいい。冬麻の言うとおり、俺、仕事も頑張るから。冬麻を最優先にしないようになるべく気をつけるから」
そうじゃない。久我はこれ以上ないくらいに仕事をしていると思っている。過労で倒れないか心配なくらいだ。
冬麻は久我の腕の中から抜け出した。
「違います! 久我さんは働きすぎなんです。だから俺は、少しでも久我さんが楽になるように手伝いたいんです!」
そのために秘書になりたいって思ったのに……。
久我を手伝うどころか、最近は自分がいることで足を引っ張ってしまっているのではないかと思えてならない。
早く一人前になりたいともがいてみるものの、優秀な秘書への道はほど遠い。
「冬麻……。俺のことをそんなふうに思ってくれてたんだ……嬉しいよ」
久我は冬麻の頭を撫でた。
「俺は冬麻がそばにいてくれるだけでいいんだ。それだけですごく頑張れる。仕事でイライラしてても冬麻がコーヒーを運んで来てくれるだけで全部吹っ飛んじゃうんだから。冬麻は最高の秘書だよ? 冬麻が秘書になってくれて、俺の機嫌が良すぎるから周りに変に思われないよう取り繕ってるくらいだ」
「そうですか……」
それじゃまるで、冬麻は置き人形みたいだ。そこにあるだけでなにもしない、ただ愛でられるだけの人形。
そんなものにはなりたくないのに。
「夕方からは櫂堂を連れて出かけてくる。冬麻、さっきは電話に出られなくてごめんね。今後はきちんと出るようにするから」
それも違う。なんで社長が秘書に気を遣うんだよ。冬麻が秘書になることで、またひとつ、またひとつと久我の負担が増えているのではないか。
「冬麻が仕事を頑張ってくれてるのは知ってるよ。でも、まだ始めたばかりの仕事なんだから、こんを詰め過ぎないようにね。頑張りすぎる前に、俺や櫂堂を頼るんだよ?」
なに言ってるんだ。それが最も嫌なことだ。なにがあっても久我だけは頼らない。
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