警護者キリュウ

どらんくうざ

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三十二才 本業の先輩の知識と竜の襲撃

06

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 三人で竜を包囲した。
三人の攻撃から竜が長大な尾で肩から上を狙いながら、身体を回転を始めた。
丁度頭と尾の位置関係が逆転する。

 もう一人の若い警護者の方に向いた頭が嚙みつこうと大顎を開けた。
その口腔内から下顎さらに喉元につながる首に対して口内に薙刀が差し込まれ切り裂いた。

 竜の体液などが武器を伝うのと同時に地面に落ちていく。
さらに傷口から湯気のような蒸気が立ち昇り始めた。

 キリュウは払われてきた尾を避けると、頑丈な鱗に剣を叩きつけ続けた。
丈夫な鱗への度重なる打撃により、剣の刃はボロボロになり始めた。

 前傾になった竜の前腕の振り上げた攻撃を武器ごと避けた名も知らない警護者。
その時に大音量の咆哮が響き渡った。
空いた腹側に潜り込んだミエナが武器で腹部を刺した格好になっていた。

 キリュウの視界に両翼が黄色に発光しているのが見えた。
さらに空気の流れが微妙に変わったように感じ始めた。
翼から北光が強くなった時に彼は顔に向けて跳躍して打撃を与えた。
人間の頭部ほどの大きさのある眼球へ。

 その直後、竜の体勢が大きく揺れたと思った彼の目の前で地面に潰れた。
竜の全身からやはり蒸気が立ち昇っている。
その竜の目には先ほどまでの輝きは見られなかった。

「倒したのか?」
「巡視長、そのようですね」

 共に交戦していた名を知らない警護者は発言した。
声の質で二人よりも若い男性だと分かった。

「ドウネル、竜の身体の計測が必要ね。それと」

 いつ戻ったのか分からないミエナは彼に命令した。
途中で言葉を区切った彼女は少し悩んだ様子だった。
キリュウ以外の二人は戦場の汚れはおろか、竜の体液などで汚れ切っていた。

「隊長、大丈夫ですよ」

 彼は朗らかに笑うと、走って隊舎に向かった。
暫くすると、警護者内の竜の計測係が共に来るだろう。

 退治した竜の身体測定をおこなって保存することになっていた。
後世への情報をもたらすためが行動の目的でもあった。

 「今回のは小型だったのかしら?
彼に聞いてみないと」
「そんな小さいのか?」

 キリュウは自分が発言したのにも気づかなかった。
頭で考えた思いが口をついて出てしまった様子であった。

「ドウネル、あっ彼ね。
研究室に籠っている事のある彼は竜の分析などにも詳しいのよ」

 警護者の対竜戦時の部隊編成は、人材の量に応じて編成が変わっていた。
リリポットは余裕がなかったようだけど都市ポロポロはその自由度が高かった。
つまり、都市では得手の武器の種類と能力から導き出された編成を取っていた。
キリュウはあの若い男は自分よりも遥かに戦闘でのセンスが高いと直に分かることになった。

「今回の奴は出現して四日も経たずに退治されたのよ。
それからいっても中型以上とは思えないわ」

 世界の土地を蹂躙して飛び回ると謂われる竜。
確かに其れから判断すると廃墟となったのは、この村とあともう一か所らしかった。
大型になると複数の都市が協力しないと対抗できないとされていた。

「これで雑多な部類の竜に入るのか」

 キリュウが竜の屍体に触れていると背中の方から声がしてきた。
振り向くと、隊舎の方角とは違った。
目を凝らしてみてみると、三人の負傷した部下達だった。
ただし、その内の一人は誰だか分からなかった。
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