警護者キリュウ

どらんくうざ

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三十二才 本業の先輩の知識と竜の襲撃

01

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 玄関の扉を蹴破った仲間の一人。
キリュウは一隊の仲間と室内に流れ込んだ。
合計、六人。
普段、捜査は二人でコンビを組んで行っていたが、今は目標の拠点への身柄を確保するための行動であった。

 目の前の人物が剣を構えて突進してきた。
攻撃を受け止めると、腹部に打撃を加えてから倒した。
確保すべき人間は計五人。
彼は素早く次の目標に向かおうとした。
しかし、奥から二人の人物が歩いてくる。

 片方は隊長。
もう片方は隊長に押される格好で両腕を後頭部に回して歩いてきた。
この拠点の頭目と思えた。

「何だよテメエ」

 剥げあがった敵の頭がキリュウを睨みつけ、殴ろうと始めた。
そこを隊長から押された状態で追い立てられた。
捕縛された相手の罵り言葉の中、漁村リリポットの詰め所まで全員を引っ立てていった。

「お前らの次の標的は何処?」

 キリュウは先輩の尋問を聞きながら、且つ聴取文を記述していた。
禿げあがった逮捕者はのらりくらりと会話を引き延ばしていた。
時たまの的を射たと思える発言も後で取り消すことも多かった。

 取調室には窓が一か所ある以外は殺風景であった。
警護者は、捜査上の行動単位である二名で基本的な聴取を行っていた。
その時の尋問の裏を取った後に、有罪が見込める場合は審判所に起訴していた。
もし見込みがない場合はそのまま釈放していることが多かった。
警護者の人員が足りないことからの判断であった。

「ガンヤ。
貴様のその戦法も飽き飽きしてきてるんだよ」

 キリュウは急に立ち上がると逮捕者の頭をテーブルの上に叩きつけた。
そこを先輩が止めに入った。
後輩のキリュウは先輩に一言の台詞をかけられると、彼は椅子に座った。

 キリュウは自分の思いが直接的な相手への苛立ちへの態度で出ているというのは常々感じていた。
何て来ない時は態度に出ないのに感じてもいた。
どうやったら、先輩のように立ち回れるのか悩んでいても、いざその場になると忘れてしまっていた。
それから、聴取文を書くことに戻った。

「お前さんも張り切る部下を持つと、大変だな?」

 キリュウはその発言も書き記す。
そして、警護者に就任してから十年は経つことを思い出していた。

 二、三年に数日間だけ都市ポロポロで、警護者としての訓練も行われていた。
それ以外の年は警護者の業務として、リリポットを出ることはなかった。
審判所での裁判に出廷した事は、一度しかなかった。
それもリリポット絡みでの裁判だった。

 キリュウは、"そろそろ新たな情報も出てこないんでは?"と思いを込めてサクヤ巡察を見た。
表立って先輩に逆らうと苛められそうだった。
名前からは女性に思えるが、しっかりした男性である。

「ガンヤ。
十日後にこの漁村での得たモノを売却する人物に会うんだな?」

「言ったかな。
次の標的が分からないと思ったら、他の線で攻めることにしたのか?」

 キリュウは、二人のやり取りを聞いた。
自分の振舞いに効果がないとわかってきていた。
しかし、彼は十日も待てなかった。
あと数日で自分の捜査の参加期限が切れてしまうからだった。

 本日の尋問が終わり、大した情報が得れなかった。
二人は逮捕者を牢に連れて行った。
本日の聴取の報告を巡察に上げなければいけなかった。
といっても、キリュウの相棒でもあるサクヤが彼らの直属のボスだったのだけど。
彼は今回の突入時の隊長でもあった。

「今度、ここリリポット内で巡視長をひとり、推薦することに決定した」

 キリュウは詰め所の隊長の言葉を聞く。
詰め所内に合計二十二人の警護者がいる。
捜査中は警護者に現役で勤めている人を招集することで人数を増やしていた。
普段はリリポットのような土地での常駐者は二から四人ほどであったのだけど。

「そこで今回キリュウ・ロンデロロッテン巡視を推すことに決めた。
今回の勤務が終わったら、都市ポロポロの警護者の分遣所に出るように」

 キリュウは不意を付かれて吃驚した。
自分は"隊長"に成るのを求めていたが、三十二才で可能性が生まれるとは思っていなかった。
意識の確認せずに、冷静に反応できる人材が就くようにとなっていた。
警護者を本業にしている人は、原則的に幹部であった。
そのため、通常の副業要員が就ける最高の階級は、巡視長であった。

 彼は震えが来たが、直に体の振動がおさめることができた。
十代の頃の恐怖心とかに取られる意識は、落ち着ききっていた。

「私、キリュウ・ロンデロロッテン巡視はサクヤ巡察の意向を受託いたします」

 彼は姿勢を正して隊長を正面から見据えた。
心の内面では、喜びとともにやる気が充足してくる気持が湧き上がってくる。

 狭い室内の警護者の詰め所。
夜間に全員を招集していた発表であった。
中の警護者達は全員が黒色の制服を着こんでおり、黒い多数の物が整然と屹立しているようにも見えた。
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