警護者キリュウ

どらんくうざ

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十五才 演劇と小さなバトル

01

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 金髪のひとりの少年が、入都の審査をパスして都市ポロポロに入った。
彼はこの地で生まれ育ったキリュウ。
実家へ久しぶりの帰省に対して父や祖母はどんな顔をするだろうかと彼は考えていた。

 都市は人口密度も高く活気に溢れていた。
彼の現在の生活圏の漁村のリリポットと比べてだったが。
大通りには商店が軒を連ねており、小道の中に入ると職人の工房を備えた住居も建っている。

 グリエンテッド地区を目指して都市を歩いていく。
街路には賑やかな話し声や遊んでいる子供たちの声が聞こえている。
さらには店頭に並んでいる食材からの匂い。

 彼の心は久しぶりの故郷に戻ってきた思いで一杯だった。
視界には都市の向こう側に島の中央部に聳える霊山が見えた。

 キリュウの実家はグリエンテッド地区の中央あたりにあった。
周囲には裕福とはいえないが、余裕のある家族が暮らしていた。
彼の家は、キリュウが自立してから父とケイ祖母の二人暮らしになっていた。

 久しぶりに見る長屋の実家。茶色の瓦屋根が葺かれており、窓が道側に設けられていた。
住居の奥には、こじんまりとした共同の庭がそなわっているのが彼の記憶にはあった。
そっくりの長屋の棟が建ち並んでいる。

「キリュウ」

 玄関から中年の男性が声をかけてくる。
彼の父親のラバウル。
彼は端正な顔つきと体格が立派であり、性格と相まって学生時代は人気があったらしかった。
しかし、今は彼の頭では白髪が固まってあり、少し縮んだように見えた。

「親父、ただいま」

 男性の息子のキリュウは少し顔を崩した。
それから玄関の方へ歩いていく。
その肩を父が制止させた。

「お前が帰ってこない間に母は老け込んでしまってな」

 父が小声でぼそりと喋った。
父の話では、年齢以上に心の支えがなくなったからだという話だった。

 父の話を聞いたケイの孫は玄関から中に入った。

 室内の椅子の上に背中が丸くなり座っている人がいる。
その人は父親は外、つまり祖母であるはずだった。

「ケイ婆や」

 キリュウは彼女の正面に回り込んで声をかけた。
その言葉が聞こえなかったのかボンヤリを座っているだけであった。
そこでキリュウは彼女の手を掴みながら身を乗り出した。

「ケイ婆や」

 その台詞を聞いた彼女は顔をあげて孫の方を見た。
最初は焦点が合わないようにふらふらとしていた。
暫くすると目と目があった。

「ああ、キリュウ。
今日も学院が終わったのかい?」

「リリポットで漁師をしているから、もう一人前だよ」

 彼女はその言葉を聞いて小さく返答した。
その発言に力強さが欠けており、彼の目には弱弱しくなってしまったように見えた。
今は夏なのに着ている服も厚着をしているようだった。

「で今回家に帰ってきたのは何か理由があるのか?
まさか特別な行事がないのに帰ってくるなんて思わなかったからからな」

 背後からの父からの質問に気軽に答えたキリュウ。
サナエが一度ポロポロに来た時にミエナの出演する演目を伝えてきていたのだった。
そのため、本来の目的は帰省ではなく彼女の演技を観にいくのが表向きの理由だった。
それを父とケイ祖母に伝えたキリュウ。

「久しぶりの家だからリラックスしてから、明日は市街でとってきた休みを楽しむ予定だよ」

 息子の返答を聞いた父は、そのまま居宅の玄関の扉を閉めた。

 一連の休みの一日目。

 ミエナは『レレット劇団』と名乗る劇団に在籍していた。
キリュウは、カエアから彼女の情報を仕入れていた。
渋々といった感覚をにおわせる文面の手紙をもらっていた。

 レレット劇団は、ポロポロのメメロー地区の一番大きな劇場の目玉の劇団。
というより、ポロポロだけでなくブルライドン地方でも指折りの有名な劇団であった。
そのため、この劇場で上演できることは名誉であることらしかった。
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