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十三才 漁師になってそれと事件
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「キリュウ、あなたの彼女?」
「ただの友人なので私は違います。
ちょっとリリポットまで出向いてきているんですわ」
ミエナは軽くお辞儀をしてから、舟に近づいた。
それから、舟の上の道具類を眺めてから手に取ろうとした。
「部外者が触るな」
師匠が強い口調で少女を怒鳴りつけた。
その言葉を聞いて手を引っ込めたミエナ。
彼女の顔は不満そうに唇を結んでいる。
キリュウは魚籠を彼女の前に出した。
師匠の様子を見ても特段変化はなかった。
「この背側が黒くてうっすらと鈍い色を発しているのが釣った魚なの?
触っていいの?」
ミエナは籠の高い位置にある魚を指差した。
もっとも多くの尾数が釣れたアジだった。
しかしキリュウは拒否したので少女は肩を落とした。
「売り物だからね。
触って傷んだりしたら問題だよ」
ミエナは一言返事をしてから、興味がなくなったように師匠に近づいた。
何か質問しているようだが、内容はキリュウには聞き取れなかった。
彼女はメモ帳を取り出してから真剣に筆記している様子であった。
「ミエナ何してるんだよ?」
「演技の際に役に立ちそうな情報の整理をおこなっているのよ。
あんたに訊いても聞いても埒が明かないだろうし、ね」
少女は彼の方に視線を向けると筆記をやめた。
懐にメモ帳をしまうと帰るタイミングまで合わせたいと伝えた。
キリュウは今日は漁業会の宿舎だと伝えると、彼女は今度は肩と頭を垂らした。
「せっかくポロポロから来たのに、これでは大した情報が得られないわ。
あ~あ、カエアちゃんの方の、捜査の仕方などの情報の方にしようかしら?」
キリュウはその言葉を聞いて、警護者のアクウさんとの捜査は順調にいってるか気になってきた。
ミエナの肩を掴むと力を込めた。
「俺が紹介したようなものだから、抜け駆けはいけないだろ。
直に捜査も進まないかもしれないけど、今日の帰りも向かうか」
キリュウが言葉の発語を強く切るようにした。
その直後にサナエが質問してきた。
「そういえば、何でキリュウって警護者に就きたかった?」
太めの体躯のサナエは腕を組んでいた。
彼は目をぱちぱち瞬いた後に地面に向けてぼそっと呟いた。
「聞こえないよ」女二人の声。
「力強い英雄だからね」
それは苦し紛れの意見に等しかった。
ミエナはうっすらと笑って、サナエは大笑いし始めた。
少年は頬が真っ赤に染まっていた。
「キリュウってこんな単純で馬鹿だった?」
「ええ、そうよ」
年齢の離れた女性二人は弾むように会話をはじめた。
他愛のない会話が続いているようで意気投合した感じだった。
ずんぐりした年増の女性と均整のとれた感じの少女。
「ミエナちゃん可愛いね」
その小母さんは心がここにあらずといった感じでキリュウに言ってきた。
いや、ただ単純に独り言の雰囲気であろうか。
そこに低い男性の声が浜辺に響いた。
その言葉によってこの寄り合いは、今日の成果の報告会となった。
「ミエナちゃん、今度いつ来る?」
ミエナは彼女の視線を受け止めて頬をそめつつ、“当分来ないわ”と返答している。
キリュウは、少女の肩を叩いた。
「いくよ」
「あ、分かったわ」
夕日が地面に差し込む影を背側にして、二人は警護者の詰め所に向かった。
村の出入り口と道路を挟んだ、その奥にある詰め所。
キリュウは行き交う人たちや風景を眺めることなく歩き続けた。
同学年のミエナが付いてくる。
ほとんど二人のペースは変わらず間隔も一定。
「今日、師匠から筋が良いと褒められたの知ってるか?
警護者になる間までの繋ぎにしようかとも思っててけど、このままの状態でいくかもな」
「ビギナーズラックよ」
彼は前のめりにつんのめりそうになった。
その場で踏みとどまり、少女の方を振り向いた。
そして顔面に指を突き出した。
「いちいち相手の気分を害してると、女優業のスキャンダルになるぞ。
それに、誰も彼氏になってくれないぞ」
彼女は呆けた顔をしてから、口角を持ち上げた。
キリュウの目の前で挑発的な笑顔を向ける。
「正直に真実を伝えたほうがいい時もあるでしょ?
それに彼氏っていうけど、私ね」
その時にミエナは言葉を切った。
それからキリュウの背後を指差した。
少年は背中側に視線を向けた。
太陽の沈みつつある道をひとりの少女が俯いて歩いてくる。
その足首ぐらいまでの青い髪は間違えようのない子──カエア。
「カエア」
その言葉を聞いた少女は顔を上げた。
目の周りが赤くなっており、泣いていたのだろう。
キリュウの幼馴染の少女は小さな声で話し始めた。
「今日、事件の被害者にあってきたの。
もう死んでいないと私は役に立てないだろうけど。
死んだ被害者の家族の人達もそうだけど、捜査線上にあがってる人への疑い眼差しも思うことがあったの。
もっとも、誰なのかは私には教えてくれなかったけど」
霊媒の修行中のカエアは、笑顔を向けた。
「ただの友人なので私は違います。
ちょっとリリポットまで出向いてきているんですわ」
ミエナは軽くお辞儀をしてから、舟に近づいた。
それから、舟の上の道具類を眺めてから手に取ろうとした。
「部外者が触るな」
師匠が強い口調で少女を怒鳴りつけた。
その言葉を聞いて手を引っ込めたミエナ。
彼女の顔は不満そうに唇を結んでいる。
キリュウは魚籠を彼女の前に出した。
師匠の様子を見ても特段変化はなかった。
「この背側が黒くてうっすらと鈍い色を発しているのが釣った魚なの?
触っていいの?」
ミエナは籠の高い位置にある魚を指差した。
もっとも多くの尾数が釣れたアジだった。
しかしキリュウは拒否したので少女は肩を落とした。
「売り物だからね。
触って傷んだりしたら問題だよ」
ミエナは一言返事をしてから、興味がなくなったように師匠に近づいた。
何か質問しているようだが、内容はキリュウには聞き取れなかった。
彼女はメモ帳を取り出してから真剣に筆記している様子であった。
「ミエナ何してるんだよ?」
「演技の際に役に立ちそうな情報の整理をおこなっているのよ。
あんたに訊いても聞いても埒が明かないだろうし、ね」
少女は彼の方に視線を向けると筆記をやめた。
懐にメモ帳をしまうと帰るタイミングまで合わせたいと伝えた。
キリュウは今日は漁業会の宿舎だと伝えると、彼女は今度は肩と頭を垂らした。
「せっかくポロポロから来たのに、これでは大した情報が得られないわ。
あ~あ、カエアちゃんの方の、捜査の仕方などの情報の方にしようかしら?」
キリュウはその言葉を聞いて、警護者のアクウさんとの捜査は順調にいってるか気になってきた。
ミエナの肩を掴むと力を込めた。
「俺が紹介したようなものだから、抜け駆けはいけないだろ。
直に捜査も進まないかもしれないけど、今日の帰りも向かうか」
キリュウが言葉の発語を強く切るようにした。
その直後にサナエが質問してきた。
「そういえば、何でキリュウって警護者に就きたかった?」
太めの体躯のサナエは腕を組んでいた。
彼は目をぱちぱち瞬いた後に地面に向けてぼそっと呟いた。
「聞こえないよ」女二人の声。
「力強い英雄だからね」
それは苦し紛れの意見に等しかった。
ミエナはうっすらと笑って、サナエは大笑いし始めた。
少年は頬が真っ赤に染まっていた。
「キリュウってこんな単純で馬鹿だった?」
「ええ、そうよ」
年齢の離れた女性二人は弾むように会話をはじめた。
他愛のない会話が続いているようで意気投合した感じだった。
ずんぐりした年増の女性と均整のとれた感じの少女。
「ミエナちゃん可愛いね」
その小母さんは心がここにあらずといった感じでキリュウに言ってきた。
いや、ただ単純に独り言の雰囲気であろうか。
そこに低い男性の声が浜辺に響いた。
その言葉によってこの寄り合いは、今日の成果の報告会となった。
「ミエナちゃん、今度いつ来る?」
ミエナは彼女の視線を受け止めて頬をそめつつ、“当分来ないわ”と返答している。
キリュウは、少女の肩を叩いた。
「いくよ」
「あ、分かったわ」
夕日が地面に差し込む影を背側にして、二人は警護者の詰め所に向かった。
村の出入り口と道路を挟んだ、その奥にある詰め所。
キリュウは行き交う人たちや風景を眺めることなく歩き続けた。
同学年のミエナが付いてくる。
ほとんど二人のペースは変わらず間隔も一定。
「今日、師匠から筋が良いと褒められたの知ってるか?
警護者になる間までの繋ぎにしようかとも思っててけど、このままの状態でいくかもな」
「ビギナーズラックよ」
彼は前のめりにつんのめりそうになった。
その場で踏みとどまり、少女の方を振り向いた。
そして顔面に指を突き出した。
「いちいち相手の気分を害してると、女優業のスキャンダルになるぞ。
それに、誰も彼氏になってくれないぞ」
彼女は呆けた顔をしてから、口角を持ち上げた。
キリュウの目の前で挑発的な笑顔を向ける。
「正直に真実を伝えたほうがいい時もあるでしょ?
それに彼氏っていうけど、私ね」
その時にミエナは言葉を切った。
それからキリュウの背後を指差した。
少年は背中側に視線を向けた。
太陽の沈みつつある道をひとりの少女が俯いて歩いてくる。
その足首ぐらいまでの青い髪は間違えようのない子──カエア。
「カエア」
その言葉を聞いた少女は顔を上げた。
目の周りが赤くなっており、泣いていたのだろう。
キリュウの幼馴染の少女は小さな声で話し始めた。
「今日、事件の被害者にあってきたの。
もう死んでいないと私は役に立てないだろうけど。
死んだ被害者の家族の人達もそうだけど、捜査線上にあがってる人への疑い眼差しも思うことがあったの。
もっとも、誰なのかは私には教えてくれなかったけど」
霊媒の修行中のカエアは、笑顔を向けた。
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