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プロローグ
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キリュウは振りおろされた木剣をかわした。
素早く木剣を突き出した。
その木剣に絡まるように相手の木剣がかかり彼の木剣方が弾き飛ばされた。
道場の床に木剣が落ちる音がする。
肩の前面に衝撃がくわわると同時に鳩尾にまで力が加わった。
それでキリュウは尻餅をついてしまう。
「見事だ、ミエナ」
師範のユージイ・バーステッドが彼の相方の少女を褒めた。
少女は同学年で背が高く、体型は女らしかった。
「ミエナ。もう一度勝負だ」
キリュウは下を見ながら叫んだ。
ミエナが笑ったようだったから彼は顔を上げた。
彼女は笑っていた。
それから、振り向き道場の壁の方に向かった。
彼は彼女と何度戦っても勝てなく、涙が出てきた。
ミエナから"剣術以外もあるわよ"と聞こえたような気がしていた。
「くそ」
「その意気込みがあるなら、私と勝負してみるか」
師範が彼の前に木剣を差し出した。
彼の澄んだ目を見たキリュウは唾を呑み込んだ。
「はい。
お願いします」
少年は木剣を手に掴むと立ち上がった。
「だからミエナの家系は有段者がおおいのよね。
それに成人している人のかなりの数が警護者でしょ?」
キリュウの幼馴染のカエアは、食事の席で言った。
彼女の首飾りは元々はリーディングルさんの家のものだった。
それを彼女は自分の母から譲り受けたのだろう。
「生まれが違うだなんていうのは弱虫の言い訳さ」
キリュウは言葉を吐き捨てると席を立って店舗の外に出ち、カエアを待った。
本日は都市を築いたコウヤ卿を祝う記念祭。
都市ができて百十三年であり、毎年夏に祝っていた。
都市に租税を納めている村落も含めての大々的な祭。
キリュウの正面の広場には人形の移動式の見世物小屋があり、人だかりができていた。
コウヤ卿は、かつてこの地方を我が物顔で活動していた盗賊団を壊滅させていた。
その頭目が飼っていた、巨大な鷲を退治する場面が公演されていた。
鷲に向かって弓を放つコウヤ卿。
「ごめんキリュウ君。
待った?」
カエアが公演を見ていた彼の意識を引き戻した。
親子連れや友人同士、カップルあるいは一人で来ている人達の喧騒が聞こえてくる。
「いや、たいして待ってないよ」
店舗の連なる大通りの上の道を横断するように垂れ幕が下がっていた。
住宅や店舗の窓からは、都市の旗印が出ていた。
二人で町中を歩き、巡る。
都市ポロポロは、普段と違い飾りつけもなされており珍しさが目についた。
大道芸もおこなわれており、人だかりもできてもいた。
素早く木剣を突き出した。
その木剣に絡まるように相手の木剣がかかり彼の木剣方が弾き飛ばされた。
道場の床に木剣が落ちる音がする。
肩の前面に衝撃がくわわると同時に鳩尾にまで力が加わった。
それでキリュウは尻餅をついてしまう。
「見事だ、ミエナ」
師範のユージイ・バーステッドが彼の相方の少女を褒めた。
少女は同学年で背が高く、体型は女らしかった。
「ミエナ。もう一度勝負だ」
キリュウは下を見ながら叫んだ。
ミエナが笑ったようだったから彼は顔を上げた。
彼女は笑っていた。
それから、振り向き道場の壁の方に向かった。
彼は彼女と何度戦っても勝てなく、涙が出てきた。
ミエナから"剣術以外もあるわよ"と聞こえたような気がしていた。
「くそ」
「その意気込みがあるなら、私と勝負してみるか」
師範が彼の前に木剣を差し出した。
彼の澄んだ目を見たキリュウは唾を呑み込んだ。
「はい。
お願いします」
少年は木剣を手に掴むと立ち上がった。
「だからミエナの家系は有段者がおおいのよね。
それに成人している人のかなりの数が警護者でしょ?」
キリュウの幼馴染のカエアは、食事の席で言った。
彼女の首飾りは元々はリーディングルさんの家のものだった。
それを彼女は自分の母から譲り受けたのだろう。
「生まれが違うだなんていうのは弱虫の言い訳さ」
キリュウは言葉を吐き捨てると席を立って店舗の外に出ち、カエアを待った。
本日は都市を築いたコウヤ卿を祝う記念祭。
都市ができて百十三年であり、毎年夏に祝っていた。
都市に租税を納めている村落も含めての大々的な祭。
キリュウの正面の広場には人形の移動式の見世物小屋があり、人だかりができていた。
コウヤ卿は、かつてこの地方を我が物顔で活動していた盗賊団を壊滅させていた。
その頭目が飼っていた、巨大な鷲を退治する場面が公演されていた。
鷲に向かって弓を放つコウヤ卿。
「ごめんキリュウ君。
待った?」
カエアが公演を見ていた彼の意識を引き戻した。
親子連れや友人同士、カップルあるいは一人で来ている人達の喧騒が聞こえてくる。
「いや、たいして待ってないよ」
店舗の連なる大通りの上の道を横断するように垂れ幕が下がっていた。
住宅や店舗の窓からは、都市の旗印が出ていた。
二人で町中を歩き、巡る。
都市ポロポロは、普段と違い飾りつけもなされており珍しさが目についた。
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