2 / 33
プロローグ
02
しおりを挟む
ガンジス兄が声をかけた。
目の前にひとつながりの塀に囲まれている墓地があった。
三人で墓地に入ると、整然と並べられた墓標が見える。
傍まで近寄ることなく名前と死亡年月日が刻印されているのは知っていた。
墓地は血筋ごとに区分けされており、彼らははある方へ向かった。
目指す場所は一番の奥まった地点であった。
時間を少しでも伸ばそうと考えてのことだった。
先頭の墓標より随分奥まったところにある地点。
そこにうっすらと青白い影のようなものが地面から出現している。
近づいていくと、その影は男児のように見えた。
『お兄さん方、何しに来たの?』
その青白い影の男児から聞こえてくるようだった。
もしかすると、昔に死んだ者の霊魂が現れた幽霊なのかもしれなかった。
「肝試しさ」
キリュウは絞り出すように声を出した。
続けてさらに言葉を続ける。
「警護者としてやっていけるか、試練になるからね」
青白い男児の幽霊はキリュウとカエアの間に割って入ると、彼女の首飾りに触れた。
それは赤い宝石が象嵌されていた。
その瞬間カエアは後ずさりした。
その様子を見たキリュウはガンジス兄の帯びていた小剣をとると、男児の幽霊に突きつけた。
「彼女に手を出すのは許さないぞ。
僕が相手になってやる」
「キリュウ君、私は大丈夫よ。
貴方の方が震えているんじゃないの?」
頭から血が引いた顔のカエアの言葉により、キリュウは自分の手を見た。
小剣を握った側の腕が震えている。そこで空いている方の手で支えた。
『お姉さん、この首飾りはどこで手に入れたの?』
「私の伯母さんから貰ったのよ」
男児の幽霊は彼らの中で一番背の高いガンジス兄の方を向いた。
彼は、両肩を上げてから下した。
"何もわからない"と言いたいのかもしれなかった。
「そんなことより早く霊山に戻れよ」
キリュウは小剣を左右に振るともう一度幽霊に突きつける。
幽霊は剣先を見てから触る。
そのまま少し時間が止まったような空気が流れた。
ガンジス兄が年下の三人のそばに近づいてきた。
といっても一人は幽霊かもしれないが。
「君は何て名前なんだい?」
『カズキ・リーディングル』
男児の幽霊は素直に返答した。
キリュウとカエアは顔を見合わせると、ガンジス兄に小剣を返した。
『僕はお姉さんの中に入らせてもらうね』
幽霊の一言により、カエアに触れた手が青白い輝きを出した。
そして、彼女の身体に溶け込んでいく。
するするといった感じではなく氷が溶解していく感じであった。
男児に入り込まれたカエアにキリュウは質問した。
返事は少しの問題を除き変化は見られないといった感じであった。
ひとつある問題としては急に体から自分の魂が追いやられた感じになるといったところらしかった。
次の休日の昼間に三人で会う日。
といっても、カエアは男児に入り込まれているから──憑依らしい──四人かもしれなかった。
「で、カエアちゃん。
俺たちをカズキ君の家に連れてってくれるのかい?」
ガンジス兄はカエアに尋ねた。
彼女は、首飾りの赤い宝石部分をのぞき込んでいるようだった。
「そう。
私についてきて」
目の前にひとつながりの塀に囲まれている墓地があった。
三人で墓地に入ると、整然と並べられた墓標が見える。
傍まで近寄ることなく名前と死亡年月日が刻印されているのは知っていた。
墓地は血筋ごとに区分けされており、彼らははある方へ向かった。
目指す場所は一番の奥まった地点であった。
時間を少しでも伸ばそうと考えてのことだった。
先頭の墓標より随分奥まったところにある地点。
そこにうっすらと青白い影のようなものが地面から出現している。
近づいていくと、その影は男児のように見えた。
『お兄さん方、何しに来たの?』
その青白い影の男児から聞こえてくるようだった。
もしかすると、昔に死んだ者の霊魂が現れた幽霊なのかもしれなかった。
「肝試しさ」
キリュウは絞り出すように声を出した。
続けてさらに言葉を続ける。
「警護者としてやっていけるか、試練になるからね」
青白い男児の幽霊はキリュウとカエアの間に割って入ると、彼女の首飾りに触れた。
それは赤い宝石が象嵌されていた。
その瞬間カエアは後ずさりした。
その様子を見たキリュウはガンジス兄の帯びていた小剣をとると、男児の幽霊に突きつけた。
「彼女に手を出すのは許さないぞ。
僕が相手になってやる」
「キリュウ君、私は大丈夫よ。
貴方の方が震えているんじゃないの?」
頭から血が引いた顔のカエアの言葉により、キリュウは自分の手を見た。
小剣を握った側の腕が震えている。そこで空いている方の手で支えた。
『お姉さん、この首飾りはどこで手に入れたの?』
「私の伯母さんから貰ったのよ」
男児の幽霊は彼らの中で一番背の高いガンジス兄の方を向いた。
彼は、両肩を上げてから下した。
"何もわからない"と言いたいのかもしれなかった。
「そんなことより早く霊山に戻れよ」
キリュウは小剣を左右に振るともう一度幽霊に突きつける。
幽霊は剣先を見てから触る。
そのまま少し時間が止まったような空気が流れた。
ガンジス兄が年下の三人のそばに近づいてきた。
といっても一人は幽霊かもしれないが。
「君は何て名前なんだい?」
『カズキ・リーディングル』
男児の幽霊は素直に返答した。
キリュウとカエアは顔を見合わせると、ガンジス兄に小剣を返した。
『僕はお姉さんの中に入らせてもらうね』
幽霊の一言により、カエアに触れた手が青白い輝きを出した。
そして、彼女の身体に溶け込んでいく。
するするといった感じではなく氷が溶解していく感じであった。
男児に入り込まれたカエアにキリュウは質問した。
返事は少しの問題を除き変化は見られないといった感じであった。
ひとつある問題としては急に体から自分の魂が追いやられた感じになるといったところらしかった。
次の休日の昼間に三人で会う日。
といっても、カエアは男児に入り込まれているから──憑依らしい──四人かもしれなかった。
「で、カエアちゃん。
俺たちをカズキ君の家に連れてってくれるのかい?」
ガンジス兄はカエアに尋ねた。
彼女は、首飾りの赤い宝石部分をのぞき込んでいるようだった。
「そう。
私についてきて」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる