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小さな怪獣くん③
しおりを挟む「おねぇちゃん、ぼくは父さまみたいにいっぱいスゴイことするからケッコンしてください!」
目の前に、白い草花を集めた緑の紙で包まれたブーケを持った、小さな探検家が現れた。もじもじとしている姿は可愛らしいが、とりあえず一緒に居る人はほっておいて、目線を可愛らしい子に合わせるようにしゃがみ込む。
顔が近くになったからか、ぽひゅんと湯気を上げるように顔を真っ赤にしながらもチラチラとこちらに視線を向けてくる。
「結婚は出来ないけどお花は嬉しいわ。でも、名前も知らない方からは貰えないわ。」
「ぼく、父さまの子のアキネイだよ。そこにいるのおじさんなの。」
おじさんと言われたのはイェシル殿下。
イェシル殿下に兄弟は王様1人。と言うことはこの子は王様と王妃様のお子様と言うことだ。
イェシル殿下の尻尾がパシパシと不機嫌そうに左右に揺れている。
ああ、そういうところが可愛いく感じるのよね。
「ケッコンして!」
「申し訳ないですが、私はイェシル殿下と結婚するのです。変わりにお菓子をあげますね。」
「おかし!じゃなくて、ぼくならおじさんとちがって毎日愛してるって言うよ。好きなものもちぇっくしたもん。」
隠れていないので、袋に詰めたマドレーヌを渡すと、目をキラキラさせて受け取ってくれたが、首を振って本来の話に戻ってしまった。
おじさんと違ってとの言葉で、未だプロポーズの言葉が無いイェシル殿下が眉間にシワを寄せる
好きなものをチェックとはこれまでの探険と言うなの付きまといの事を言うのは、白い花と緑のブーケで察しがついた。
イェシル殿下がこの餓鬼とつまみ出そうとしているのにストップをかけ、アキネイ様に優しく語りかける。
「私は、イェシル殿下が良いのです。言葉で欲しくないって言ったら嘘になりますが、言葉がなくても愛おしいという行動をしてくれるイェシル殿下が私には心地よいのです。だから、」
ごめんなさい。
そう言えば、目を見開いてわなわな、震えたと思ったら目から雫が溢れて来て、段々と顔が真っ赤に染まってきた。あ、やってしまったか。と思っていたら、辺りに響くほどの高音が響く。
まるで怪獣の怪奇音のような声に、近くにいたせいか耳がキーンとなった。
イェシル殿下はなれているのか、いつの間にか改良版の耳栓をちゃっかりしている。
ピークを過ぎたと判断したのか、それを外し、アキネイ様と私の間に入ってくる。
「やだぁ。おねぇちゃんはぼくが貰うの!」
「駄目だ。コイツは俺の唯一無二の番だ!」
「なんで、なんでぇ。今までなんでもくれたじゃん!」
「レイリだけは、愛する人だけは取らないでくれ!」
あ、これは彼の地雷だ。
イェシル殿下の悲痛の叫びを感じて、そっと背後から身を寄せておく。
大丈夫。私は貴方の側にいますから。
下手に力が入って身体が冷たくなっているイェシル殿下が温まるように。ゆっくりと熱を移すように身体を擦る。
アキネイの泣き声にどうしたどうしたと人が集まってきている。そんなことよりも絶望感を出すイェシル殿下をどうにかしないとと頭がいっぱいである。
そこに、王妃様が何事かと来てくれた。
「お母さ~ん!」
「あら、泣き虫坊や何やったの?」
「おじさんが、おねぇちゃんをくれないの。いつもはなんでもくれるのに!」
ぺしんっ!
アキネイ様の訴えを聞いた王妃様は問答無用で頭を叩いた。
叩かれた本人は涙を引っ込め、キョトンと叩かれた頭を抱えて自らの母親を見つめている。
「おねぇちゃんは物では無いのですよ!それよりも貴方まで、イェシルの物を奪っていたのですかっ!」
「ひっ!」
「イェシルは、あの愚王のせいで寂しい想いをしていたのですよ!それなのに貴方まで奪う者になるとは、情けない!」
王妃様の雷がまた落ちてしまった。
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