この記憶、復讐に使います。

SHIN

文字の大きさ
上 下
9 / 31

一週間後②

しおりを挟む


 リドリーさんやイェシル殿下が出て行ったあと、侍女が数名入ってきて、お風呂やら着付けやらを行ってくれた。
 彼女達はリドリーさんの弟子でもあるみたいで、リドリーさんの偉業を最中に聞くことになった。


 リドリーさんは、本名では無いらしいが今はこの名前が世界で美の追求者として有名になっているらしい。
 それこそ、人間の国のから獣人の国に最果ての国まで知らない人がいないという人物らしい。
 彼女?が買う化粧品は瞬く間に売れ、宝石を誉めれば産地が盛大に盛り上がるのだとか。
 前世のインフルエンサーみたいな者かしら。

 私はそんな娯楽を知ることは無かったから、初めて知ったといえば侍女達はこれから知れば良いわと言ってくれた。

 そんな美のカリスマリドリーさんが、最後の仕上げをしに戻ってきた。

 イェシル殿下とフィシゴは部屋の外で待たせているらしい。不敬罪とかは今さらだが、イェシル殿下の扱いが軽いきがする。



「まさか、あのイェシルが愉しそうにしているなんて初めて見たわ。」
「えっ?」
「動かないで。いっつも詰まらなそうでね。あ、私、学生時代の友人なのよ。フィシゴも。」

 だから、皆仲良さげなんですね。


「あんなに貴女に尽くす姿にこいつ誰って思ったわ。」
「尽くす?」
「そう、貴女を気に掛けてるわ。」


 こんな話を聞いてしまうととても申し訳なく感じてしまう。
 私は、カインの為に利用しているのだから。


「はい、リップを塗るわよ。」


 少しだけきつめの赤いリップが塗られ、鏡を差し出された。手に取り、覗き込むとそこにはとても自分とは思えない少女が映っていた。

 黒髪はまとめられ、大きな蝶が飾られていて、青みグレーのドレスに映える唇の赤と小降りな赤い石のネックレス。

 今まで一応は侍女として生きてきたので分かる。

 これは下手に動いてはダメな奴だ。

 固まってしまった私を一笑して、リドリーさんは扉の方に歩きだし、開いて待っているだろう人を呼び出した。


「服なんて着てなんぼよ。イェシル、出来たわよ。」
「上出来。んじゃ行くぞ。」
「まっ、待って。」

 
 私の姿をまじまじとみた後に、満足げに笑みを浮かべると、早速とばかりに呼ばれた。
 ドレスは足を全て隠すようなものではないため、裾を踏むことはないだろうが、フレアの部分が指輪に引っ掛からないか心配だ。

 ゆっくりと、イェシル殿下の元に向かい、歩く。

 しばらくあるいていなかったが、歩きがおぼつかないというほどではなくて、少し安心する。


「そんなんじゃ、日が暮れる。」
「え、きゃあ。」
「イェシルってば大胆。」


 イェシル殿下のところまで来たら、いきなり抱き上げられた。いわゆるお姫様抱っこだ。
 顔面に熱が集まる前に、イェシル殿下は歩き出す。



 振動で私を怖がらせない為か、わりかしゆっくり歩いてくれる殿下が首を傾け何かを示す。

 おそるおそる、手を首に回せば、そうだ。と言うようにグルルと喉を鳴らした。


 謁見の場所はおそらくその名の通り謁見の部屋で行われるだろう。
 そこまでの距離がどのくらいか分からないがとても長く感じてしまう。そして、王子にこんなことをさせるなんて心象は大丈夫だろうか。


 全てがネガティブになっていくなか、ふと廊下から見える庭に、見知った後ろ姿を見た気がした。
 

「あり得ないわね。」
「もうすぐ着くぞ。」



 あの後ろ姿はあの人じゃない。
 
イェシル殿下の言葉で、頭のもやもやを一掃して気合いを入れた。
 もう、どうとにもなれという気持ちに切り替えて、おそらくあそこだろうという目の引く豪華な扉に視線を送る。

 兵士が二人程左右対象に並び、私達を視界に捕らえたあと、一瞬だけイェシル殿下に嘲るような視線を送る。
 すぐに、視線は外されて扉をノックして中の人に我等がきたことを知らせているようだった。


「殿下とその花嫁がお着きになられました。」
「うむ、入れ。」


 扉が兵士によって開かれる。
 
 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】攻略を諦めたら騎士様に溺愛されました。悪役でも幸せになれますか?

うり北 うりこ
恋愛
メイリーンは、大好きな乙女ゲームに転生をした。しかも、ヒロインだ。これは、推しの王子様との恋愛も夢じゃない! そう意気込んで学園に入学してみれば、王子様は悪役令嬢のローズリンゼットに夢中。しかも、悪役令嬢はおかめのお面をつけている。 これは、巷で流行りの悪役令嬢が主人公、ヒロインが悪役展開なのでは? 命一番なので、攻略を諦めたら騎士様の溺愛が待っていた。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

【完結】余命三年ですが、怖いと評判の宰相様と契約結婚します

佐倉えび
恋愛
断罪→偽装結婚(離婚)→契約結婚 不遇の人生を繰り返してきた令嬢の物語。 私はきっとまた、二十歳を越えられないーー  一周目、王立学園にて、第二王子ヴィヴィアン殿下の婚約者である公爵令嬢マイナに罪を被せたという、身に覚えのない罪で断罪され、修道院へ。  二周目、学園卒業後、夜会で助けてくれた公爵令息レイと結婚するも「あなたを愛することはない」と初夜を拒否された偽装結婚だった。後に離婚。  三周目、学園への入学は回避。しかし評判の悪い王太子の妾にされる。その後、下賜されることになったが、手渡された契約書を見て、契約結婚だと理解する。そうして、怖いと評判の宰相との結婚生活が始まったのだが――? *ムーンライトノベルズにも掲載

婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」  枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。  土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。  「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」  あなた誰!?  やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!  虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。

悪役令嬢はざまぁされるその役を放棄したい

みゅー
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生していたルビーは、このままだとずっと好きだった王太子殿下に自分が捨てられ、乙女ゲームの主人公に“ざまぁ”されることに気づき、深い悲しみに襲われながらもなんとかそれを乗り越えようとするお話。 切ない話が書きたくて書きました。 転生したら推しに捨てられる婚約者でした、それでも推しの幸せを祈りますのスピンオフです。

王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない

エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい 最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。 でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

悪役令嬢になる前に、王子と婚約解消するはずが!

餡子
恋愛
恋愛小説の世界に悪役令嬢として転生してしまい、ヒーローである第五王子の婚約者になってしまった。 なんとかして円満に婚約解消するはずが、解消出来ないまま明日から物語が始まってしまいそう! このままじゃ悪役令嬢まっしぐら!?

処理中です...