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春の訪れと新入生
僕と新入生達
しおりを挟む採取クエストも討伐クエストもタリスさんが褒めてくれるぐらい上手くいった。
ジャイアントボアを取り出したときは冒険者達が期待の新人だと盛り上げてくれたし。一つを抜かせばとても充実した日だった。
また後日にアキさんが別の依頼方法を教えてくれるというので楽しみだ。
アキさんは僕達に突っかかってきた新入生に憤慨している様子はなくむしろ兵士の方に怒りを向けていた。あのわがまま具合いは周りの大人のせいだという意見には激しく同意しよう。
とまあ、充実した休日だったのだが唯一の心残りあのときは雰囲気に飲まれてか考えていなかったが、そもそも何故彼は冒険者ギルドに来たのか。あれだけ騒ぎを起こすぐらい冒険者になりたかった理由があったのかと今になって思う。
だからと言ってギルドは迷惑だったろうし受付嬢も泣き出していたから止めたことには後悔はしていないし反省もしない。
「考え事か。」
「昨日の少年の真意を考えていただけだよ。」
「俺が知っている情報はヘタリーチェ伯爵夫人は病気だと言うことだな。」
今日は本来ならめでたい入学式。
兄上が今年の在校生代表者祝辞を読むため付き添っている。ちなみにシシリーは未だ不在とされているのでシンリの姿だ。タオシャンやアンナとは学年が離れてしまったので涙のお別れを数日前にしたばかりだ。
学園長は僕がシシリーだと知っているので飛び級制度で不正はしていないのを知っているし、単位も他校で取っていることとして僕も私もコウにぃと一緒に飛び級制度で最高学年である。付け加えるならウォルターもだけど。
祝辞も終えて今年のクラスに向かっていると、前から一人の顔色の悪い細みの男がこちらに来た。
急いでいるのか顔を赤らめ息が荒くこちらを見つけたら、ハッとして飛び上がった。
刺客かと身構えたが男は飛び上がった後に僕達の足元に膝を付け肘を付け頭を付け両手を合わせる所謂、五体投地をした。
色素の薄い茶色の髪がハラハラと風で流されて地面に擦られている。
武器に伸ばしてた手をそのままに、男を観察していると病気特有の匂いがしてホコホコと咳もしている病人の様だ。
病人が何故我々の足元で五体投地をしているのか。
「今日という祝日にコウラン殿下にお会いできて光栄です。」
「あ、ああ。」
「この度は私の愚弟が申し訳ございません。」
珍しくコウにぃが戸惑っている。
そして、男の覇気のない声から出できた弟ってもしかして。
「私、ヘタリーチェ伯爵家の長子であるクオラと申します。」
「とりあえずクオラ先輩、身体を上げて立って下さい。」
「もう先輩では無いので先輩は不要です。」
「クオラさん立って立って。話しを聞かせてください。」
ズビゲホゲホととても体調が悪そうなクオラさんを立たせて、近くのベンチまで移動する。
周りに人がいなくてよかった。
足元に人を五体投地させる魔王なんて恐怖の大魔王並に恐ろしい光景じゃないか。
このクオラさん近くで見ると肌の白さが異常だ。顔に付いた砂を落とす振りして下瞼とかを見てみたが、貧血の兆候が酷い。
それだけではない先程からしている咳は湿っぽい感じで息も苦しそうだ。貧血はまた別の要因かもしれないがとりあえず鑑定を内緒でかけさせてもらう。
***
クオラ・ヘタリーチェ (17歳)
性別 男
種族 人
魔力 30000
Level 10
称号 病弱(魔力過多症 肺水腫 貧血) 死期迫り学生 身を粉にして守る者
魔法属性 風 水
***
とりあえず他に伝染るような病気は無いな。
こちらの世界には予防接種なんて概念は薄いから、今度陳列書でも皇帝陛下に提出しよう。結核とか存在しているかは不明だけど予防接種を国でやれば貧困関係なく疫病予防になるしね。
魔力過多症はあのハーフエルフのウォルターを上回る魔力のせいであろう。僕としては羨ましい限りではあるけど。
人の身で有り余る魔力を保持するのはとてもきついらしい。魔力の循環が滞り、身体を蝕み不調へとかえていくのだとか。そしてその過剰な魔力を排出する自己防衛として体内の水分に魔力を溶け出し排除するその影響の肺水腫と貧血かな。
肺の水分にもう少し魔力を移して排除しとこうかな。
「御身体触ります。」
一言断りを入れてから水魔法の応用で肺に溜まっている水を抜いていく。少し苦しいかと思うが、終わったらとても楽になるから我慢してね。
「不思議です。先程まで苦しかったのに楽になりました。」
「それは良かった。じゃあ話しを聞かせてください。」
「改めて大変不敬な態度を弟が取ってしまい申し訳ございません。」
「あの場は冒険者としてお会いしたので身分としては気にしないでください 。」
「いえ、弟の態度は誰に対しても行ってはいけないものでした。ギルドにもこのあと謝りに行くのです。」
「お前がか?」
確かに、弟本人でもなく保護者のヘタリーチェ伯爵本人でもない者が何故謝りに行くのか。家族だからと言ってもそれならヘタリーチェ伯爵が謝りに来ればいいのに。それを嫌がるような人では無いと思っていたのだけど。
「弟は家で謹慎させています。父は母の特効薬を採取しに少し遠出をしていますのでまだこの事を知りません。」
「なるほど。そういえばお前は跡取りではないのだな。」
「はい。私は身体が弱いため父の名は頂いていません。弟が持っています。」
そうか。魔力過多の症状を持つものは短命が多いからな。つけたくてもつけられなかったか。
前世では多血症の人には定期的に献血とかの処置をする人もいるけど魔力過多も似たように出来ないかな。
そういえば、弟くんはどうしてあんな事をしたのか聞いておかなくては。
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