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記憶を求めて奥底に

僕とウォルター・エスメラルダ

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 ウォルターがこのまま家に戻り、僕も無事な姿を見せたらネイキッドはどのような行動に出るか想像出来ない。
 僕がへいぜんとしていることで、ウォルターが失敗したと確実に判断して、ウォルターの姉に危害を与える可能性もある。

 取り敢えずは僕がどうにかなってしまったという噂を流して様子をみよう。ウォルターはその主犯として確保しておいて、きっとウォルターが自供をするという思いが駆け巡って何かアクションしてくれるんじゃないかな。

 娘を王族にして何がしたいのかって聞くのは野暮かな。権力が欲しかったのかそれとも‥…。


「ウォルター、ネイキッドは何を求めているの?」
「知らない。だけど姪を使って色々やっていくみたいだ。」


 そのための美しいハーフエルフウォルターの姉を手に入れたのか。森の妖精と呼ばれるエルフの仲間であるハーフエルフの美しさは一度は拝みたくなると言われている。
 そんな存在を妻に出来るなら結納金を幾らでも出す人も居るだろう。

 

「取りあえず、僕はダンジョンで怪我した事にして調べるから。」
「‥…何で。」
「オマケだよオマケ。ダンジョンボスに一撃入れられたからご褒美だよ。」


 ダンジョンでそう約束したから、ウォルターの行動は一歩間違っていたら死んでたかも知れないから、許せないけどまあ、家族が絡んでいるからまあ酌量の余地がある。
 だけどネイキッドって奴は僕の命を奪おうとまで命じてたらしいじゃないか。

 ウォルターはそこのところを吐かなかったから予想でしか無いけど兄上曰く間違いないそうだ。

 僕を、しかも騎士団が信頼して送り込んできた子を使ってこんなことをするなんて、こちらはお仕置きかな?


「ねえ、父様。」
「なんだ?」
「ネイキッドは僕がやりたいな。」
「駄目だと言いたいが、やられたのはシンリだからな。好きにしなさい。」
「兄上も。」
「‥…分かった。」


 わーい。
 これで色々 僕がやりたいことをやれるぞ。


 父様は他の腐った果物貴族をどうにかしてもらって過ごしやすい国に力を注ぎ混んでもらおう。
 兄上はダンジョンでの疲れを癒やしてくれてればいいからね。何ならウチの領土の温泉でも入りながら白酒でも呑んでのんびりしなよ。そうすれば僕は湯治に行ってる事にするから。


「ああ。それで俺狙いの奴が追いかけてくるってか。」
「そんな。撒き餌みたいなこと言わないでよ。」
「事実だろ。」


 分かってらっしゃる様で。
 嫌そうな雰囲気はしていないので適当に囮になってくれるようだ。じゃあ、いらないとは思うけど護衛兼僕の成り代わりは。


「玄樹。頼めるか?」
「『御意。』」
「朱冥は僕と来てほしんだけど。」
「『大丈夫。どこまでもお供します。』」
「白夜へのお願いは重大なんだけど大丈夫?」
「『なによ。まっかせなさい!』」
「陰ながらに第3皇子がどんな子か見極めて欲しい。白夜は人を見る目があるから信用できる。」


 分かったわと元気に返事をしてくれる白夜をみて、ひそりと『うるさい奴を遠ざけたか。』と誰かが呟いた。
 だって、隠密で行動したいんだもの。
 勿論白夜だって500年は生きてるし、TPOは弁えているとは思うけど、ちょっと子供ぽいし。
 おっと、今のは忘れてね。


「ウォルターはシアさんに預ける事にしよう。」
「だいぶ使えるやつにしたから喜ぶだろう。」
「そんな心配そうな顔しなくても、お姉さんの事は大丈夫だよ。」


 イケメン部類の男が捨てられた子犬の様な目で見つめてくるので安心させようとそう言葉を掛ければ、はっとしたように苦笑いを浮かべたあとに前の様なチャラめな顔つきに戻っていった。



「今頃、エロいお姉さんに引き摺られた話がネイキッドの方までいっているだろうね。」
「ま、まさかわざとか?」
「これで拘束されていることになっているよ。」


 しかも、ダンジョンにはシシリーがついて行ったと思っているはずだから僕がコウにぃと共に城に来ても、ネイキッドに通じている城の働き手は分からないだろうな。むしろ、シシリーが怪我した信憑性が増す?

 

「この皇帝がいる城が容易く情報を漏らすわけがななかろうに。」
「白夜はそこらへんも感づくから後で変なやつが居なかったか聞いたら色々内通者、スパイとでてくると思うよ。」



 怖いのはこのことに関して白夜は無意識にやっていることが。皇帝陛下もそこらへんの事情はしっかりとしていると思うが、参考程度に聞いておいてくれるとうれしい。

 僕の方はまずはネイキッドの周辺の事情聴取。何でこんな人に危害を加えてまでやらかすことをしたのか、ウォルターの姉はどう過ごしているのか、娘ちゃん達は無事か、皇帝陛下も信を置く父親はどんな人なのかなど色々と調べることが沢山だ。


「朱冥は少し気分が悪くなると思うけど」
「『シンリの為なら平気です。』」
「そう?もし辛かったら言ってね。最悪の場合、バルスさんに成長の魔法をかけて貰って僕が変わるから。」
「『絶対駄目です。』」


 即答だった。
 
 まずは情報戦でも、やろうかな。





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