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運命分かつ 哀れな……
しおりを挟む変な魔物に出会わないように気配を消しつつも、森を足取り軽く歩いていると、街の城門が見えてきた。本来ならそのまま行ってしまうのだが、視線の端に光かる何かがどうしても気になった。
こういうときは首を突っ込んだ方が良いことは、経験上わかっていたので、光の元に向かう。
なんと光は可愛い可愛い女の子でした。
光っている様に見えたのは彼女の手入れの行き届いた青みがかった銀糸の髪だった。
少女の幼さ漂う顔には土汚れがついており、赤みを帯びた唇の端は切れていた。白い肌に殴られた跡が見えるから、おそらくその時に切れたのだろう。
服は至るところがボロボロでそこから覗く細い体躯にはアザがいくつも見えた。靴が片方脱げており、そのまま走ったのか靴がない方の足には幾つもの切り傷がみられる。
俺の姿を視認した紅き瞳には、恐怖と反抗の光が見える。
いいねぇ。スッゴク俺好み。
すかさず、安心させるべく優しく笑いかけながら慧眼を発動する。そうすれば、彼女のステータスが頭に浮かぶ。
─────────
リンファ (12歳)
level:25
種族:魔神族
体力:100/2300 (毒)
魔力:2500/3000 神力:0/3000
〈取得技能〉
愛されしもの L10 投擲 L3 軽業師 L2 剣術 L5
─────────
俺より年下で、levelが高い娘でした。
ステータスは、俺の方が大きいからもしかしたら異世界補正でも付いているのかな。
さて、彼女を蝕む毒をどうにかしないとね。たぶん何かに襲われて逃げ出したときに毒草でも踏んだんだと思う。その状態て襲ってきた物から隠れてたんだ。すごい精神力。
俺は、彼女の前にしゃがみこむと優しく頭を撫でてやる。よく頑張ったなという想いを込めて。すると、最初は身体をびくつかせていたが、その内に瞳から恐怖と反抗の光が薄れ先ほどまであった警戒心が和らぐ。
「治療をするからな。」
「……。」
そこで初めて声をかけてやれば、困った様な顔をしながらこくりと頷きを返してくれた。
治療と言っても薬草と一緒に密かに回収した解毒草を潰して汁を飲ませるだけだが。その方法が正しいかは知らんが、とりあえずステータスから毒表記が消えたから良いとしよう。
次に、魔法を使ってみることにする。
俗に言う、回復魔法だ。魔法とはイメージだと説明を読んだので、前の世界でアニメや小説を読みまくっていた俺にはそれぐらい容易いことだった。
少女の小さな足に手を当て、その足が傷だらけから綺麗になるのを想像すれば、足が淡く光ったあと滑らかな肌の足になる。
少女の目が見開いた。
後は全身かなと考えていると、殺気立つ数人の気配を感じた。
その数人はこちらに向かってきている。少女も気配に気づいたのか身体を震わせている。どうやら、この少女を襲ったのはその者達のようだ。
俺はやれやれと立ち上がると、少女を抱き上げた。少女の声なき悲鳴が上がる。もしかしたら、この少女は声がでないのかな。それが、襲われた時の影響なら奴等に遠慮は要らないよな。
抱き上げた少女の耳元にsleepingと囁けば、強ばりがあったその華奢な身体から力が抜けた。ビバ魔法!
自分のステータスをみてそれぞれの魔法にに10ぐらいしか魔力が消費されていないのを確認し、コスパ最高です。と内心叫びながら気配を消しつつギルドへと戻る。
今は倒さないよ。だって本当に彼らがこの娘を狙っているかわからないしね。いくら暗殺者だってむやみやたらに殺さないよ。
無事に何事もなくギルドに到着し、受付に向かえばによによ顔のラスさんが居た。
ラスさんの視線は少女に向かっている。
おじさまったらあまりにも可愛らしいからってやらしい笑みを浮かべないで下さいな。目潰しすんぞ!
俺は少女をラスさんの視界から隠した。
少し離れたところから男共の少女に向けた賛辞の悲鳴が上がる。ボディバックに入れて連れて帰れば良かったかな。生き物も入るかは分からないが。
「……ただいま帰りました。」
「お帰り、お土産付きか?」
「帰り道で倒れてました。誰かに襲われたみたいですよ。」
「なっ」
「なんですって!」
ゴツいお姉さんがラスさんの後ろから怒り顔で出てきた。その拍子に、ラスさんが受付台に顔面を押し付けられた。
ちょっ、怖いんだけど。
お、俺は襲ってないよ。助けただけだよ。
お姉さんは、少女を俺から回収しボロボロな服をみて慌てて何処かに連れていく。まあ、お姉さんに任せれば大丈夫だろう。
それよりも、ラスさんが受付台から起きないんだけど大丈夫?
念のため回復魔法でもかけておこう。いたいのいたいの襲ってた奴等にとんでゆけ~。
それから、しばらくしてラスさんが復活してくれた。
「お前、魔法が使えるんだな。」
「少々ですが。」
無事にいたいのとんでけが効いたみたいです。
がさごそとボディバックから依頼の品を出しながら、魔法の事は普通に肯定する。別に隠す程の事はまだやってないからね。
とりあえずは、薬草の束が三十束とゴブリンの角が黒いやつ含めて52個出した。薬草はまだまだあるけど俺もお世話になるかもしれないし残しておく。同じ理由で解毒草とかも鞄に入ったままだ。
ラスさんはどんどんと積み重なる依頼の品に目を丸くする。ふはっ、なんか良いものを見たかも。
「空手かと思いきや魔法鞄持ちか。」
「貰い物だけどね。」
「しかも、数時間でどんだけ採ってきたんだよ。薬草なんか数日かける奴も居るんだぞ。さらにはゴブリン亜種の角ときたもんだ。」
「ゴブリン亜種は受け取り不可?」
「いいや、むしろ喜んで。というか、お前何者だよ。」
「なんだろうね。」
実際、自分でもわからん。
人でもあると思うし、手の感じはよーく見ると作り物感はある。だからと言って人形でもないし、やっぱり種族の神々の機械が当てはまっているとおもう。
「まあ、いいや。とりあえず、採取や討伐依頼は持ってきたものを買い取る様になっている。品質とか見たいから少し時間が掛かるぞ。」
「じゃあ、宿屋教えてよ。そこで待つから。」
「良いぜ。金はあるか?」
「ほどほど、でも節約したい。」
「じゃあ、裏通りの宿り木がいいな。地図を書いてやろう。」
そういえば、ラスさんはギルド長なのに色々やってくれてるけど良いの?
なになに、たまには冒険者と触れ合いたいから良いと。しかも、良い奴を見つけた。ってそれ俺の事?
ぎゃー、なんかそのニヤリ怖いんすけど。なんつうの魔王みたいな。
なんて、ラスさんと冗談混じりに話していると後ろからどーんと衝撃が来ました。知ってる気配が来ているのはわかっていたので甘んじて受けます。背中にあたる柔らかな物が心地良いです。
身体をねじり、その正体を見ると汚れが落ちて超絶美少女になったあの少女でした。服もお姉さんが着替えさせたようで清楚なワンピース姿です。
背中にあたっているのはその身体の細さからは想像もつかない豊満な双丘でした。
うわぁ、可愛いなぁ。もう少し大人だったら即座に口説いてたよ。
目線があった少女は、何度か口をパクパクさせたあと助けてくれてありがとうって囁いた。
良かった。喋れるみたいだね。
「いま、なんて言ったんだ?」
「へっ?」
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