1 / 9
婚約者?誰の事でしょう?
しおりを挟むどこにでもお馬鹿さんと云うものが居るのもですね。
失礼しました。
私は侯爵位レーベント家の次女のエルディアス・レーベント。
私がお馬鹿さんと言っていたのは、目の前で一人の少女を取り合っている男達の事である。
まあ、私には関係無いのですけどね。
注目されていると分かっていないのか、とても不愉快な取り合い劇を繰り広げ、周りの他国からのお客様に失笑をされているのにも気づかない。
なんというのかしら、ああ、頭がお花畑集団ですわね。
別に彼らが失笑されるのはかまわないのですけど、その彼らがこの国の重要ポストであるのが大事です。
騎士団長の息子、宰相家の次男、宮廷魔術師長の養子、勇者の子孫。色々と揃っていますわ。
そんな中に第二王子の姿を見つけて、思わずため息が漏れそうになったが、手元にある扇で口元を隠して耐える。
彼らはそれぞれ異なる美形で、実力も折り紙付きだった。だったのですけど、半月前ほど前に中心にいる少女が現れてから彼らは変わった。
彼らは、我先にと少女に恋を謳い、贈り物をした。
周りからどの様に見られているのかも知らずに彼らは一人の少女にのめり込んだのだ。
中には幼少の頃からの許嫁を切り捨てる人もいた。
どこにそんな魅力があるのか分からないけど、たしかに少女は目の下にあるそばかすが無ければ整った顔立ちで、身体付もスレンダーで羨ましいほど腰が細い。
性格が良いとかは実際に話したこともないのでなんとも言えないけれど、彼ら曰く天使の様に心優しい少女。周りの傍観者曰くあざとい小悪魔だそうですよ。
彼らのことはさておいて、私が今何をしているか教えましょう。私、いえ、私達は今日学園を卒業して明日から社会に旅立つ予定です。明日のための英気を養うためパーティーが開かれます。
パーティーでは共に学んだ学友達と親睦を深めたり、は建前でコネや伝を繋ぐのが目的である。
特に明日から王妃教育で登城する私の回りには縁を結ぼうと多くの方々が、言い方は悪いですが光に集まる虫のように集まってきてます。
その一人一人と挨拶をしつつも頭でその方のバックグラウンドを思い出す。
今挨拶をしている御令嬢は大手商家の愛娘で自身も商いをしたいと在学中に他国の言葉や流行りを留学生に学んだりとしていた勤勉家でしたわ。
ご両親もお客様に丁寧に説明したり、親密に相談に乗ったりと良心的な商人です。そんな商人は悪徳者に狙われそうですが、彼女の兄がそこをカバーしてくれています。
逆に先程挨拶をした商家の御子息は、裏で金の高利貸しをしているという噂があります。
借りる方も借りる方ですが、在学中に高利貸しの真似事をして何度も窘められていたのを覚えています。弟君はそんな兄の被害者に謝りに行ったりと良い子なんですけどね。
こんな風にすべての事ではありませんがある程度付き合う相手を判断して今後の付き合いを考えておきます。たとえ褒められ、持ち上げられても冷静に判断するのが私の仕事の一部です。
「……おい!」
そもそも、褒められて優先して付き合うなんて国の代表である国王の顔に泥を塗るわ。
「お前!聞こえないのか!」
むしろ、過ちを叱ってくれる人の方が好ましいですわね。自分の身を省みず悪いことを悪いと言ってくれるなんて早々居ないかもですが。
「エルディアス!」
パンっ!
名前を呼ばれて、口元を隠していた扇を手に当てて閉じる。ゆっくりと呼ばれた方を見ると第二王子が顔を赤くして、こちらを睨んでいた。
その睨みに冷たい視線を送りつつ、紅の塗られた口元には笑みを浮かべる。
「私の事でしたの?」
「呼ばれたら返事をっ」
「おいとかお前とか私はそんな名前ではありませんし、他の誰かを呼んでいるのかと思いましたわ。まさか、貴方が私の名前を知らぬはず有りませんからね。」
嫌ではありますが第二王子と私はこれから縁を結ぶ関係であります。
そんな関係の私の名前を知らぬなんて有るわけないでしょ。なのに名前も呼ばずに呼んでいれば、誰の事か分からないのも当然。
え、私?
もちろん、第二王子の名前は存じ上げて居ますし、その他のお方も知っています。それに一度名乗られた人はなるべく覚えておくようにしています。
だって、『某国の使いの者』より、『誰々様』と言った方が相手も気分が良いでしょ?
そんな大事な名も呼ばない第二王子は何の用なんでしょうかね。
「で、リクリート殿下は何用ですか?」
「この度、婚約破棄をする。」
「そうですか。王様や王妃様にはお伝えしましたの?」
「これからだ。だが、これでお前も大きな顔は出来なくなるぞ。」
「そうなんですの?何故に?」
「だから、婚約破棄をするからだろう!」
話しの繋がりが出来ていないのが分かってきたのか、第二王子の眉間にシワが刻まれ始めました。
「リクリート殿下の婚約破棄と私の王妃教育と何の繋がりがありまして?」
「お、お前は私の婚約者だから王妃教育を受けていたのだろう?」
何を言っているのかしら。
まあ、途中からなんとなく分かってましたけども。
私と第二王子は婚約している事実は有りません。
あんなのと婚約していたら早々にお父様に言って解消してもらうわ。
解消の理由なんぞあのハーレム擬きで十分でしょう。
婚約者よりも他の男も狙う少女に首ったけ。シンデレラストーリー?バカ言わないでよ。婚約は契約なの。それを蔑ろにして、別の少女に走るってどうなのよ。
身の回りを清算してからやってよ。
「リクリート殿下の婚約者は私ではございませんわ。」
「では何故に王妃教育など受けている!」
「彼女が王妃に成るからに決まっているからだろ。」
私達の会話に入ってきたのは、第二王子に良く似た少し幼げな少年だった。
少年はその顔から分かるように、第二王子の弟君である第三王子である。
第三王子は来年卒業の一つ年下のお方です。年齢から分かるようにお二方の内、一方は側室のお子です。
「兄上、私の婚約者に何かご用ですか?」
「弟の婚約者だ……と?」
「兄上の婚約者は隣国クラム国の姫君じゃないですか。」
「なっ、あんな40歳だと!」
あらあら、ここにはクラム国の留学生も居るというのに。
まあ、クラム国の姫君が40歳過ぎても結婚していないことは有名だから言葉は悪いけど許容範囲かしら?でも、向こうに行ったれ気をつけないとね。かつての赤の女王の様に姫にコロコロされちゃうわよ。
「わ、私はこの国の後継者だぞ!」
「いえ、後継者は第三王子のディランです。第一王子は権利を放棄し、貴方は政略結婚で隣国へ。それは五年前から決まっていたことです。」
「私が、政略結婚……。」
「話が違うじゃない!」
声を張り上げたのは、ハーレム擬きの中心にいた少女だった。
503
お気に入りに追加
2,033
あなたにおすすめの小説
【完結】残酷な現実はお伽噺ではないのよ
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
恋愛
「アンジェリーナ・ナイトレイ。貴様との婚約を破棄し、我が国の聖女ミサキを害した罪で流刑に処す」
物語でよくある婚約破棄は、王族の信頼を揺るがした。婚約は王家と公爵家の契約であり、一方的な破棄はありえない。王子に腰を抱かれた聖女は、物語ではない現実の残酷さを突きつけられるのであった。
★公爵令嬢目線 ★聖女目線、両方を掲載します。
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
2023/01/11……カクヨム、恋愛週間 21位
2023/01/10……小説家になろう、日間恋愛異世界転生/転移 1位
2023/01/09……アルファポリス、HOT女性向け 28位
2023/01/09……エブリスタ、恋愛トレンド 28位
2023/01/08……完結

言い訳は結構ですよ? 全て見ていましたから。
紗綺
恋愛
私の婚約者は別の女性を好いている。
学園内のこととはいえ、複数の男性を侍らす女性の取り巻きになるなんて名が泣いているわよ?
婚約は破棄します。これは両家でもう決まったことですから。
邪魔な婚約者をサクッと婚約破棄して、かねてから用意していた相手と婚約を結びます。
新しい婚約者は私にとって理想の相手。
私の邪魔をしないという点が素晴らしい。
でもべた惚れしてたとか聞いてないわ。
都合の良い相手でいいなんて……、おかしな人ね。
◆本編 5話
◆番外編 2話
番外編1話はちょっと暗めのお話です。
入学初日の婚約破棄~の原型はこんな感じでした。
もったいないのでこちらも投稿してしまいます。
また少し違う男装(?)令嬢を楽しんでもらえたら嬉しいです。

あなたに未練などありません
風見ゆうみ
恋愛
「本当は前から知っていたんだ。君がキャロをいじめていた事」
初恋であり、ずっと思いを寄せていた婚約者からありえない事を言われ、侯爵令嬢であるわたし、アニエス・ロロアルの頭の中は真っ白になった。
わたしの婚約者はクォント国の第2王子ヘイスト殿下、幼馴染で親友のキャロラインは他の友人達と結託して嘘をつき、私から婚約者を奪おうと考えたようだった。
数日後の王家主催のパーティーでヘイスト殿下に婚約破棄されると知った父は激怒し、元々、わたしを憎んでいた事もあり、婚約破棄後はわたしとの縁を切り、わたしを家から追い出すと告げ、それを承認する書面にサインまでさせられてしまう。
そして、予告通り出席したパーティーで婚約破棄を告げられ絶望していたわたしに、その場で求婚してきたのは、ヘイスト殿下の兄であり病弱だという事で有名なジェレミー王太子殿下だった…。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

とある断罪劇の一夜
雪菊
恋愛
公爵令嬢エカテリーナは卒業パーティーで婚約者の第二王子から婚約破棄宣言された。
しかしこれは予定通り。
学園入学時に前世の記憶を取り戻した彼女はこの世界がゲームの世界であり自分が悪役令嬢であることに気づいたのだ。
だから対策もばっちり。準備万端で断罪を迎え撃つ。
現実のものとは一切関係のない架空のお話です。
初投稿作品です。短編予定です。
誤字脱字矛盾などありましたらこっそり教えてください。

虐げられていた姉はひと月後には幸せになります~全てを奪ってきた妹やそんな妹を溺愛する両親や元婚約者には負けませんが何か?~
***あかしえ
恋愛
「どうしてお姉様はそんなひどいことを仰るの?!」
妹ベディは今日も、大きなまるい瞳に涙をためて私に喧嘩を売ってきます。
「そうだぞ、リュドミラ!君は、なぜそんな冷たいことをこんなかわいいベディに言えるんだ!」
元婚約者や家族がそうやって妹を甘やかしてきたからです。
両親は反省してくれたようですが、妹の更生には至っていません!
あとひと月でこの地をはなれ結婚する私には時間がありません。
他人に迷惑をかける前に、この妹をなんとかしなくては!
「結婚!?どういうことだ!」って・・・元婚約者がうるさいのですがなにが「どういうこと」なのですか?
あなたにはもう関係のない話ですが?
妹は公爵令嬢の婚約者にまで手を出している様子!ああもうっ本当に面倒ばかり!!
ですが公爵令嬢様、あなたの所業もちょぉっと問題ありそうですね?
私、いろいろ調べさせていただいたんですよ?
あと、人の婚約者に色目を使うのやめてもらっていいですか?
・・・××しますよ?

婚約破棄で見限られたもの
志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。
すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥
よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。

妹が約束を破ったので、もう借金の肩代わりはやめます
なかの豹吏
恋愛
「わたしも好きだけど……いいよ、姉さんに譲ってあげる」
双子の妹のステラリアはそう言った。
幼なじみのリオネル、わたしはずっと好きだった。 妹もそうだと思ってたから、この時は本当に嬉しかった。
なのに、王子と婚約したステラリアは、王子妃教育に耐えきれずに家に帰ってきた。 そして、
「やっぱり女は初恋を追うものよね、姉さんはこんな身体だし、わたし、リオネルの妻になるわっ!」
なんて、身勝手な事を言ってきたのだった。
※この作品は他サイトにも掲載されています。

裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……
希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。
幼馴染に婚約者を奪われたのだ。
レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。
「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」
「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」
誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。
けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。
レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。
心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。
強く気高く冷酷に。
裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。
☆完結しました。ありがとうございました!☆
(ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在))
(ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9))
(ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在))
(ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる