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婚約者?誰の事でしょう?
しおりを挟むどこにでもお馬鹿さんと云うものが居るのもですね。
失礼しました。
私は侯爵位レーベント家の次女のエルディアス・レーベント。
私がお馬鹿さんと言っていたのは、目の前で一人の少女を取り合っている男達の事である。
まあ、私には関係無いのですけどね。
注目されていると分かっていないのか、とても不愉快な取り合い劇を繰り広げ、周りの他国からのお客様に失笑をされているのにも気づかない。
なんというのかしら、ああ、頭がお花畑集団ですわね。
別に彼らが失笑されるのはかまわないのですけど、その彼らがこの国の重要ポストであるのが大事です。
騎士団長の息子、宰相家の次男、宮廷魔術師長の養子、勇者の子孫。色々と揃っていますわ。
そんな中に第二王子の姿を見つけて、思わずため息が漏れそうになったが、手元にある扇で口元を隠して耐える。
彼らはそれぞれ異なる美形で、実力も折り紙付きだった。だったのですけど、半月前ほど前に中心にいる少女が現れてから彼らは変わった。
彼らは、我先にと少女に恋を謳い、贈り物をした。
周りからどの様に見られているのかも知らずに彼らは一人の少女にのめり込んだのだ。
中には幼少の頃からの許嫁を切り捨てる人もいた。
どこにそんな魅力があるのか分からないけど、たしかに少女は目の下にあるそばかすが無ければ整った顔立ちで、身体付もスレンダーで羨ましいほど腰が細い。
性格が良いとかは実際に話したこともないのでなんとも言えないけれど、彼ら曰く天使の様に心優しい少女。周りの傍観者曰くあざとい小悪魔だそうですよ。
彼らのことはさておいて、私が今何をしているか教えましょう。私、いえ、私達は今日学園を卒業して明日から社会に旅立つ予定です。明日のための英気を養うためパーティーが開かれます。
パーティーでは共に学んだ学友達と親睦を深めたり、は建前でコネや伝を繋ぐのが目的である。
特に明日から王妃教育で登城する私の回りには縁を結ぼうと多くの方々が、言い方は悪いですが光に集まる虫のように集まってきてます。
その一人一人と挨拶をしつつも頭でその方のバックグラウンドを思い出す。
今挨拶をしている御令嬢は大手商家の愛娘で自身も商いをしたいと在学中に他国の言葉や流行りを留学生に学んだりとしていた勤勉家でしたわ。
ご両親もお客様に丁寧に説明したり、親密に相談に乗ったりと良心的な商人です。そんな商人は悪徳者に狙われそうですが、彼女の兄がそこをカバーしてくれています。
逆に先程挨拶をした商家の御子息は、裏で金の高利貸しをしているという噂があります。
借りる方も借りる方ですが、在学中に高利貸しの真似事をして何度も窘められていたのを覚えています。弟君はそんな兄の被害者に謝りに行ったりと良い子なんですけどね。
こんな風にすべての事ではありませんがある程度付き合う相手を判断して今後の付き合いを考えておきます。たとえ褒められ、持ち上げられても冷静に判断するのが私の仕事の一部です。
「……おい!」
そもそも、褒められて優先して付き合うなんて国の代表である国王の顔に泥を塗るわ。
「お前!聞こえないのか!」
むしろ、過ちを叱ってくれる人の方が好ましいですわね。自分の身を省みず悪いことを悪いと言ってくれるなんて早々居ないかもですが。
「エルディアス!」
パンっ!
名前を呼ばれて、口元を隠していた扇を手に当てて閉じる。ゆっくりと呼ばれた方を見ると第二王子が顔を赤くして、こちらを睨んでいた。
その睨みに冷たい視線を送りつつ、紅の塗られた口元には笑みを浮かべる。
「私の事でしたの?」
「呼ばれたら返事をっ」
「おいとかお前とか私はそんな名前ではありませんし、他の誰かを呼んでいるのかと思いましたわ。まさか、貴方が私の名前を知らぬはず有りませんからね。」
嫌ではありますが第二王子と私はこれから縁を結ぶ関係であります。
そんな関係の私の名前を知らぬなんて有るわけないでしょ。なのに名前も呼ばずに呼んでいれば、誰の事か分からないのも当然。
え、私?
もちろん、第二王子の名前は存じ上げて居ますし、その他のお方も知っています。それに一度名乗られた人はなるべく覚えておくようにしています。
だって、『某国の使いの者』より、『誰々様』と言った方が相手も気分が良いでしょ?
そんな大事な名も呼ばない第二王子は何の用なんでしょうかね。
「で、リクリート殿下は何用ですか?」
「この度、婚約破棄をする。」
「そうですか。王様や王妃様にはお伝えしましたの?」
「これからだ。だが、これでお前も大きな顔は出来なくなるぞ。」
「そうなんですの?何故に?」
「だから、婚約破棄をするからだろう!」
話しの繋がりが出来ていないのが分かってきたのか、第二王子の眉間にシワが刻まれ始めました。
「リクリート殿下の婚約破棄と私の王妃教育と何の繋がりがありまして?」
「お、お前は私の婚約者だから王妃教育を受けていたのだろう?」
何を言っているのかしら。
まあ、途中からなんとなく分かってましたけども。
私と第二王子は婚約している事実は有りません。
あんなのと婚約していたら早々にお父様に言って解消してもらうわ。
解消の理由なんぞあのハーレム擬きで十分でしょう。
婚約者よりも他の男も狙う少女に首ったけ。シンデレラストーリー?バカ言わないでよ。婚約は契約なの。それを蔑ろにして、別の少女に走るってどうなのよ。
身の回りを清算してからやってよ。
「リクリート殿下の婚約者は私ではございませんわ。」
「では何故に王妃教育など受けている!」
「彼女が王妃に成るからに決まっているからだろ。」
私達の会話に入ってきたのは、第二王子に良く似た少し幼げな少年だった。
少年はその顔から分かるように、第二王子の弟君である第三王子である。
第三王子は来年卒業の一つ年下のお方です。年齢から分かるようにお二方の内、一方は側室のお子です。
「兄上、私の婚約者に何かご用ですか?」
「弟の婚約者だ……と?」
「兄上の婚約者は隣国クラム国の姫君じゃないですか。」
「なっ、あんな40歳だと!」
あらあら、ここにはクラム国の留学生も居るというのに。
まあ、クラム国の姫君が40歳過ぎても結婚していないことは有名だから言葉は悪いけど許容範囲かしら?でも、向こうに行ったれ気をつけないとね。かつての赤の女王の様に姫にコロコロされちゃうわよ。
「わ、私はこの国の後継者だぞ!」
「いえ、後継者は第三王子のディランです。第一王子は権利を放棄し、貴方は政略結婚で隣国へ。それは五年前から決まっていたことです。」
「私が、政略結婚……。」
「話が違うじゃない!」
声を張り上げたのは、ハーレム擬きの中心にいた少女だった。
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