わたくしは貴方を本当に…

SHIN

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私を見なさいよ

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 エリザベート様が半歩前に出てわたくしの動きを上手くかくしてくださいました。
 話が聞こえたのか、陛下は先程までよりもわたくしに寄り添い、視線はカペルに向けていつでも回避出来るような体制をとっています。
 その行動はこれから集中しなくてはならないので助かります。

 わたくしは先程のサーチ魔術と同じく、三種の性質の魔力を練ります。

 その練った魔力を身体中で揺蕩うたゆたうように広げる。
 その揺蕩う魔力だけならば気づかれてもまた何かをしていると思われるだけでしょう。
 ただ、この後が問題です。
 魔力を縮小させてゆきますじっくりと身体の中心に向かって。

 魔力はその縮小により少しずつ威力が上がって行くのですが、わたくしの魔力はこの会場を包む程の広範囲で展開していたのです。
 人というもの目の前に起こるのとには意識を向けますがそれがあまりにも広範囲だと見えないものなのですよ。
 さて、そんな規模の魔力が縮小して出来るもの。
 それは無です。

 教えて下さった先生は半径50mぐらいで作ったそれを木に投げて、木を土ごと消滅させてました。この規模ならとりあえず多少逃げられても一部は範囲に入るので大丈夫でしょう。


「なんか凄いもの作ってるわね。」
「エリザ、転移魔法の準備をあの接近戦の二人に。」
「分かってるわよ。」


 そんな話がされていたなど知らずに縮小を更に進めてゆきます。
 暴走だけは避けなければ。

 とうとう身体の範囲まで来た所で、レオが大きく吹き飛ばされました。
 カペルがチラリとこちらを向きます。 


 気付かれた?


「…ちょっと、カペル!あんた生意気なのよ!」


 やばいと思ったときに甲高い、掠れた声が辺りに響きます。
 それは、拘束具を外されたアリアでした。
 アリアはボロボロとなった姿でカペルを睨み付け、可愛らしい顔を歪めています。



「あんた、愛する私になんてことするの。」
「ああ?」
「それにその姿。いつものイケメンに戻りなさいよ!」
「この女、馬鹿かこの状況わかってるのか?」
「ええ。ラスレアが魔王をけしかけているのでしょう。」


 相変わらず自信に溢れているアリアは、一度だけこちらを見て、視線はカペルに戻った。
 カペルは心底下らなそうな表情をしたが、隙をついて攻撃を仕掛けた魔王から距離をとって真剣な表情になった。


「カペル!こっちを見なさいよ。腑抜けが。」
「小娘が。」


 カペルがアリアに苛立ちの意識を持ってかれた一瞬の隙を見逃しません。直ぐ様に準備が完了した技を発動する。
 これは呪文もなにもないただの魔力をぶつけるだけなのでその威力に反して気づかれにくい技です。


 小さなボールの様な黒い球がカペルの元に向かってゆきます。
 当たる寸前で流石に気付かれた様で避けようとしましたが遅いです。

 虚空の様な無が辺りを消し去ります。

 残ったのはぽっかりと地面に空いた穴のみ。カペルの姿は見えません。


「やりましたか?」
「兄さん!後ろ!」
「ぐっ!ラスレア嬢!」


 後ろから反動が感じて視線を向けると、そこには陛下では無くの無いカペルの姿が。


「凄い技だな。片腕を犠牲にしなくてはならなかったよ。」
「な、なんで。」
「穢れの奴の転移を利用させてもらったのさ。」


 どうやらギリギリで転移された様です。
 良く見るとレオや魔王もこちらに飛んで来ているようです。ただ、わたくしとカペルの位置が近くて動くのを躊躇ってしまっている様ですが。

 さて、どうしましょうか。




 
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