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状況はかんばしくありません
しおりを挟む「結構あっさりと正体を現したものだな。」
「はんっ。魔王の核を持ったお前が後々に術を掛けると思っていたんだがな。おもっていたより早く術を仕掛けたようだからな。早々に切れば良かったよ。」
「やはり、ティグリスやアリアは捨て駒でしたのね。」
カペルの笑みが深くなるのは肯定の意味でしょう。
あの時、ティグリスは幸せそうに真実の愛を語っていました。それが仕組まれた事なんて信じません。
この目の前の男が居なければ、皆が幸せになっていたはずなのに。
赦せない。
「ラスレア、一人で抱え込むなよ。」
「分かっていますわ。共に立ち向かってこその夫婦ですもの。」
それは父と母が良くいう言葉。
レオが地を蹴って、カペルに向かって行きます。わたくしはそんなレオにバフを掛け、最近学んだばかりの聖魔法を展開して撃ちます。
撃つ先はレオがどこからか取り出した剣の刀身へ。
聖魔法を纏い、なおかつ魔王が認める強き光の魂の持ち主が繰り出す攻撃は効くことでしょう。
予想通り、カペルは舌打ちをしてその場を飛び退きます。
「良いのかよ。ラスレア嬢から離れてよ。」
「わたくしのご心配は無用ですわ。お義父様が居ますから。」
魔王曰く、この国の王族は王の素質が有るものほど魂の光は強く、見ているだけで核がむかむかするのだとか。
ちなみにティグリスはさほど苦痛ではないと後に教えてもらった。
「たかだか半世紀も生きていない餓鬼が甘く見るなよ。」
「悪いがオレも居るんだ。」
レオの攻撃する姿は慣れさえも感じる。
しかし、長年眠りについていたのも確かであり、まだ本調子とはいかないようで、軽くいなされている様にも見えた。それは他の人も同じなのでしょう、魔王自らがフォローに入ってくれている。
エリザベート様はわたくしの隣で上級魔法の準備をし始めた。
エリザベート様が魔族に穢れと呼ばれるのはその性質にありました。エリザベート様は人間に神族の血を人工的に入れられた存在なのです。
本来、人工的に種族をつくるなんてそんなことは禁じられています。
ですが、エリザベート様は造られてしまったのです。アースアイの不思議な力のお陰か、血は定着しそして、神族だけの魔法を撃てる唯一の人族なのです。
「『神聖魔法光の雷!』」
エリザベート様の声に反応してレオと魔王が退くとカペルに光の柱が落ちました。
鈍い声が聞こえますが、決定だでないのはたしかです。
「魔王、その妻、レオを相手してあれだけしかダメージが入らないなんて。」
「あいつ、前魔王の落とし種なのよ。」
「えっ。」
「だから、魔族でも彼を王としようとするものが多いし、同じ魔王の性質を持つせいで魔王の力は効きにくいの。」
だからといって勇者の力は魔王の核のせいで本気を出せないのだとか。
唯一、レオの攻撃は効いているけどそれも微々たるもの。
では、エリザベート様には頑張ってもらわなくては。
あまり、良い状況で無いのは分かりますが自然と口元には笑みが浮かびました。
昔、一度だけ魔法の教師に教えてもらった奥の手。いざと言うときに使えと。
その時、言っておりました『お前は幸せか。』と。
あの時はティグリスが側にいるだけで幸せだったのですけど、そう意味ではなかったのですね。今はその言葉が身に染みて分かります。
「エリザベート様、少しわたくしから意識を反らせますか?数分で良いのです。」
「……やってやるわよ。」
さあ、わたくしを狙った事を後悔させてあげますわ。
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