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前編
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俺は高野陸。25歳のサラリーマンだ。勤め先は結構大きな商社で、給料もそこそこ良い。
だが、俺はここでの仕事や、それを中心に送る生活について満足してはいなかった。
つまらない仕事、やりがいの無い雑用。少ない休み、少ない睡眠。
もう辞めようかな。でも辞めたら金なくなるしなぁ。と、自問自答の日々を送っていたある日のことだった。
出社してすぐに、俺が所属する営業部の部長に呼び出された。なんだろう。なんかやらかした覚えはないんだけどなぁ。
少しビクビクしながら、部長室のドアをノックする。
コンコンコン「高野です。」
「あぁ、高野か。入ってくれ。」
「失礼します。」
俺は部屋に入り、部長が座っているデスクの前に立つ。
「君に頼みたいことがあるんだけどいいかな?」
部長が俺に頼み事?特段仕事ができるわけでもなく、かと言って物腰柔らかいわけでもない俺に?
「なんでしょうか。」
「出張なんだけどいいかな?」
「どこにですか?」
「アフリカのギムラ共和国と言う国だ。まだまだ発展途上だが、市場はでかくなるとの見立てなんだ。」
「それで、俺はここで何をするんでしょうか。」
「高野くんには、ここで支部長をお願いしたい。」
支部長というのは、相当キャリアを積んだ人が普通は務める役職だ。それが目の前にやって来た。なんていう運の周りだろうか。
そう思ってこのときは二つ返事でOKしてしまった。
しかし、俺は帰宅後にそのことを後悔することとなった。
俺が支部長を務めることになったギムラ共和国についてワキペデア(ネット辞典)で調べて見ると、次のように紹介された。
ギムラ共和国はアフリカの共和国。
治安は悪く、日が暮れてから女性が一人で外を歩けば、ほぼ確実に襲われる。日本からの旅行者はほとんど無く、飛行機の直行便もない。
「最悪だ。」そう思った。断ろうかとも思った。でも、ここでも俺は支部長と言うイスに憧れてしまっていた。
翌日。今日は土曜日だったので、彼女の里奈にこの事を打ち明けた。
「一緒に来てくれないか?」
そう言って俺は、以前から用意していた婚約指輪を差し出した。
「ふざけないで。こんな危険な国いけるわけないでしょ!」
結果は惨敗。せっかく用意した指輪も勇気もズタボロに引き裂かれた。
もうこうなったら腹をくくってギムラヘ行くしかないか。
そうは思ったものの、やはり怖いものはまだまだ残っている。
俺は覚悟を決めて、一週間後、成田空港へと向かった。今思えば、このときはまだ里奈に、いや日本に未練が残っていたのかもしれない。
だが、俺はここでの仕事や、それを中心に送る生活について満足してはいなかった。
つまらない仕事、やりがいの無い雑用。少ない休み、少ない睡眠。
もう辞めようかな。でも辞めたら金なくなるしなぁ。と、自問自答の日々を送っていたある日のことだった。
出社してすぐに、俺が所属する営業部の部長に呼び出された。なんだろう。なんかやらかした覚えはないんだけどなぁ。
少しビクビクしながら、部長室のドアをノックする。
コンコンコン「高野です。」
「あぁ、高野か。入ってくれ。」
「失礼します。」
俺は部屋に入り、部長が座っているデスクの前に立つ。
「君に頼みたいことがあるんだけどいいかな?」
部長が俺に頼み事?特段仕事ができるわけでもなく、かと言って物腰柔らかいわけでもない俺に?
「なんでしょうか。」
「出張なんだけどいいかな?」
「どこにですか?」
「アフリカのギムラ共和国と言う国だ。まだまだ発展途上だが、市場はでかくなるとの見立てなんだ。」
「それで、俺はここで何をするんでしょうか。」
「高野くんには、ここで支部長をお願いしたい。」
支部長というのは、相当キャリアを積んだ人が普通は務める役職だ。それが目の前にやって来た。なんていう運の周りだろうか。
そう思ってこのときは二つ返事でOKしてしまった。
しかし、俺は帰宅後にそのことを後悔することとなった。
俺が支部長を務めることになったギムラ共和国についてワキペデア(ネット辞典)で調べて見ると、次のように紹介された。
ギムラ共和国はアフリカの共和国。
治安は悪く、日が暮れてから女性が一人で外を歩けば、ほぼ確実に襲われる。日本からの旅行者はほとんど無く、飛行機の直行便もない。
「最悪だ。」そう思った。断ろうかとも思った。でも、ここでも俺は支部長と言うイスに憧れてしまっていた。
翌日。今日は土曜日だったので、彼女の里奈にこの事を打ち明けた。
「一緒に来てくれないか?」
そう言って俺は、以前から用意していた婚約指輪を差し出した。
「ふざけないで。こんな危険な国いけるわけないでしょ!」
結果は惨敗。せっかく用意した指輪も勇気もズタボロに引き裂かれた。
もうこうなったら腹をくくってギムラヘ行くしかないか。
そうは思ったものの、やはり怖いものはまだまだ残っている。
俺は覚悟を決めて、一週間後、成田空港へと向かった。今思えば、このときはまだ里奈に、いや日本に未練が残っていたのかもしれない。
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